解離症状出現のトリガー、レスポンス、および、診断
情動記憶はさまざまなトリガーで想起される。過去のトラウマと直接に関係したものがトリガーになる場合(T1)、過去のトラウマと類似のことがらがトリガーになる場合(T2)、過去のトラウマとは一見無関係な不特定の多くのものがトリガーになる場合(T3) がある。幼少期に赤いネクタイの父親から虐待を受けていた場合に、父親のことを見聞きしたり(T1)、父親と似た人から怒鳴られたり(T2)、または、赤いネクタイを見ただけで(T3)、何らかの反応が起こる。男の大声、ドアをバタンと締める音、車のブレーキの音、懐中電灯の光など、要素的なもので日常生活において頻繁に遭遇することがらがトリガーになると、生活への支障は大きい。反応として生じる症状は、具体的な外傷エピソードを思い出す場合(R1)、エピソードの想起を伴わずに、恐怖感情や自律神経症状(動悸や発汗や震え)が現れる場合(R2)、解離症状が現れる場合(R3)がある。T1-R1が典型的なPTSD、T3-R3が典型的な解離性障害である。具体的な想起がなされることも恐怖であるが、具体的なエピソードを想起できずに動悸や震えだけを感じる場合には、これだけ恐怖感が出るからには、生死に関わるような脅威が実際に迫っていると誤って解釈し、その結果、大きな混乱を来すことが多い。
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解離症状の診断と治療アルゴリズム
身体疾患により記憶欠損や意識消失などが起きていないことを確認する。また、別の精神疾患の併存があれば、まずそれを治療する。アルコールや抗不安薬・睡眠薬の依存や乱用があれば、断酒や断薬を行う。大量に処方されている抗不安薬を中止することで、解離症状が速やかに改善することがある。解離症状に対する疾病教育を行い、強い不安は過去の記憶と関連した症状であり、現実の脅威は患者が感じているよりも少ないことを理解させる。効果がなければ、過去のトラウマも含めた精神療法的アプローチを導入する。解離性障害に適応のある向精神薬はないが、不眠、気分変動、不安などの症状をターゲットにした薬物療法が必要になることも多い。
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