呼吸仕事量と呼吸筋力のバランス
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身長と予測体重の換算表
人工呼吸器管理での換気量は、実際の体重ではなく予測体重で計算する。
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ストローと風船をモデルにした人工呼吸の換気
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ストローと肺をモデルにした気道抵抗、肺コンプライアンス
a. 正常の肺:
正常の肺では気道抵抗も高くなく肺も柔らかいため、換気に大きな圧力は必要ない。
b. 気道抵抗が増大した肺:
気道抵抗が上昇すると、うち勝つために大きな力が必要なため、肺が柔らかくても換気に大きな圧力を要する。
c. コンプライアンスが低下した肺:
肺が固い(コンプライアンスが低い)と、肺胞を膨らませるのに大きな力が必要なため、換気に大きな圧力を要する。
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PEEPの肺胞虚脱と呼吸仕事量に対する役割
a. PEEPなし:
完全に虚脱した肺を再度膨らませるには大きな仕事量が必要となる上、その摩擦で肺障害も起こるとされる。
b. PEEPあり:
適切なPEEPをかけて肺の虚脱を防ぐことで、再度膨らませるための仕事量を減らすことができる。
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肺の圧-容量曲線
風船に息を入れるときに必要な力を考えるとわかりやすい。
肺に換気するときもある程度までは固く、力を入れないと膨らまない(青のゾーン)
ある程度膨らむとその後しばらくスムーズに空気が入りやすくなる(赤のゾーン)
しかし膨らませすぎると過膨張になりまた膨らみにくくなる(緑のゾーン)
膨らみやすくなる点を(LIPLower inflection point)と呼び、過膨張になる点をUIP(Upper inflection point)と呼ぶ。人工呼吸の際にはLIPとUIPの間の赤のゾーンの肺胞内圧で換気を行うことが重要である。
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ARDS Networkの提唱するPEEPとFiO₂の目安
あくまでARDSに対する目安であることに注意する。
高いPEEPが必要とされる場合には下のような設定を目安とするがその妥当性は立証されていない。
参考文献:http://www.ardsnet.org/
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VCVの基本波形と設定項目
① 吸気時間:
VCVでは一定の速度で設定換気量の換気を行う。吸気終末で気道内圧は最大となる。
② 吸気ポーズ時:
吸気が終わった後、一時的に息止めの状態をつくる。その際、気道内圧は肺胞圧と等しくなる。
③ 呼気時間:
この際、機械は何もせず、自然呼気にて気道内圧はPEEPまで低下する。
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PCVの基本波形と設定項目
① 吸気時間:
PCVでは最大吸気圧まで気道内圧を上昇して換気を行う。気道内圧と肺胞内圧の圧格差が大きいほど吸気流速は早く、その差がなくなるにつれ吸気流速は小さくなりやがて0になる。その際の気道内圧は肺胞内圧に等しい。
② 呼気時間:
この際人工呼吸器は何もせず、自然呼気にて気道内圧はPEEPまで低下する。
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各呼吸モードの違い
それぞれのモードの特徴
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A/Cモードの概要
A/Cモードではすべての換気を人工呼吸器で設定された換気で行う。自発呼吸がなければ設定された呼吸回数の間隔で設定された吸気時間、吸気圧(換気量)の換気を行う(①、②)。
患者の吸気努力を感知すると(③)それらにも合わせて換気を行うが、その換気も①、②と同様の設定された換気を行う。
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CPAP+PSモードの概要
吸気、呼気を通じてPEEPをかけておくモードをCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)と呼ぶ。CPAPに加えて、吸気時にサポート圧(PS:Pressure Support)をかけたモードがCPAP+PSである。
