欧米のガイドラインでは,歯科治療前の予防的抗菌薬投与に関してはしばらく推奨していなかった。とくに、2008 年に発表された英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインでは、歯科などにおけるいかなる侵襲的処置の際にも抗菌薬の前投与は不要とされた(2016 年にはつねに不要というわけではないとの表現に修正された)。しかしながら、AHA/ACCの2020年改訂版ガイドラインおよび2017年改訂版ESC/ESCTSガイドラインでは、一転して推奨している。わが国ではこのような変遷を含めて検討され、人工弁置換術後患者が該当するIE 高度リスク患者に対する予防的抗菌薬投与は推奨されている。