今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 廣瀬由美 筑波メディカルセンター病院 総合診療科

監修: 大滝純司 東京医科大学 医学教育学分野 総合診療科

著者校正/監修レビュー済:2022/03/30
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った。

概要・推奨   

  1. 血圧正常で無症状の若年者における、心窩部で聴取する収縮期の腹部血管雑音は、それだけでは精査の適応とはならない。
  1. 収縮期~拡張期にかけての雑音のある高血圧患者では、腎血管狭窄症の可能性が高い。また、後部(背部)から血管雑音を聴取した場合にも、腎血管性の可能性が高い。
  1. 肝臓上で聴取する動脈雑音は、健常者では<3%だが、肝癌では10~56%であり、基礎疾患などから肝腫瘍が疑われる場合に聴取すればよい。また、脾臓周囲での動脈雑音は、巨脾や膵癌による脾動脈圧迫(感度39%)を疑う所見であるとされる。

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 腹部血管雑音とは、腹部で聴取する、主に動脈性の雑音である。安静臥位で、聴診器の膜面を用いて中等度の圧力で押し当てて聴取する。強く押し当てると雑音を生じさせるため注意する。
  1. 健常者でも4~20%で聴取され、若年者で聴取されやすい。腹腔動脈の無症候性狭窄から生じることが多い[1]。心窩部で聴取される、収縮期のみの中~低調音であり、この場合は必ずしも精査を要しない[2]
  1. 正中から離れた部位や、収縮期~拡張期にわたって聴取される腹部血管雑音は病的であることが多い。
  1. 収縮期~拡張期にわたって聴取される血管雑音は、大動脈や大きな血管の部分閉塞を示唆する[3]
  1. 高血圧患者の腹部血管雑音は腎血管性高血圧の場合、感度20~78%、特異度64~90%であるとされる。したがって、高血圧患者の血管雑音は精査を必要とする[4]。高ピッチ雑音の頻度が高い。
  1. 他、肝硬変、腹部の腫瘍、動静脈瘻、動脈瘤、血管炎等で腹部血管雑音を聴取すると報告されている[2][3]
問診・診察のポイント  
 
  1. 腹部の聴診は、視診のあと、打診や触診より前に行う。安静臥位で、聴診器の膜面を用いて中等度の圧力で押し当てて聴取し、強く押し当てすぎて動脈を圧迫して雑音を生じさせてしまわないように注意する。心窩部と4領域すべて(右上、右下、左上、左下)で聴取する。部位や音の強度、放散の有無、収縮期か拡張期かを確認する。血管への距離が短くなるため、血管雑音は呼気時ややせ型体形で聴取しやすい[1]
  1. 健常者でも4~20%で腹部血管雑音を聴取する。無症状・正常血圧・基礎疾患のない若年者で、心窩部で収縮期の短い血管雑音を聴取した場合は、病的でないことが多い。

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廣瀬由美 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:大滝純司 : 特に申告事項無し[2024年]

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腹部血管雑音

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