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フェントステープ0.5mg、他

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効能・効果/用法・用量 

効能・効果

  • 成人

    • 非オピオイド鎮痛剤及び弱オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記における鎮痛(ただし、慢性疼痛は他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する場合に限る。)
      • ○中等度から高度の疼痛を伴う各種がん
      • ○中等度から高度の慢性疼痛
  • 小児

    • 非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記における鎮痛(ただし、他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する場合に限る。)
      • ○中等度から高度の疼痛を伴う各種がん

用法・用量

  • 成人

    • 通常、成人に対し胸部、腹部、上腕部、大腿部等に貼付し、1日(約24時間)毎に貼り替えて使用する。
      初回貼付用量は本剤貼付前のオピオイド鎮痛剤の治療有無により、下記のとおり選択する。
      その後の貼付用量は患者の症状や状態により適宜増減する。
      • <がん疼痛>

        • 本剤貼付前にオピオイド鎮痛剤を使用していない場合、0.5mgより開始する。
          他のオピオイド鎮痛剤から本剤に切り替えて使用する場合、本剤貼付前に使用していたオピオイド鎮痛剤の用法及び用量を勘案して、0.5mg、1mg、2mg、4mg、6mgのいずれかの用量を選択する。
      • <慢性疼痛>

        • 他のオピオイド鎮痛剤から本剤に切り替えて使用する。
          本剤貼付前に使用していたオピオイド鎮痛剤の用法及び用量を勘案して、0.5mg、1mg、2mg、4mg、6mgのいずれかの用量を選択する。
  • 小児

    • <がん疼痛>

      • 他のオピオイド鎮痛剤から本剤に切り替えて使用する。
        通常、小児(2歳以上)に対し胸部、腹部、上腕部、大腿部等に貼付し、1日(約24時間)毎に貼り替えて使用する。
        初回貼付用量は本剤貼付前に使用していたオピオイド鎮痛剤の用法及び用量を勘案して、6歳以上の場合は、0.5mg、1mg、2mg、4mg、6mgのいずれかの用量を選択し、2歳以上6歳未満の場合は、0.5mg、1mg、2mgのいずれかの用量を選択する。
        その後の貼付用量は患者の症状や状態により適宜増減する。

禁忌 

【警告】

  • 本剤貼付部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増加し、過量投与になり、死に至るおそれがある。本剤貼付中は、外部熱源への接触、熱い温度での入浴等を避けること。発熱時には患者の状態を十分に観察し、副作用の発現に注意すること。[8.10、9.1.5参照]
【禁忌】

次の患者には投与しないこと

  • 2.1 本剤の成分に対し過敏症のある患者
  • 2.2 ナルメフェン塩酸塩水和物を投与中の患者又は投与中止後1週間以内の患者[10.1参照]

