ステロイドそのものは難溶性のため、静注用ステロイドはエステル構造化されており、コハク酸エステル型とリン酸エステル型がある。NSAIDs過敏喘息では、潜在的にステロイド骨格にではなく、コハク酸エステル構造に過敏な体質を有する。これは(ステロイド骨格を持たないがコハク酸エステル構造を有する)クロラクフェニコール静注薬でも同様の増悪が誘発される成績からも証明されている。したがってコハク酸エステルステロイドの急速静注は大増悪を招きやすく非常に危険である。一方、リン酸エステルステロイド製剤のほとんどが水溶製剤のため添加物(サルファイトやパラベンなど)が入っており、その急速投与も安全とはいえない。結論として、注射用(静注用)ステロイドを用いる場合、リン酸エステル骨格のデカドロンやリンデロンの点滴投与が最も安全であるが、コハク酸エステル型ステロイドも1~2時間以上かけて点滴すると副反応がほとんどおきないため、“喘息患者には、静注ステロイドは一律に急速投与(筋注含め)を禁忌とし、点滴投与とする”と決めると医療事故が起きにくい。なお内服のステロイド製剤は内因性ステロイド骨格と同様の構造でありエステル構造をとらないため、ほとんど副反応の報告がなく非常に安全である。
参考文献:
1) 谷口正実. アスピリン喘息(NSAIDs過敏喘息). 日内会誌, 2013; 102(6): 1426-32.
2) Taniguchi M, Sato A, Mita H. Hypersensitivity to intravenous succinate corticosteroids in patients with nonsteroidal anti-inflammatory drug-exacerbated respiratory disease. Front Allergy, 2023: 4: 1145809.