尿蛋白量とeGFR のカットオフ値は、IgA 腎症の治療に関するランダム化並行群間比較試験における対象患者の特性のみならず、わが国での診療の実情を踏まえて、従前の本ガイドライン(2014、2017年版)と「IgA 腎症診療指針 第3版」の内容とも整合するように配慮した。
eGFR 30 mL/分/1.73 m2以上、かつ尿蛋白量0.5 g/日以上の場合は、組織学的重症度や血尿の程度、血圧、年齢を考慮したうえで、RA 系阻害薬や副腎皮質ステロイド薬の投与を検討する。また、免疫抑制薬、抗血小板薬、n-3 系脂肪酸の投与や口蓋扁桃摘出術(単独あるいはステロイドパルス療法との併用)を検討してもよい。
eGFR 30 mL/分/1.73 m2以上、かつ尿蛋白量0.5 g/日未満の場合は、薬物療法なしでの経過観察を基本とするが、上気道感染後に肉眼的血尿など尿所見の悪化を認める症例では、口蓋扁桃摘出術を検討しても良い。また、急性の組織病変がある場合には、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬をはじめとした薬物療法も考慮する。
eGFR 30 mL/分/1.73 m2未満の場合は、血圧や尿蛋白量等を考慮した上でRA 系阻害薬での治療を基本とするが、急速進行性の腎機能障害を呈する症例や急性の組織病変がある場合には、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の投与も考慮する。RA 系阻害薬の初回投与時には、腎機能の推移に注意しながら慎重に投与する。
副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬を投与する場合は、個々の症例で治療効果と感染症などの副作用リスクとのバランスを十分考慮する。また、すべての症例で、CKD に対する一般療法として生活指導と食事療法を行う。