注意 

9.特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 慢性肺疾患等の呼吸機能障害のある患者
呼吸抑制を増強するおそれがある。[11.1.1参照]
9.1.2 喘息患者
気管支収縮を起こすおそれがある。
9.1.3 徐脈性不整脈のある患者
徐脈を助長させるおそれがある。
9.1.4 頭蓋内圧の亢進、意識障害・昏睡、脳腫瘍等の脳に器質的障害のある患者
呼吸抑制を起こすおそれがある。[11.1.1参照]
9.1.5 40℃以上の発熱が認められる患者
本剤からのフェンタニル放出量の増加により、薬理作用が増強するおそれがある。[1.、8.10参照]
9.1.6 薬物依存の既往歴のある患者
依存性を生じやすい。[8.7、11.1.3参照]
9.2 腎機能障害患者
代謝・排泄が遅延し、副作用があらわれやすくなるおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
代謝・排泄が遅延し、副作用があらわれやすくなるおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること。フェンタニルクエン酸塩注射液において、分娩時の投与により新生児に呼吸抑制、分娩時を含む妊娠中の投与により胎児に徐脈があらわれたとの報告がある。妊娠中のフェンタニル経皮吸収型製剤の使用により、新生児に退薬症候がみられたとの報告がある。動物実験(ラット)で胎児死亡が報告されている。[11.1.3、16.3.2参照]
9.6 授乳婦
授乳中の女性には、本剤使用中は授乳を避けさせること。ヒトで母乳中へ移行することが報告されている。[16.3.3参照]
9.7 小児等
<がん疼痛>
9.7.1 6歳未満又は体重20kg未満の小児では傾眠の発現により注意するとともに、患者の状態、特に意識状態及び呼吸状態について観察を十分に行うこと。小児がん疼痛患者を対象とした国内臨床試験において、傾眠の発現割合は2~5歳で75.0%(3/4例)、6~19歳で0%(0/7例)、体重20kg未満で50.0%(3/6例)、20kg以上で0%(0/5例)であり、6歳未満又は体重20kg未満の小児における傾眠の発現割合は、成人がん疼痛患者を対象とした国内臨床試験における傾眠の発現割合(12.0%(49/408例))よりも高かった。[7.1.1参照]
9.7.2 低出生体重児、新生児、乳児、2歳未満の幼児又は体重が10kg未満の小児を対象とした臨床試験は実施していない。
<慢性疼痛>
9.7.3 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
副作用の発現に注意し、慎重に使用すること。フェンタニルのクリアランスが低下し、血中濃度消失半減期の延長がみられ、若年者に比べ感受性が高いことが示唆されている。

8.重要な基本的注意

8.1 本剤を中等度から高度のがん疼痛又は慢性疼痛以外の管理に使用しないこと。
8.2 本剤の使用開始にあたっては、主な副作用、具体的な使用方法、使用時の注意点、保管方法等を患者及び保護者等に対して十分に説明し、理解を得た上で使用を開始すること。特に呼吸抑制、意識障害等の症状がみられた場合には速やかに主治医に連絡するよう指導すること。また、本剤使用中に本剤が他者に付着しないよう患者及び保護者等に指導すること。[14.1.3、14.1.6、14.1.7、14.2.1-14.2.10、14.3.1-14.3.3参照]
8.3 重篤な呼吸抑制が認められた場合には、本剤を剥離し、呼吸管理を行う。呼吸抑制に対しては麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)が有効であるが、麻薬拮抗剤の作用持続時間は本剤より短いので、観察を十分に行い麻薬拮抗剤の繰り返し投与を考慮すること。[11.1.1参照]
8.4 他のオピオイド鎮痛剤から本剤への切り替え直後に、悪心、嘔吐、傾眠、浮動性めまい等の副作用が多く認められることがあるため、切り替え時には観察を十分に行い、慎重に使用すること。なお、これらの副作用は経時的に減少する傾向がみられる。また、本剤貼付前にオピオイド鎮痛剤を使用していない場合、本剤の投与開始後は悪心、嘔吐等の副作用に十分注意すること。さらに、本剤は血中濃度が徐々に上昇するため、少なくとも投与開始後数日間は、傾眠の発現に注意するとともに、患者の状態、特に意識状態及び呼吸状態について観察を十分に行い、過量投与とならないよう慎重に使用すること。
8.5 他のオピオイド鎮痛剤から本剤に切り替えた場合には、患者によっては、悪心、嘔吐、下痢、不安、悪寒等の退薬症候があらわれることがあるので、患者の状態を観察しながら必要に応じ適切な処置を行うこと。[11.1.3参照]
8.6 本剤を増量する場合には、副作用に十分注意すること。特に本剤貼付前にオピオイド鎮痛剤を使用していない場合、呼吸抑制等の副作用に十分注意すること。
8.7 連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、慎重に使用すること。また、乱用や誤用により過量投与や死亡に至る可能性があるので、これらを防止するため観察を十分行うこと。[9.1.6、11.1.3参照]
8.8 連用中における投与量の急激な減量は、退薬症候があらわれることがあるので行わないこと。[11.1.3参照]
8.9 重篤な副作用が発現した患者については、本剤剥離後のフェンタニルの血中動態を考慮し、本剤剥離から24時間後まで観察を継続すること。
8.10 本剤貼付中に発熱又は激しい運動により体温が上昇した場合、本剤貼付部位の温度が上昇しフェンタニル吸収量が増加するため、過量投与になり、死に至るおそれがあるので、患者の状態に注意すること。また、本剤貼付後、貼付部位が電気パッド、電気毛布、加温ウォーターベッド、赤外線灯、集中的な日光浴、サウナ、湯たんぽ等の熱源に接しないようにすること。本剤を貼付中に入浴する場合は、熱い温度での入浴は避けさせるようにすること。[1.、9.1.5参照]
8.11 眠気、めまいが起こることがあるので、本剤使用中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
8.12 鎮痛剤による治療は原因療法ではなく、対症療法であることに留意すること。

