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外傷性鼓膜穿孔・耳小骨離断治療のフローチャート

顔面神経麻痺・内耳障害の合併症の有無が大切であり、早期の手術を考慮する。
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1: 三代康雄 耳喉頭頸 84(5):157-161,2012

外傷性外リンパ瘻

耳後部に1cm位の切開を加えて、皮下の結合組織を採取した。鼓膜穿孔縁をピックを用いて全周性にトリミングした。型の如く外耳道に半周以上の切開を加えてtympanomeatal flapを挙上した。鼓室内に入ると一部結合組織が付着した鼓索神経を同定し、これを温存した。さらに鼓膜を挙上し鼓室内を観察し、キヌタ骨の長脚を同定。キヌタ骨を明視下においてなおかつ摘出するために、外耳道の後上壁を一部ノミや鋭ヒ等を用いて削開し、キヌタ骨を摘出した。あぶみ骨とも関節面は離開しており、結合組織で弱く結合していたので、これを切離した。キヌタ骨は完全な形で残存していた。次にあぶみ骨を顔面神経刺激装置で刺激すると、あぶみ骨筋腱も残存しており、これを切断した。次いであぶみ骨の上部構造に曲針で引っかけてあぶみ骨をすべて摘出した。特にガッシャーはなかった。次いで正円窓に結合組織を詰めて糊で固定した。次いで卵円窓に軟骨膜を被覆して糊で固定した。これらの操作をする前に、被覆する部分周囲の粘膜を一部鋭ヒなどで掻爬した。次いで耳珠軟骨を採取して長さ4mmに切った物を代用あぶみ骨として卵円窓上の結合組織上に建てて先端はツチ骨と鼓膜の両者に触れるような形とした。鼓膜穿孔には結合組織をアンダーレイでグラフトし、tympanomeatal flapを戻して外耳道の骨に接着して手術を終了とした。

外傷性鼓膜穿孔

典型例
a:平手うちによるもの(介達性)
b:耳かきによるもの(直達性)
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外傷性鼓膜穿孔/外傷性耳小骨連鎖離断

耳かき外傷
a:右耳 鼓膜所見 右鼓膜前下象限から後上象限に及ぶ比較的大きな鼓膜穿孔を認めた。
b:キヌタ・アブミ関節は離断していた。アブミ骨の軽度偏位を認める。
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外傷性鼓膜穿孔/外傷性耳小骨連鎖離断/外傷性外リンパ瘻

耳かき外傷
右鼓膜後上・後下象限に中穿孔あり(a)、中耳ファイバーを接近させると、アブミ骨が卵円窓から上方へ偏位しているのが確認できる(b)。
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聴力検査所見とパッチテスト

純音聴力検査では2,000Hzの骨導閾値上昇を伴う混合性難聴を示し、パッチテストを行ったが気骨導差の改善は10~20dB程度であった。
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CT所見

中耳CTでは明らかな異常を同定できなかった。
a:キヌタ・アブミ関節付近(軸位断)
b:キヌタ・アブミ関節付近(軸位断)
c:キヌタ・アブミ関節付近(冠状断)
d:キヌタ・アブミ関節付近(冠状断)
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手術所見

a:キヌタ・アブミ関節の離断、アブミ骨の軽度偏位を認めた。
b:外耳道軟骨板をキヌタ・アブミ間にinterpositionした。
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手術前後の聴力検査所見

術後著明な聴力の改善を認めた。
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鼓膜所見

右鼓膜後上象限には穿孔と凝血塊、鼓室内には貯留液を認めた。
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聴力検査所見

高音域の骨導閾値上昇を伴った混合難聴を認めた。
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CT所見

