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骨軟部の腫脹を来す疾患鑑別のアルゴリズム

鑑別の第一段階は外傷と非外傷性疾患の鑑別である。
非外傷疾患は、腫脹がびまん性か限局性かを見極める。前者は静脈圧の亢進やリンパ性浮腫、アレルギーなどを示唆し、後者は腫瘍や腫瘍に類似する占拠性病変を示唆する。
このアルゴリズムに従って各種の検査を行い、鑑別を進めていく。
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左胸壁化膿性筋炎

左胸壁に発赤、熱感、自発痛、圧痛がある。亜急性発症である。
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1: 五嶋孝博先生ご提供

左下肢深部静脈血栓症

左下肢全体が腫脹している。亜急性発症である。
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1: 著者提供

複合性局所疼痛症候群

82歳男性。2か月前に右手関節部の腫脹と疼痛、熱感を自覚した。近医を受診し偽痛風が疑われた。N-SAIDs内服により症状は一旦改善したがその後再燃した。
初診時、右手部はびまん性に腫脹し、左より湿潤があり色も赤かった。皮膚温も右のほうが温かく発汗も多かった。右手指の関節可動域制限は著しく、finger-tip-palmar distance (FPD) は 2 cmだった。
CRPSと診断し、積極的に右手を使うように指示し、外来通院リハビリテーション及び自宅での温冷交代浴も指示した。症状はその後改善し、初診から1か月後には自覚症状はほぼなくなり、FPDも5 mmにまで改善した。
 
a, b. 初診時の両手写真(bは手指を最大限握り撮影)
c, d. 初診1か月後の両手写真(dは手指を最大限握り撮影)
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1: 著者提供

左脛骨遠位外骨腫

13歳、男児。単純X線側面像では、脛骨の骨髄と連続を有する有茎性の骨性隆起が脛骨の後方にあり(白矢印)、外骨腫と判断した。運動時の痛みがあり進行性と考えられたため、切除の方針とした。手術により運動時の痛みは消失した。
 
a. 左足関節単純X線正面像
b. 左足関節単純X線側面像
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1: 著者提供

腹部大動脈瘤

MRI検査で後腹膜腫瘍が疑われ、骨軟部腫瘍専門外来へ紹介された。持参したMRIでは、第4腰椎前面に径6cmの円形病変があり、椎体が一部侵食されていた。腫瘤内部は、周囲はT1等信号,T2低信号で造影効果に乏しいが、内部は造影されT2強調像ではflow voidにより低信号を示していた。
造影CT早期相では、大動脈内腔が不整に拡張し強く均一に造影され、その周囲も淡く広がるように造影される領域がある。偽腔への漏出と考えられる。
腫瘤の鑑別として、常に動脈瘤を考える必要がある。
 
a: T1強調MRI横断像
b: Gd造影T1強調脂肪抑制MRI横断像
c: T2強調MRI横断像
d: 造影CT早期相
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1: 著者提供

CTによる病的の評価

28歳、男性。階段を2段飛び降りた着地の際に右膝に激痛を感じた。歩行困難となり、近医へ救急搬送された。単純X線写真で病的骨折の診断となった。単純X線写真の2方向で骨破壊と側面像で前方の異常骨膜反応が確認できるが、CTを撮影すれば、骨破壊と異常骨膜反応がより分かりやすい。本症例は、切開生検により骨肉腫と診断した。Stage IIBであり、術前後の抗がん剤治療と患肢温存の手術を行った。病的骨折受傷から10か月で一連の治療を終え杖歩行で自宅退院した。
本症例の様な悪性骨腫瘍の病的骨折に対して、通常の骨折治療として髄内釘固定を行ってしまった場合は、患肢の広範囲に腫瘍汚染が生じるのみならず、腫瘍を静脈内に押し込んでしまう可能性がある。初療時の適切な対応が強く望まれる。
 
a. 病的骨折受傷時の右大腿骨単純X線正面像
b. 病的骨折受傷時の右大腿骨単純X線側面像
c. 病的骨折受傷時の単純CT(骨折部より近位)
d. 病的骨折受傷時の単純CT(骨折部)
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1: 著者提供