CPAP+PSでは患者の吸気努力がなければ換気は行わず (①)、患者の自発呼吸が前提にあるモードである。
患者の自発呼吸を感知すると患者本人が息を吸っている間だけサポート圧をかける。つまり吸気時間は患者自身が決定することとなる。患者の息を吸う長さによって、CPAP+PSの吸気時間は異なることになる (②、③)。
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SIMVモードの概要
SIMVはA/CとCPAP+PSの間のモードといえる。
自発呼吸がない場合、または吸気努力が設定呼吸回数以下の場合は、A/Cと同様の設定された換気を行う。自発呼吸に合わせた換気も同様である。
自発呼吸の回数が設定呼吸回数を超えた場合、その超えた分の吸気努力に合わせた換気は、CPAP+PSと同様に患者が吸気時間を決めるサポート圧をかけて行う。
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VCVの吸気流速と吸気時間
VCVでは一回換気量を設定するが、「その換気量をどれぐらいの速さでいれるか」が吸気流速であり、VCVの吸気時間は一回換気量と吸気流速で決定される。
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VCVの吸気ポーズと波形診断
VCV換気の際、吸気時の気道内圧は、
気道抵抗にうち勝つ圧+肺胞内圧
を反映する。
肺胞に空気が入るにつれ肺胞内圧は上昇し、吸気終末に気道内圧は最大となる (最大吸気圧)。 吸気ポーズ時は空気の流れが止まり、呼吸器~患者肺の間は閉鎖回路となる。閉鎖回路内の圧はどこで測定しても同じであり、
吸気ポーズ時の気道内圧=吸気終末の肺胞内圧
となり、
プラトー圧
と呼ぶ。
最大吸気時の最大吸気圧は、気道抵抗に打ち勝つ圧+吸気終末の肺胞内圧 であるため、最大吸気圧とプラトー圧の差は気道抵抗の強さを反映する。
プラトー圧高値は肺コンプライアンスの低下を反映し、最大吸気圧とプラトー圧の差が大きいときは気道抵抗が上昇する疾患の存在が示唆される。
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VCVにおける吸気努力と波形
自発呼吸での患者の吸気努力が強い場合、VCV換気での吸気速度が間に合わず強い自発呼吸の陰圧で気道内圧がうまく立ち上がらない時がある。
<対策>
吸気流速を上げて自発呼吸の吸気努力に追いつくようにする。
モードをPCVに変えて吸気努力に追いつくようにする。
鎮痛、鎮静薬を調節し自発呼吸努力を軽減する。
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VCV、PCVにおけるAuto-PEEP
呼気が流速波形にて基線に戻る前に次の吸気が始まることは、息を吐き終わる前に人工呼吸器が次の吸気を送り込んでくることを示す。吐き切れない空気は肺に蓄積していき肺胞内圧が上昇する。この状態を Auto-PEEPという。
Auto-PEEPの蓄積は胸腔内圧の上昇を招き、緊張性気胸などと同様に血行動態の悪化につながる。また肺の過膨張から肺障害のリスクも高まる。
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VCVにおける気道抵抗の診断
VCVにおいて、吸気ポーズ時の気道内圧は吸気終末肺胞内圧と等しくなる(プラトー圧)。最大吸気圧とプラトー圧の差は気道抵抗を反映する。
① 正常波形:
正常気道抵抗を反映する圧の正常値は5㎝H₂O以下となる。
② 気道抵抗上昇波形:
プラトー圧は高くないが最大吸気圧との差が大きくなる (10cmH₂O以上)。喘息などの気道抵抗が上昇する状態が示唆される。
③ 肺コンプライアンス低下波形:
吸気圧は高いが気道抵抗は上昇せずプラトー圧が高い。肺疾患など肺コンプライアンスの低下が示唆される。
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PCVにおける肺胞内圧とプラトー圧
PCVでは吸気圧を設定し、PEEPとの差(換気圧:ΔP)の力で換気を行う。
吸気流速波形が基線に戻るまでの十分な吸気時間を設定した場合、最大吸気圧は吸気終末肺胞内圧と等しくなり、それをプラトー圧と呼ぶ。
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PCVの圧波形診断
① 正常:
