手術時の変形矯正手技

胸椎のメジャーカーブのみを椎弓根スクリューを使用して固定した。側弯変形のみでなく、胸椎の生理的後弯正を行った。手術は3時間45分、術中出血量は600mLであった。本矯正手法は、simultaneous double rod rotation法といわれる方法である。

特発性側弯症の重症例

右肩が上がり、右の肩甲骨と肋骨全体が後方へ突出している。C7 plumb lineは右にシフトしている。左右のウエストラインが非対称になっている。
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前屈テストの肋骨隆起（リブハンプ）

体を前屈させ頭側から背中をみたところ。向かって左側の肋骨が上方へ強く突出しているのがわかる。
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尾側からみた腰部隆起（腰部ハンプ）と肋骨隆起（リブハンプ）

前屈テストの際、尾側からハンプをみたところ。腰部にハンプはなく、胸椎レベルの肋骨が上方へ突出していることがわかる。
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Risser sign

腸骨の骨端軟骨の開存の程度で骨年齢を評価する方法である。0～5度まで6段階に分類されており、0度は骨端軟骨が全領域で開存、5度は全領域で骨端軟骨が閉鎖し骨化している状態である。手指の骨端線による評価法もある。

側弯角（Cobb角）の測定方法

水平面に対して最も傾いている頭側の椎体上面と尾側椎体の下面とのなす角を側弯角（Cobb角）として定義する。図の場合にはT5～T12までに大きなカーブと、T1～T3、T12～L4までの側弯角を計測することなる。
立位正面のX線画像で1つまたは2つのCobb角が計測されることが多い。まれに3つのCobb角が計測されることがある。最も大きな角度のカーブが構築性カーブ（メジャーカーブ）であり、基本的に45°を超えるメジャーカーブは手術適応と考える。一般的にはメジャーカーブの上下にあるカーブは、メジャーカーブにより崩れた体幹バランスを補正するためにできたカーブであり、それを代償性カーブという。代償性カーブは、メジャーカーブよりも小さく、外力によって簡単に25°以下のCobb角に矯正させる。そのような場合には、メジャーカーブのみの治療を考える。2つのカーブが大きくそれぞれのCobb角が近似し、体幹中央ラインをまたぐ場合には、それぞれが構築性カーブであり、両方のカーブの矯正を考える必要がある。最も大きなカーブは常に構築性カーブとして治療するのが原則である。
上の図では、T1～T3、T3～T12、T12～L4 までのCobb角が計測された。T3～T12までのカーブが65°、T1～T3 が20°、T12～L4が40°とすると、メジャーカーブはT3～T12であり、大きさが50°を超えるので手術適応である。頭側ならびに尾側のカーブは、メジャーカーブよりも小さく、メジャーカーブを代償するためにできたカーブである可能性があり、メジャーカーブの治療に伴い自然に矯正される場合が多く、これらを代償性カーブと呼び手術時の固定範囲に含めなくてよい場合が多い。

胸椎後弯変形の測定法

前額面での側弯角の測定と同様の計測法であるが、胸椎の後弯角はT5～T12、T1～T5、T1
～T12を計測することが多い。腰椎については前弯角を計測する。

アンダーアームブレース

胸椎カーブが適応であるが、頂椎が第8胸椎よりも頭側のカーブでは良好な矯正は得られない。その場合には、ミルウォーキーブレースの適応となるが、上位胸椎をブレースで矯正するのは困難なことが多い。また、頚椎を含めるブレースは装着のコンプライアンスは低下する。
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ボストンブレース

柔らかい腰椎カーブや胸腰椎カーブが適応となる。
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後方脊柱矯正再建手術

椎弓根スクリューを使用した後方矯正再建手術が現在の主流である。側弯矯正率は70％を超える。
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前方脊柱矯正再建手術

柔軟性の高い腰椎カーブや胸腰椎カーブがよい適応である。
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胸椎のダブルカーブ

14歳、女子。T1-T7:45°、T7-L2:73°、T2-L5:16°、Risser4°。胸椎のダブルカーブである。体幹の右へのシフトが大きくバランスの悪いカーブである。手術適応であり、後方矯正再建術がよい適応である。上位胸椎と下位胸椎ともに大きな構築性のカーブがあり、下位腰椎の傾きが大きいことから、上位胸椎から第3腰椎までの固定が必要となる。
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16歳、女子。

L1/2椎間板に頂椎がある腰椎カーブが構築性カーブで、T5-T11の43°のカーブは代償性カーブでありフレキシビリティーが高い。矢状面では腰椎の前弯も胸椎の後弯も消失しており、flat backを呈している。このようなカーブでは選択的に腰椎カーブのみを矯正固定することにより上位の代償性カーブは自然矯正される。側弯を矯正し、腰椎前弯を獲得する手術が望ましい。
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術前X線写真（立位全脊柱正面、側面）

側弯は54°であり、胸椎後弯(T5-T12)は5°であった。
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ベンディングフィルム

カーブを徒手的に矯正してそれぞれのカーブの柔らかさを評価する
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手術後立位全脊柱X線画像（正面と側面）

側弯は7°となり、胸椎後弯(T5-T12)が22°に改善した。
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特発性側弯症の年齢とカーブに応じた治療選択

どの年齢でも20°に満たない側弯変形は経過観察を行う。症例が若くカーブの進行が明らかな場合には、20°を超えた段階で装具治療を開始してよいが、一般的には成長期のCobb角30°以上に装具治療が適応となる。幼児の場合、50°を超えるカーブでもブレース治療を行うことが多いが、10歳以上の思春期の特発性側弯症の場合45°以上のカーブは手術適応である。特殊な手術治療ではあるが、幼児の進行するカーブではgrowing rodを脊柱後方に設置し、半年ごとにロッドを延長して側弯変形を矯正する方法が適応となることもある。
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