化膿性関節炎

a:左肘単純X線写真正面像。硬化性変化と溶骨性変化が混在した骨破壊が観察される。骨膜反応もみられる。
b:左肘のT1強調MR画像。関節を中心に、骨や周囲の軟部組織がびまん性に筋肉と等信号を呈している。
c:左肘のT2強調MR画像。関節を中心に、骨や周囲の軟部組織がびまん性に筋肉より高信号を呈している。
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1: 五嶋孝博先生ご提供

化膿性骨髄炎

a:単純X線写真では骨皮質の破壊と骨膜反応が観察される。
b:CTでも骨皮質の破壊と骨膜反応が観察される。
c:MR画像(T2強調)では、骨髄内から破壊された骨皮質を通り、骨外に広がる炎症変化
がみられる。
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1: 五嶋孝博先生ご提供

痛風結節

a:右示指MP関節の背側に腫瘤がある。
b:右示指MP関節辺りに軟部腫瘤陰影があるが、石灰化はない。
c:T1強調MRI。腫瘤は伸筋腱の表面から深部にかけて広がっていて、骨格筋と等信号である。
d:T2強調MRI。腫瘤は骨格筋よりも高信号である。
e:Gd造影T1強調MRI。腫瘤は不均一に多少造影されている。
f:術中写真。腫瘤は白色分葉状である。
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1: 五嶋孝博先生ご提供

脂肪腫

a:T1強調MRI。大腿後方の筋内の病変は皮下脂肪と同程度の高信号を示している。
b:T2強調MRI。大腿後方の筋内の病変は皮下脂肪と同程度の高信号を示している。
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1: 五嶋孝博先生ご提供

神経鞘腫

a:T1強調MRI矢状断。腫瘍は脛骨神経に発生しており、筋肉と等信号である。
b:T2強調MRI矢状断。腫瘍は筋肉よりも高信号である。特に一部はかなり高信号であり、嚢腫状の変性と考えられる。
c:Gd造影T1強調MRI矢状断。嚢腫状の部分以外には造影効果がみられる。
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1: 五嶋孝博先生ご提供

左下腿筋内血管腫

40歳、女性。10年前に左腓腹部の腫脹に気づいていた。半年前より、運動後の痛みが悪化した。近医を受診し、MRIで軟部腫瘍が疑われた。非ステロイド性抗炎症薬内服により、痛みは改善した。
初診時造影MRIでは、左腓腹筋外側頭をほぼ置換するように、周囲に脂肪組織を巻き込み一部T2強調像でflow voidを伴う管腔様構造が集簇し、管腔内は造影されていた。単純X線写真では、複数の静脈石と考えられる石灰化陰影があった。
痛みが進行性であることから手術の方針となった。血管腫を左腓腹筋外側頭ごと切除した。切除標本の切り出し面では、管腔構造が確認できた。
 
a: T1強調MRI横断像
b: T2強調MRI横断像
c: Gd造影T1強調脂肪抑制MRI横断像
d: Gd造影T1強調脂肪抑制MRI冠状断像
e: 単純X線側面像
f: 術中写真
g: 標本のマクロ写真
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1: 著者提供

左鼠径部異型脂肪腫様腫瘍

70歳、女性。3年前頃に左鼠径部の腫脹を自覚した。腫脹が緩徐に増大したため近医を受診した。
初診時の左鼠径部造影MRIでは、T1, T2強調像ともに高信号で脂肪腫によく似るも、内部は一部不均一でT1, T2強調像ともに低信号の隔壁様構造があった。内部はGdにより淡く不均一に造影された。
画像所見から異型脂肪腫様腫瘍を考え、腫瘍を深大腿動静脈ごと切除した。大腿神経は温存した。術後経過良好であり、機能障害なく経過した。術後6か月で局所再発はない。
脂肪腫との鑑別には、造影MRIが有用である。
 
a: T1強調MRI横断像
b: T2強調MRI横断像
c: T1Gd造影脂肪抑制MRI横断像
d: T1強調MRI冠状断像
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乳癌骨転移

