今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 柏井聡 愛知淑徳大学 健康医療科学部医療貢献学科視覚科学専攻

監修: 沖波聡 倉敷中央病院眼科

著者校正/監修レビュー済:2022/03/30
参考ガイドライン:
  1. 日本神経学会:多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017
  1. 日本眼科学会:抗アクアポリン 4 抗体陽性視神経炎診療ガイドライン2014
  1. 日本神経治療学会:標準的神経治療:視神経脊髄炎(NMO)2013
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 光干渉断層法(OCT)および光干渉断層血管撮影法(OCTA)の長足な進歩で非侵襲的に視神経乳頭の精緻な3次元形状解析、容積測定が可能となり、「視神経乳頭腫脹の3次元眼底画像解析」について改訂を行った。
  1. アクアポリン4、ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白の自己抗体が同定され中枢神経系グリア自己抗体介在疾患の病態解析が進み、それに伴う視神経炎の治療指針の改訂を行った。

概要・推奨   

  1. うっ血乳頭が疑われる場合、脳の画像検査が正常でも、必ず、脳脊髄圧を測定する(推奨度1)
  1. 前部視神経炎では、初診時に眼窩部(視神経から視交叉)の脂肪抑制造影MRIおよび頭部MRIの緊急検査を行い中枢神経系グリア自己抗体介在疾患および多発性硬化症について評価する(推奨度1)

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 検眼鏡的に視神経乳頭が腫脹している状態を乳頭腫脹optic disc swellingという。網膜神経節細胞の軸索である視神経は、その神経線維の中に順行性の速い軸索流と遅い軸索流、そして、逆行性の3種類が流れている。眼球内から出て有髄化した視神経は、それを取り巻くクモ膜下腔圧(脳圧)と眼球内圧の圧差を越えて行き来している。虚血やATPの枯渇は速い軸索流を止め、脳圧が亢進しても、低眼圧となっても、遅い軸索流が止まり、原因の如何にかかわらず、軸索流の渋滞は篩状板の前で起こり、乳頭は盛り上がる。乳頭が隆起するのは、せき止められた軸索流によって増大した軸索の容積増大に原因があって間質の浮腫性水分ではない。したがって、用語上「乳頭浮腫 optic disc “edema”」は不適切で、日本眼科学会用語集第6版では、乳頭浮腫は旧用語とし、乳頭腫脹を標準主要用語として推奨している。乳頭隆起(disc elevation)、混濁を伴い隆起した乳頭腫脹(disc swelling)は、検眼鏡的な他覚的所見を記述しているだけで、病因に基づく診断名ではない。注意が必要な用語にうっ血乳頭(papilledema)がある。うっ血乳頭は頭蓋内圧亢進に基づく視神経乳頭の腫脹を表す診断名で、脳圧亢進の裏付けがない限り、不用意に用いない。
  1. 視神経乳頭が隆起している場合、先天性に構造上隆起している乳頭隆起と、後天性に視神経乳頭が腫脹して隆起する乳頭腫脹に分かれる。
  1. 乳頭腫脹は、さらに、頭蓋内圧亢進に基づくうっ血乳頭、視神経の圧迫性病変による圧迫性視神経症、および、乳頭の局所的病因による乳頭腫脹の3つに分類できる。
問診・診察のポイント  
 
  1. 視神経乳頭の異常は脳の異常を反映することがあるため、患者の全身的予後と直接関係する。鑑別すべき疾患の順位は、年齢によって変わり、成人と乳幼児、小児では対応がまったく異なる。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
柏井聡 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:沖波聡 : 特に申告事項無し[2024年]

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視神経乳頭腫脹

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