今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 細矢光亮 福島県立医科大学 周産期・小児地域医療支援講座

監修: 渡辺博 帝京大学老人保健センター

著者校正/監修レビュー済:2025/01/15
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、文言を一部修正した。

概要・推奨   

  1. 手足口病は、手足および口腔内に水疱性発疹を呈する疾患であり、主にエンテロウイルス71やコクサッキーウイルスA6、A16などのエンテロウイルスによって引き起こされる。一般に、対症療法のみで治癒する予後の良好な疾患であるが、高熱や経口摂取困難などのために脱水症を来しやすく、補液が必要な場合がある。ときに、髄膜炎、脳炎・脳症、ポリオ様麻痺、ギラン・バレー症候群などの神経系合併症を来すことがあり、特にエンテロウイルス71では脳幹脳炎の発症に注意が必要である(推奨度2)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 手足口病とは、エンテロウイルス71、コクサッキーウイルスA16やA6などのエンテロウイルスによって起こる、手、足、口腔内の水疱を主訴とする感染症である。
  1. エンテロウイルスは、従来の血清型による分類により、急性灰白髄炎(Poliomyelitis)の病原体であるポリオ(Polio)ウイルス(1~3型の3種)、哺乳マウスを用いて分離され、最初に分離された地名をもとに名づけられたコクサッキー(Coxsackie)ウイルス(A群:1~22,24型の23種、B群:1~6型の6種)、細胞培養法により分離され、当初疾患との関連が見いだせなかったことから名づけられたエコー(Enteric cytopathogenic human orphan、Echo)ウイルス(1~7,9,11~21,24~27,29~33型の28種)に分けられる。1969年以降に発見されたウイルスに対しては、コクサッキーウイルスとエコーウイルスを生物学的性状からは明瞭に区別できないことから、エンテロウイルスとして通し番号を付して呼ばれるようになり、その後同定されたウイルスはエンテロウイルス(68-71型,その他)と命名された。
  1. 近年、エンテロウイルスは遺伝的相関性に基づき、ポリオウイルス以外をエンテロウイルスA(コクサッキーウイルスA2~8,10,12,14,16型、エンテロウイルス71型)、B(コクサッキーウイルスB1~6型、エコーウイルス1~7,9,11~21,24~27,29~33型、コクサッキーウイルスA9型、エンテロウイルス69型)、C(コクサッキーウイルスA1,11,13、15,17~22,24型)、D(エンテロウイルス68,70型)の4種(species)に新たに再分類されている。手足口病の原因となるエンテロウイルス71、コクサッキーウイルスA16やA6は、エンテロウイルスA種に分類される。
 
エンテロウイルス感染症の病態

エンテロウイルス感染症の病態とエンテロウイルスの血清型との間には関連がある。手足口病には、エンテロウイルス71とコクサッキーウイルスA16やA6が、ヘルパンギーナにはコクサッキーウイルスA群が関与する場合が多い。

出典

細矢光亮(岡部信彦):小児感染症学: 診断と治療社, 2007; 446.
 
  1. エンテロウイルス感染症は、熱帯地域では季節性に乏しいが、わが国を含む温帯地域においては夏季の急性熱性疾患に関わる病原体の代表であり、世界中に普遍的に存在するウイルスである。
  1. エンテロウイルスの一般的な感染経路は糞口(fecal-oral)あるいは飛沫(oral-oropharyngeal)によるヒト-ヒト感染である。ウイルスは通常の環境においては容易には失活せず、間接的にも感染(接触感染)し得る[1]
  1. 潜伏期は通常3~6日である。呼吸器系へのウイルス排泄は通常1週間未満であるが、糞便への排泄は発症から数週間持続する。不顕性感染においてもウイルスは糞便に排泄され、感染源となる[1]
  1. ウイルスは体内に侵入後、腸管で増殖し、その一部が血液中に入り、ウイルス血症を起こす。血液を介して種々の臓器に運ばれ、各臓器で再び増殖して組織障害を引き起こし、急性灰白髄炎(ポリオ)、手足口病、ヘルパンギーナ、無菌性髄膜炎、脳炎などのさまざまな臨床症状を呈する[2]
  1. 手足口病は、手足口に水疱性発疹を来す疾患である。手掌、手背、指間、足底、足背、口腔粘膜にみられ、ときに下腿、膝関節、臀部にも出現する。
  1. 手足口病の原因としては、エンテロウイルス71とコクサッキーウイルスA16が多かったが、近年コクサッキーウイルスA6による手足口病の流行が増加している。
  1. 通常、手足口病は軽症であるが、特にエンテロウイルス71では、神経系合併症として髄膜炎、脳幹脳炎、ポリオ様麻痺、ギラン・バレー症候群などを引き起こすことがある。
問診・診察のポイント  
  1. 手足口に水疱性発疹がみられる疾患である。手掌、手背、指間、足底、足背、口腔粘膜にみられ、ときに下腿、膝関節、臀部にも出現する。水疱性発疹を認めたら、出現部位を丁寧に確認する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
細矢光亮 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:渡辺博 : 特に申告事項無し[2025年]

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手足口病(小児科)

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