鼓室内に軟部組織陰影を認めた。
a:アブミ骨が本来の位置より内側に偏位しているようにみえる(軸位断)。
b:アブミ骨が本来の位置より内側に偏位しているようにみえる(軸位断)。
c:前庭内にhigh densityの病変が認められた(冠状断)。
d:前庭内にhigh densityの病変が認められた(冠状断)。
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手術所見

a:キヌタ・アブミ関節の離断があり、アブミ骨が前庭へ嵌入していた。
b:耳珠軟骨を用いて伝音再建を行った。
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鼓膜所見(術後)

鼓膜は穿孔なく修復された。
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聴力検査所見(術後)

ほぼ正常レベルまで改善した。
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聴力検査所見と眼振所見

純音聴力検査(3分法)で右気導51.7dB、骨導16.7dB。水平回旋混合性の右向き自発眼振と右下頭位で左向きに方向交代する眼振を認めた。
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CT所見

a:右ツチ・キヌタ関節の離断を認めた(軸位断)。
b:前庭の気腫を認めた(冠状断)。
c:右ツチ・キヌタ関節の離断を認めた(軸位断)。
d:蝸牛に気腫を認めず(冠状断)。
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手術所見

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聴力検査所見(術後)

術後1カ月目の聴力検査では平均23.3dBに改善を認めた。
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耳かき外傷の対応

鼓膜穿孔が前方にある場合は単純穿孔のことが多く、保存的に治療して自然閉鎖しない場合に手術を検討する。鼓膜穿孔が後方にある場合は、耳小骨連鎖障害の可能性があり、強いめまいや眼振所見、骨導閾値の上昇を伴っていれば外リンパ瘻合併の可能性を考慮して可及的早期の手術治療が望まれる。
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外傷性鼓膜穿孔・耳小骨連鎖障害診断フローチャート

鼓膜穿孔を伴う場合は、パッチテストを行う。パッチテストで改善すれば、鼓膜穿孔のみで耳小骨連鎖障害は伴わないと考えられる。
パッチテストで改善のみられない場合は、耳小骨連鎖障害を伴っている可能性があるので、CT検査や穿孔閉鎖後にティンパノグラムを施行する。
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1: 三代康雄 耳喉頭頸 84(5):157-161,2012

外傷性鼓膜穿孔・耳小骨離断治療のフローチャート

顔面神経麻痺・内耳障害の合併症の有無が大切であり、早期の手術を考慮する。
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1: 三代康雄 耳喉頭頸 84(5):157-161,2012

外傷性外リンパ瘻

耳後部に1cm位の切開を加えて、皮下の結合組織を採取した。鼓膜穿孔縁をピックを用いて全周性にトリミングした。型の如く外耳道に半周以上の切開を加えてtympanomeatal flapを挙上した。鼓室内に入ると一部結合組織が付着した鼓索神経を同定し、これを温存した。さらに鼓膜を挙上し鼓室内を観察し、キヌタ骨の長脚を同定。キヌタ骨を明視下においてなおかつ摘出するために、外耳道の後上壁を一部ノミや鋭ヒ等を用いて削開し、キヌタ骨を摘出した。あぶみ骨とも関節面は離開しており、結合組織で弱く結合していたので、これを切離した。キヌタ骨は完全な形で残存していた。次にあぶみ骨を顔面神経刺激装置で刺激すると、あぶみ骨筋腱も残存しており、これを切断した。次いであぶみ骨の上部構造に曲針で引っかけてあぶみ骨をすべて摘出した。特にガッシャーはなかった。次いで正円窓に結合組織を詰めて糊で固定した。次いで卵円窓に軟骨膜を被覆して糊で固定した。これらの操作をする前に、被覆する部分周囲の粘膜を一部鋭ヒなどで掻爬した。次いで耳珠軟骨を採取して長さ4mmに切った物を代用あぶみ骨として卵円窓上の結合組織上に建てて先端はツチ骨と鼓膜の両者に触れるような形とした。鼓膜穿孔には結合組織をアンダーレイでグラフトし、tympanomeatal flapを戻して外耳道の骨に接着して手術を終了とした。