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Bell麻痺急性期の実践的治療

臨床的にBell麻痺と診断されている症例に約25%に帯状疱疹を伴わない不全型Hunt症候群が存在する(zoster sine herpete)。それらは病因が水痘―帯状疱疹ウイルスであることから、麻痺が重症で予後も不良であるためHunt症候群と同じ量の抗ウイルス薬が必要である。したがって、初診時にBell麻痺と診断しても麻痺が重症な症例は、Hunt症候群に準じた抗ウイルス療法を行うことが実践的である。
出典
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1: 村上信五編:宿題報告 モノグラフ:ウイルス性顔面神経痲痺―病態と後遺症克服のための新たな治療―.名古屋市立大学医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室、 pp116-121、2015.

顔面神経麻痺の程度、肉眼的の評価:柳原法(40点法)

顔面の表情を10項目に分け、各0、2、4点の3段階で評価する。
40点満点で評価し、10点以下:完全麻痺、12点以上:不全麻痺
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1: 柳原尚明ほか:顔面神経麻痺程度の判定基準に関する研究.日本耳鼻咽喉科学会会報.80(8):799-805,1977.(改変あり)

耳介帯状疱疹(Hunt症候群)

左耳介 耳介皮膚発赤と痂皮化を伴った水泡形成を認める。
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1: 著者提供

口腔・咽頭のヘルペス所見(Hunt症候群)

a:軟口蓋、口腔粘膜のヘルペス性口内炎
b:舌炎
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1: 著者提供

顔面神経のガドリニウム造影MRI

右顔面神経膝部から迷路部に造影増強効果を認める(矢印)。
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1: 著者提供

顔面神経麻痺

a:不全麻痺(右):閉眼可能
b:完全麻痺(右):閉眼不能
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1: 著者提供

電気生理学的検査と予後診断

a:誘発筋電図検査 (ENoG) 、電気神経興奮度検査(NET)
b:検査データと顔面神経麻痺の回復パターン
①麻痺スコアが20/40点以上で、アブミ骨筋反射も陽性であれば、予後は絶対的に良好で、ほとんどは3カ月以内に完治する。このような症例ではNETは3.5 mA以内、ENoGも50%以上であることが多い。
②麻痺スコアが10点前後、アブミ骨筋反射は陰性、NETの左右差は3.5 mA以上でも反応が残っており、ENoGが20~30%であれば、回復に6カ月以上必要であるが、ほぼ治癒する。
③麻痺スコアは10点以下で、アブミ骨筋反射も陰性、NETもscale outでENoGが10%以下の症例は完全脱神経で予後は不良である。このような症例に減荷術が適応となる。
出典
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1: 村上信五ほか : 電気診断法.CLIENT21 機能検査 中山書店 : 271-286,2000

顔面神経減荷術

a:術式(経乳突法と経中頭蓋窩法の併用)
b:経乳突法
c、d:経中頭蓋窩法
出典
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1: 症例から見る難治性疾患の診断と治療-耳科領域編.加賀君孝監,小林俊光,小宗静男,丹生健一編, 国際医学出版.2011;59-74.

顔面神経麻痺の診断手順

診断手順に沿って鑑別診断を進める。
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1: 著者提供

顔面神経麻痺の原因と鑑別すべき疾患

顔面神経麻痺の原因はさまざまである。
頻度はBell麻痺、Hunt症候群が大半を占める。
出典
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1: 日本顔面神経学会編:顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版 第2版、p11 表II-1、金原出版、2023

鼓室内ステロイド投与

現在まだ保険収載されていないが、重症例にステロイドの鼓室内投与が有効との報告がある。
具体的にはデキサメタゾン(1.65 mg、0.5 mL)を経鼓膜的に注入する。回数は1日1回で5~10回を目安とする。麻痺発症3~4日後に40点法で麻痺の重症度を評価して14点以下に適用。
出典
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1: 村上信五編:宿題報告 モノグラフ:ウイルス性顔面神経痲痺―病態と後遺症克服のための新たな治療―.名古屋市立大学医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室, pp122-129, 2015.

術前の顔面表情(右目閉眼不能)

ope前、完全麻痺例
右目閉眼困難である。
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1: 著者提供

術後6カ月の顔面表情(右目閉眼可能)

ope後6カ月
右目がほぼ左右差ないまでに閉眼可能となっている。
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1: 著者提供

手術所見(経乳突法)

顔面神経の水平部~垂直部を減荷
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1: 著者提供

手術所見(経中頭蓋窩法)

顔面神経の膝部~内耳道部を減荷
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1: 著者提供

誘発筋電図検査:ENoG値6%

右顔面神経麻痺例
右は振幅が低下している。
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1: 著者提供

右顔面神経の迷路部から膝部、乳突部までガドリニウムの造影増強効果あり(矢印)

a:迷路部の造影増強効果
b:膝部の造影増強効果
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1: 著者提供

Bell麻痺急性期の治療

表情筋運動スコアで麻痺の重症度を評価し、重症度に応じた薬物治療を行う。
出典
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1: 日本顔面神経学会編:顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版 第2版、p32 図II-18、金原出版、2023

Hunt症候群の治療

表情筋運動スコアで麻痺の重症度を評価し、重症度に応じた薬物治療を行う。
出典
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1: 日本顔面神経学会編:顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版 第2版、p32 図II-19、金原出版、2023

Bell麻痺、Hunt症候群の治療手順

急性期治療の目的は神経の再生を促進させることではなく、変性を防止することである。したがって、麻痺の早期鑑別診断に努めると同時に適切な薬物治療を開始し、高度麻痺例に対しては発症1週間前後に誘発筋電図検査を行い、柳原法(40点法)が10点以下かつENoG値(患側/健側の振幅比)が10%未満に低下した場合はできるだけ早期に減荷術を施行する。
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1: 著者提供

Bell麻痺急性期の実践的治療

臨床的にBell麻痺と診断されている症例に約25%に帯状疱疹を伴わない不全型Hunt症候群が存在する(zoster sine herpete)。それらは病因が水痘―帯状疱疹ウイルスであることから、麻痺が重症で予後も不良であるためHunt症候群と同じ量の抗ウイルス薬が必要である。したがって、初診時にBell麻痺と診断しても麻痺が重症な症例は、Hunt症候群に準じた抗ウイルス療法を行うことが実践的である。
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1: 村上信五編:宿題報告 モノグラフ:ウイルス性顔面神経痲痺―病態と後遺症克服のための新たな治療―.名古屋市立大学医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室、 pp116-121、2015.

顔面神経麻痺の程度、肉眼的の評価:柳原法(40点法)

顔面の表情を10項目に分け、各0、2、4点の3段階で評価する。
40点満点で評価し、10点以下:完全麻痺、12点以上:不全麻痺
出典
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1: 柳原尚明ほか:顔面神経麻痺程度の判定基準に関する研究.日本耳鼻咽喉科学会会報.80(8):799-805,1977.(改変あり)