気道内圧は速やかに設定吸気圧まで上昇し、呼気にてPEEPまでなだらかに低下する。
② 吸気努力が強い:
患者の吸気努力が強く、自発呼吸の陰圧に吸気圧が追いつかない。吸気圧の設定を上げたり、鎮痛鎮静にて吸気努力を抑制して対応する。
③ 吸気時間が長い:
吸気時間が長すぎ、患者の呼気努力と吸気圧がぶつかって圧が上がる。吸気時間を短くして対応する。
④ 2段呼吸になる:
一回の換気が終わっても患者の吸気努力が残存し、それを感知しすぐに次の換気が始まる。「患者はもっと吸いたい」ことの表れであり、吸気時間を長くする、吸気圧を上げるなどで対応する。換気量が過剰になる場合があり、その場合は鎮痛鎮静にて吸気努力を抑制する。
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リーク波形
リークの確認には換気量波形に注目する。
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疾患による呼気時間の変化
呼気相では人工呼吸器は何もせず患者の呼気に任せる。そのため呼気障害の有無によって呼気時間は異なる。
① 正常:
一般的に吸気よりも呼気の方が長く、Auto-PEEPを防ぐために、吸気:呼気=1:2程度が一般的である。
② 呼気延長:
喘息、心不全、COPD急性増悪など、呼気障害が生じる疾患では呼気が長くなり、呼気時間を十分確保しないとAuto-PEEPの危険性が上昇する。
③ 呼気短縮:
肺のコンプライアンスが低下する疾患では肺が縮みやすく、呼気に必要な時間は短縮する。ARDSなどが代表的疾患だが、肺がかたく換気量が確保しづらいため、呼吸数を上昇させて対応することが多い。
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CPAP+PSにおけるターミネーション設定と吸気時間
CPAP+PSでは吸気時間も患者の自発呼吸が決める。
最大吸気流速の値を100%として設定した割合まで吸気流速が低下した時点で、呼吸器は吸気の終わりと判断しサポート圧を止める。
一般的に20~25%に設定されることが多いが、その割合も変更することが可能であり、吸気時間も設定された割合によって変動する。
ターミネーション設定を大きくするとサポート圧を止めるのが早くなり、吸気時間が短縮する。
逆に、小さくするとサポート圧を止めるのが遅くなり、吸気時間が長くなる。
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肺コンプライアンスの低下と圧-容量曲線の変化
ARDSのようなコンプライアンスが低い肺では、圧-容量曲線は横に寝そべるような形になる。LIP到達には正常肺より高い肺胞内圧が必要であり、LIPより圧を上げても換気量の増加は乏しい。
大きな換気量での換気はすぐにUIPに到達してしまい、過剰な圧による肺障害につながる。
つまり、コンプライアンスが低下している肺への人工呼吸管理では、通常よりも高めのPEEPと小さい換気量での換気が必要と考えられる。
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肺保護換気と圧-容量曲線
VALIを最小限にするためには虚脱も過膨張も防ぎながら換気を行うことが重要である。そのためにはPEEPはLIPの肺胞内圧( P①)よりも高く設定し、吸気終末の肺胞内圧であるプラトー圧をUIPの肺胞内圧 (P②)よりも低くする。
大きな換気はずり応力を生み出しVALIにつながるため、換気量は小さくする。
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経肺圧の考え方
a. 肺胞に実際にかかる圧は、肺胞内圧だけではなく肺の外からの胸腔内圧も影響する。
肺胞に実際にかかる圧を経肺圧と呼び、「経肺圧=肺胞内圧-胸腔内圧」の式が成り立つ。
b. 自発呼吸は胸腔内圧を陰圧にするため、強い自発呼吸の存在時には経肺圧は肺胞内圧より大きくなる。プラトー圧を制限していても過剰な自発呼吸で経肺圧が上昇し、肺障害が進行する可能性も示唆されている。
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人工呼吸器のアラームとその対応
アラームは放置せず対応する。
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呼吸器設定のアルゴリズム
人工呼吸器設定の大まかな手順を以下に示す。
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