HDV感染は、HDV単独では感染が成立しないことから、その感染様式は、①HBV非感染渚に対するHBVとHDVの同時感染(coinfection)か、②HBV持続感染者に対するHDVの重複感染(superinfection)のいずれかに大別される。
4-1.同時感染(coinfection)
HBV非感染者に対するHBVとHDVの同時感染である。成人例ではHBV感染は慢性化せず通常一過性で経過するためにHDV感染も一過性感染として終息する。同時感染の特徴としてALT値の上昇ピークが2峰性を形成するといわれており、初めのピークはHBV増殖、遅れてのピークがHDV増殖に相当する。各種ウイルスマーカーは、まずHBV-DNA、HBs抗原の順に検出され、次にHDV-RNA、HD-Agが検出される。ALT上昇に伴ってIgM-HBc抗体およびIgM-HD抗体が陽性となるが、IgM-HD抗体の出現時期は、肝炎発症から数日から数週間遅れる。HD-Agの消失の後、HD抗体は陽性となるも低力価のことが多い。
4-2.重複感染(superinfection)
HBVキャリアーに対するHDVの感染である。HBV感染が持統するため、HDV感染も慢性化する可能性が高い。ALT値の上昇パターンは、1峰性である。各種ウイルスマーカーは、発症以前からのHBV血症を反映するHBsAg陽性、HBV-DNA陽性に加えて、ALT値の上昇前にHDV-RNA、HDAgが検出される。HBV持続感染者であることから、HBc抗体は高力価で、IgM-HBc抗体は陰性である。ALT上昇後比較的早期にIgM-HD抗体は持続陽性となる。HDV持続感染に移行する場合は、ウイルス血症は持続し、IgM-HD抗体も陰性化せずに陽性となり、HD抗体も力価が上昇していく。
ALT:血中アラニンアミノトランスフェラーゼ値、anti-HBc :B型肝炎コア抗原抗体、anti-HDV:D型肝炎ウイルス抗体、HBsAg:B型肝炎表面抗原、HBV:B型肝炎ウイルス、HDV:D型肝炎ウイルス、IgM:免疫グロブリンM