hCGはLH、FSH、TSHとαサブユニットを共有するため交差反応が多いとされ、わが国の泌尿器科では長らくβhCGを測定することが標準とされてきた。βサブユニットはhCGに特異的なアミノ酸配列(βhCG-CTP)を持つので、βhCG-CTPを認識する交差反応の少ない測定系が開発されたにもかかわらず日本の泌尿器科ではβhCGだけを測定することが多い。またわが国のhCGの測定系にはβが付くものと付かないものがあって、実際に上記3つのどれを測定しているものか判然としないという問題点がある。どれを対象にしているかは、日本のガイドラインを参照されたい[1]。
intact hCG(ihCG)はαおよびβサブユニットが結合した状態のものを測定し、診断感度39~90% [2][3][4][5]で偽陽性がほとんどなく、セミノーマ1.9%、非セミノーマ1.4%[5]である。ただし測定に時間がかかり、測定レンジが狭いので高値の測定には希釈を繰り返す必要があるが、低値測定の信頼性が高い。
freeβhCGはαサブユニットと結合していないものの測定系で、診断感度39~88%[2][3][4][5]であるが、偽陽性が9~10%と多く[5][6][7]、ng/ml単位で表記され、mIU/mlへの換算ができないためIGCCC分類に使用できない。
total hCG(thCG)は近年登場した測定系で、ihCGとfreeβhCGの両方を測定でき、感度はセミノーマ82%、非セミノーマ92.3%と高く、偽陽性がない[5]。ただし低値では感度が低く基準値がやや高めに設定されている。Phantom hCGは低レベルの異常値が持続する場合にみられ、アッセイで使用される動物(マウス)抗体に対する抗体(異好性抗体:HAMA)が存在し、sandwich assayで固相化した抗体に結合する。HAMAが存在するとhCGがなくても固相抗体と標識抗体を架橋して偽陽性となる[7]。尿中hCGは陰性になるので鑑別できる。あるいは異なるアッセイキットで測定値に5倍以上の差がみられる。
参考文献:
- 日本泌尿器科学会編:精巣腫瘍診療ガイドライン2015年版, p23-24. 金原出版 2015
- Hoshi S, Suzuki K, Ishidoya S, et al.:Significance of simultaneous determination of serum human chorionic gonadotropin (hCG) and hCG-beta in testicular tumor patients. Int J Urol 2000;7(6):218-23. doi:10.1046/j.1442-2042.2000.00181.x
- Marcillac I, Troalen F, Bidart JM, et al.:Free human chorionic gonadotropin beta subunit in gonadal and nongonadal neoplasms. Cancer Res 52:3901-3907, 1992.
- 中村薫, 出口修宏, 萩原正通, 他:睾丸腫瘍におけるHuman Chorionic Gonadotropin (hCG)の分別定量とその臨床的意義.日泌尿会誌1990;81(3): 408-413.
- 滝沢明利, 岸田健:精巣腫瘍診療における画像検査と腫瘍マーカーの新しい知見と解釈上の注意点.泌尿器外科2012; 25(1): 23-27.
- 滝沢明利, 三浦猛, 岸田健, 他:精巣腫瘍の管理におけるtotal human chorionic gonadotropin(hCG)の有用性 free βhCGにかわる精巣腫瘍の標準マーカーとしての可能性.日泌尿会誌2007; 98(1): 23-29.
- Cole LA.:Phantom hCG and phantom choriocarcinoma. Gynecol Oncol. 1998 ;71(2):325-9. doi:10.1006/gyno.1998.5181