67歳、女性。左鼠径部の腫脹と左股関節の疼痛があり、歩行困難となった。画像から左大腿骨腫瘍が疑われた。問診で、10年前に乳癌手術を受けた既往があることが分かった。血液検査で、CA15-3が異常に上昇しており、乳癌骨転移による切迫骨折と診断した。
股関節関節裂隙の狭小化もあり、寛骨臼側も置換する方針とした。左大腿骨近位部を切除し、大腿骨側は腫瘍用インプラントをセメント固定し、寛骨臼側はセメントレスカップを用いた。手術後はT字杖歩行可能となり、外来での抗がん剤治療が可能となった。術後2年の時点で外来での抗がん剤治療を継続中である。
高齢者の悪性骨腫瘍が疑われる場合は、骨髄腫やリンパ腫を含むがん骨転移を想定する必要があるが、本症例のように悪性腫瘍の既往歴の有無を聴取すること、乳房に腫瘤がないか確認することが、診断に遅れを生じさせないために重要である。問診、触診などの診察の後に、尿・血液検査及び頚部〜骨盤の造影CTを行うのが一般的である。
 
a: 手術前単純X線両股関節正面像
b: 手術前単純X線左股関節ラウエンシュタイン像
c: 手術前T1強調MRI冠状断像
d: 手術前T1強調MRI矢状断像
e: 手術後単純X線両股関節正面像
f: 手術後単純X線左股関節軸位像
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1: 著者提供

コンパートメント症候群

23歳、男性。バイク走行中に転倒し受傷。救急搬送された。Gustilo分類type IIの左脛骨開放骨折の診断にて、同日に洗浄、デブリドマン、創外固定の緊急手術を行った。術翌日に左下肢の疼痛が悪化し、動脈ラインを用いたneedle manometer法で左下腿コンパートメント内圧を測定したところ、前方35/43, 側方30/35, 後方49/38, 拡張期圧60-70 mmHgであった。後脛骨動脈の触知が困難であり、伸張時痛もあり、経時的に疼痛の増悪があることから、減張切開を行った。
 
a: 開放骨折当日の緊急手術後の単純X線写真
b: 減張切開後の術中写真
c: スキンステイプラーを用いたシューレース法で創部を閉鎖せずに手術を終えた時点の写真
d: 減張切開術後の単純X線写真
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超音波ガイド下針生検

78歳、女性。1か月前に右前胸部の痛みと腫瘤を自覚した。軟部腫瘍が疑われた。
造影MRI検査では、病変部は周囲に浮腫状変化を伴い、辺縁が造影されるリングエンハンスパターンを示し、痛みを伴うことから感染などの炎症性病変が疑われた。病変に厚さがなく、盲目的針生検は胸腔を穿刺してしまう可能性があり、安全のため超音波検査ガイド下に針生検を行った。
一般細菌培養、抗酸菌培養、抗酸菌PCR検査を行ったが、いずれも陰性であった。
病理検討の結果、炎症性肉芽と診断した。
骨腫瘍も軟部腫瘍も生検時は、常に感染性疾患(特に)膿瘍を鑑別に挙げる必要がある。
超音波ガイド下針生検には、平行法(=同一平面法)と交叉法がある。前者では、プローブにアタッチメントを装着することで(f)、針が曲がらなければ、画面上の点線に沿って容易に標的を穿刺することができるが、皮膚に対して斜めの刺入となるため、最短経路での生検は困難である。CTガイド下針生検とうまく使い分けたい。
 
a. T2強調MR横断像
b. T2強調脂肪抑制MR横断像
c. T1強調Gd造影脂肪抑制MR横断像
d. 単純CT
e. 超音波画像(白矢印が生検針の先端を示す)
f. アタッチメントを装着した超音波プローブ
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CTガイド下針生検

35歳、男性。虫垂炎罹患時に撮影したCT検査で右鼠径部軟部腫瘍が疑われた。
診断目的に生検を行う方針としたが、大伏在静脈温存のために、CTガイド下針生検を行った。針生検の結果、低悪性度線維粘液肉腫(エバンス腫瘍)であることが分かり、遠隔転移なくstage IBであった。広範切除の手術を行った。術後3年の時点で局所再発や肺転移はない。
 
