急性心筋梗塞に合併した房室ブロックおよび心室内伝導障害への対応に関するガイドライン。ST上昇型急性心筋梗塞に関するACC/AHAガイドライン(2004年)から抜粋。
この表は、前壁あるいは非前壁ST上昇型心筋梗塞急性期に発生する可能性のある房室伝導障害(列見出し)および心室内伝導障害(行見出し)に対する治療の選択肢と各選択肢の推奨度をまとめた。
AV=房室;MI=心筋梗塞;A=アトロピン;TC=経皮的ペーシング;TV=一時的経静脈的ペーシング;LAFB=左脚前枝ブロック;LPFB=左脚後枝ブロック;RBBB=右脚ブロック。
処 置
4通りの処置ないし治療の選択肢があり、徐脈型不整脈あるいは伝導障害のそれぞれについて分類して記載した:
- 観察:ECGモニタリングの継続、さらなる処置を講じない。
- AおよびA*:アトロピン0.6-1.0 mgを5分間隔で最大0.04 mg/kgまで静脈内投与する。一般に、アトロピンによる洞レート上昇の程度は予測できないため、洞性徐脈あるいはMobits I型房室ブロックのような、迷走神経遮断剤に反応する見込みのある症候性の徐脈以外では、この治療は避けるべきである。これはアスタリスクをつけて表す。
- TC:緊急経静脈的ペーシングの必要性が低い場合の経皮的パッドの装着、および経皮的ペーシングのスタンバイ。
- TV:一時的経静脈的ペーシング。表には記載しないが、一時的経静脈的ペーシングを施行するために患者を血管造影室に移送する際、経皮的パッドを装着し、経皮的ペーシングの準備をしておくことは医師の判断による。
推奨度(クラス)
各処置の選択肢は、ACC/AHA基準に従い、I、IIa、IIb、IIIにさらに分類される。すべての欄およびすべての治療のエビデンスのレベルは、BまたはCである。特定の治療選択肢を比較、検討したランダム化比較試験は存在しない。さらに、本表のデータおよび勧告は、主として血栓溶解療法が行われる以前の観察研究を参考としている。したがって、上記の勧告はあくまでも勧告として受け止め、臨床状況に合わせて調節しなければならない。
エビデンスのレベル
本表は、主として再潅流療法以前の時代の①公表された症例ないし複数症例での観察研究、②公表されたこれらのデータのメタ分析以外の要約、および③専門家の意見――から作成されている。ST上昇型心筋梗塞後の伝導障害に対する各種の治療法に関するランダム化比較試験は公表されていない。したがって、表中の勧告に対するエビデンスのレベルはCである。
表の使い方
例:54歳男性が前壁ST上昇型心筋梗塞のため入院した。入院時のQRS幅は狭い。第1病日に、右脚ブロック(RBBB)が新規に出現し、PR間隔は0.28秒であった。
1.RBBBは心室内伝導障害であるので、「新出脚ブロック」の行を見る。
2.「第1度房室ブロック」の列を見る。
3.「処置」および「クラスClass」の交差する欄を見る。
4.「観察」および「アトロピン」はClass IIIであり、適応ではないことに注意せよ。経皮的ペーシング(TC)はClass Iである。一時的経静脈的ペーシング(TV)はClass IIaである。
出典
Circulation. 2004 Aug 31;110(9):e82-292.