今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 小野沢滋 みその生活支援クリニック

監修: 和田忠志 ひだまりホームクリニック

著者校正/監修レビュー済:2022/10/12
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 皮下補液についての項目を改定した。薬剤投与経路としての皮下注射についても可能な限り記載を行った。

概要・推奨   

  1. 在宅で補液をおこなう場合、患者の快適さや安全性などから、高齢者の場合には皮下輸液を第一選択と考えて良い。
  1. 悪性腫瘍終末期の中心静脈栄養は症状増悪および生命予後を短縮するのリスクとなり得る。中止を考慮すべきである。

まとめ 

まとめ  
  1. 在宅医療の輸液は①経口摂取不十分時の脱水予防、②経口摂取不可能時の家族希望の充足、③中心静脈栄養――の3つの目的で行われることが多い。 >詳細情報 
  1. アクセスルートとしては、末梢血管、中心静脈に加え、皮下注射の経路が用いられる。
  1. 持続大量皮下注射は経口摂取不十分時の脱水予防や、少量補液で1日量が1,000ml以下、等浸透圧補液で賄える場合に用いることができる。
  1. 終末期患者に対しての末梢からの少量補液が症状改善につながるという根拠は薄弱である[1]。多くの場合、家族や本人の心理的要因の緩和のために行うと考えたほうがよい。
  1. 在宅中心静脈栄養法(Home Parenteral Nutrition、HPN)には、Hohn カテーテル、埋込み型中心静脈ポート(<図表>)、トンネル型カテーテル、PICCカテーテル(<図表>)、が用いられており、留置期間によって使い分ける。 >詳細情報 
  1. 長期的なHPN、特に短腸症候群が原疾患のHPNでは脂肪肝から肝硬変を来すことがある。頻度は報告によりさまざまであるが、報告によっては長期例の42%が重症化するという報告もある[2]
  1. HPNによる肝疾患の予防には、ウルソデオキシコール酸[3]や、積極的な経口摂取の併用[4]などがある程度有効といわれているが、確立された方法はない。
  1. HPNを余命が短い(例えば週単位など)悪性腫瘍の患者に行う場合、適応外と考えられていること[1][5][6][7]をきちんと認識したうえで、患者に利益があると個別に判断した症例にのみ行うべきである。
  1. 終末期の患者で中心静脈栄養がなされ、倦怠感や気持ちの悪さを訴えている場合、経験上、高カロリー輸液の中止で症状が改善することが多い。
  1. 悪性腫瘍におけるHPNの最もよい適応は、上部消化管狭窄で長期予後が推測される場合である[5]
  1. HPNは経腸栄養などと比較して合併症の発生頻度が高く、catheter related bloodstream infection(CRBSI)を常に念頭に置く必要がある。HPNのルート閉塞は比較的頻回に起きる。閉塞時の対処としてはウロキナーゼ6,000~1万単位/mLとしたものをルート内に注入し、2~3時間ほど放置する方法が有効である[8]。改善しない場合には画像診断を考慮する。

問診、診察のポイント 

問診、診察のポイント  
  1. 終末期悪性腫瘍の場合には、TPN施行によって、患者に不利益がもたらされていないかをきちんと検証する。
  1. 短腸症候群など長期にHPNを行う症例では、肝機能には特段の注意を払う必要があり、定期的な採血を行う。
  1. カテーテル関連の感染には注意する。埋込み型ポートの場合、ポート埋め込み部の発赤、腫脹、圧痛を観察。トンネル型の場合、入口部の発赤、腫脹、膿の流出、圧痛の確認を行う。
  1. 発熱した場合にはCRBSIを疑い、2セット血液培養を採る。そのうち1つは末梢血管から採ることが望ましい[9]
  1. 血栓症に注意する。特に骨盤内悪性腫瘍などに対して、下肢にルートがある場合、PICCカテーテルが用いられている場合は、挿入側の肢の浮腫には特段の注意を払い、片側性浮腫が認められた場合には血栓を疑う[8]
  1. 中心静脈栄養を長期間行った場合、高率(1年で21%、2年で38.7%)に胆石を合併する[10]ことが知られており、腹痛を訴える場合には胆石発作を念頭に置いて診察を行う。

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
小野沢滋 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:和田忠志 : 特に申告事項無し[2025年]

ページ上部に戻る

輸液と中心静脈栄養(在宅医療)

戻る