深部や骨内の病変の生検には、CTガイド下針生検が有用である。
 
a. T1強調MR冠状断像
b. T2強調MR冠状断像
c. T1強調Gd造影脂肪抑制MR横断像
d. 針生検時の単純CT
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右殿部粘液型脂肪肉腫

右大殿筋内に長径10 cmの卵円形腫瘤があり、MRIではT1強調像では筋肉と等信号で均一、T2強調像では不均一な高信号、Gdにより不均一に比較的強く造影される。針生検で粘液型脂肪肉腫の診断となり、画像検索上転移はなく、初診時stage IIBだった。広範切除を行った。術後経過良好であり、術後1年で局所再発や転移はない。
 
a: 初診時T1強調MRI横断像
b: 初診時T2強調MRI横断像
c: 初診時Gd造影T1強調脂肪抑制MRI横断像
d: 術中写真(広範切除後)
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左大腿未分化多形肉腫

72歳、女性。初診の2か月前に左大腿後面に腫瘤に気づき、腫瘤は次第に増大した。初診時、MRIでは大腿後面の膝窩動静脈と坐骨神経の間の筋間を主座とする、内部不均一な長径 9 cm の占拠性病変があり、Gd造影では不整に強く造影されるが、一部造影されない領域があった。
針生検で未分化多形肉腫と診断され、画像検査では遠隔転移はなくstage IIIであった。術前放射線治療の後に手術を行った。坐骨神経と膝窩動静脈は温存し、軟部欠損は遊離広背筋皮弁で再建し、骨折予防目的に髄内釘を挿入した。術後に肺転移と骨転移を生じたが、抗がん剤治療が奏功し、全ての転移巣は切除あるいは重粒子線照射を行い、無病生存 (NED) の状態である。術後15か月で局所再発はなく独歩も可能であるが、放射線照射によると考えられる膝関節拘縮があり、膝関節可動域は屈曲70°と大きく制限されている。
 
a: 初診時T1強調MRI横断像
b: 初診時T2強調MRI横断像
c: 初診時Gd造影T1強調脂肪抑制MRI横断像
d: 初診時Gd造影T1強調脂肪抑制MRI冠状断像
e: 術後単純X線正面像
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左腓骨骨肉腫

治療前画像 (a-e) を示す。左腓骨近位骨幹端部には、単純X線写真で骨皮質の消失と異常骨膜反応を伴う腓骨破壊像があり、MRIのT2強調像では内部は不均一な輝度を示しGdで強く不均一に造影される。切開生検により骨肉腫の診断となった。画像検索上遠隔転移はなく、stage IIBだった。術前抗がん剤治療を開始した。抗がん剤治療が奏功し、患肢温存手術を行った。術後抗がん剤治療を終え、現在外来経過観察中である。術後2年で局所再発や転移はない。
 
a: 治療前単純X線正面像
b: 治療前単純X線側面像
c: 治療前T2強調MRI横断像
d: 治療前Gd造影T1強調脂肪抑制MRI横断像
e: 治療前Gd造影T1強調脂肪抑制MRI冠状断像
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サルコイドーシス

a:T1強調MR。膝蓋部の皮下脂肪織を中心に皮下脂肪織内に低信号領域が広範に広がっている。
b:T2強調MR。膝蓋部の皮下脂肪織を中心に皮下脂肪織内に低信号領域が広範に広がっている。
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骨軟部の腫脹を来す疾患鑑別のアルゴリズム

鑑別の第一段階は外傷と非外傷性疾患の鑑別である。
非外傷疾患は、腫脹がびまん性か限局性かを見極める。前者は静脈圧の亢進やリンパ性浮腫、アレルギーなどを示唆し、後者は腫瘍や腫瘍に類似する占拠性病変を示唆する。
このアルゴリズムに従って各種の検査を行い、鑑別を進めていく。
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左胸壁化膿性筋炎

左胸壁に発赤、熱感、自発痛、圧痛がある。亜急性発症である。
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