参考文献:
大木 秀郎、近藤 壽郎、工藤 逸郎監修:口腔外科学 第5版. p158-161, 165. 学建書院, 2016
①歯根嚢胞:radicular cyst [ID0604][ID0606]
う蝕、歯髄壊死し、膿瘍壁が上皮化する場合や歯根肉芽腫が形成され内部が変性溶解して嚢胞へと発展する。この歯は生活歯ではない。
発生する部位にて根尖嚢胞、側方性歯根嚢胞という。
根尖性嚢胞apical cyst :根尖部にできる嚢胞で、単に歯根嚢胞と呼ぶことが多く、顎嚢胞の50~60%を占める。
残存性嚢胞:原因歯が抜去され、嚢胞のみが残存したもの。
②(側方性)歯周嚢胞:paradental cyst
萌出歯の根側面にできる嚢胞。発生機序から炎症性(歯根嚢胞に属する)と発育性(中年女性の下顎小臼歯部)がある。
③歯原性角化嚢胞(原始性嚢胞):odontogenic keratocyst primordial cyst
2005年WHOの分類では角化嚢胞性歯原性腫瘍と分類された。
嚢胞上皮の著明な角化傾向をしめす。10~20歳代の男性で下顎に多い。
④含歯性嚢胞:dentigerous cyst(follicular dental cyst) [ID0605]
嚢胞壁に埋伏歯を含んだ嚢胞。歯冠を覆っている退縮エナメル器が嚢胞化する。
10~30歳代に好発。上下顎の智歯部、上顎の犬歯部や下顎の小臼歯部に好発する。
⑤腺性歯原性嚢胞(唾液腺歯原性嚢胞):glandular odontogenic cyst(sialo odontogenic cyst)
上皮層内に腺管様構造を特徴とするまれな嚢胞。
⑥歯肉嚢胞:gingival cyst
乳児の歯肉嚢胞:歯堤の遺残による上皮巣、いわゆるSerres腺に由来する。新生児~生後3カ月の歯肉粘膜に1~3mmの白色嚢胞。上顎が多い。
成人の歯肉嚢胞:永久歯の萌出後にできる、1cm以下の嚢胞で非常にまれである。前歯、小臼歯の歯間乳頭部に好発。
⑦萌出嚢胞:eruption cyst
萌出中の歯の歯槽部粘膜下に生じる一種の含歯性嚢胞である。頻度はまれで、歯の交代期の小児に多い。
画像1:歯性上顎洞炎(左)[ID0604]
画像2:歯根嚢胞[ID0606]
画像3:含歯性嚢胞[ID0605]