14.適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 本剤貼付前のオピオイド鎮痛剤の治療の有無を確認した上で本剤を交付すること。
14.1.2 包装袋を開封せず交付すること。
14.1.3 本剤の使用開始にあたっては、患者及び保護者等に対して具体的な使用方法、使用時の注意点、保管方法等を患者及び保護者等向けの説明書を用いるなどの方法によって指導すること。[8.2、14.1.6、14.1.7、14.2.1-14.2.10、14.3.1-14.3.3参照]
14.1.4 患者及び保護者等に対して、本剤を指示された目的以外に使用してはならないことを指導すること。
14.1.5 患者及び保護者等に対して、本剤を他人へ譲渡してはならないことを指導すること。
14.1.6 小児による誤用を避けるため、薬剤の保管に十分注意すること。[8.2、14.1.3参照]
14.1.7 高温にならない所に保管すること。[8.2、14.1.3参照]
14.2 薬剤貼付時の注意
14.2.1 体毛のない部位に貼付することが望ましいが、体毛のある部位に貼付する場合は、創傷しないようにハサミを用いて除毛すること。本剤の吸収に影響を及ぼすため、カミソリや除毛剤等は使用しないこと。[8.2、14.1.3参照]
14.2.2 貼付部位の皮膚を拭い、清潔にしてから本剤を貼付すること。清潔にする場合には、本剤の吸収に影響を及ぼすため、石鹸、アルコール、ローション等は使用しないこと。また、貼付部位の水分は十分に取り除くこと。[8.2、14.1.3参照]
14.2.3 皮膚刺激を避けるため、毎回貼付部位を変えることが望ましい。[8.2、14.1.3参照]
14.2.4 活動性皮膚疾患、創傷面等がみられる部位及び放射線照射部位は避けて貼付すること。[8.2、14.1.3参照]
14.2.5 本剤を使用するまでは包装袋を開封せず、開封後は速やかに貼付すること。[8.2、14.1.3参照]
14.2.6 包装袋は手で破り開封し、本剤を取り出すこと。手で破ることが困難な場合は、ハサミ等で包装袋の端に切り込みを入れ、そこから手で破り本剤を取り出すこと。[8.2、14.1.3参照]
14.2.7 本剤をハサミ等で切って使用しないこと。[8.2、14.1.3参照]
14.2.8 本剤を使用する際には、ライナーを剥がして使用すること。[8.2、14.1.3参照]
14.2.9 本剤は1日毎に貼り替えるため、貼付開始時刻の設定にあたっては入浴等の時間を考慮することが望ましい。[8.2、14.1.3参照]
14.2.10 本剤を剥がす可能性がある患者には、手の届かない部位に貼付することが望ましい。[8.2、14.1.3参照]
14.3 薬剤貼付期間中の注意
14.3.1 本剤が他者に付着しないよう注意すること。本剤の他者への付着に気付いたときは、直ちに剥離し、付着部位を水で洗い流し、異常が認められた場合には受診すること。海外において、オピオイド貼付剤を使用している患者と他者(特に小児)が同じ寝具で就寝するなど身体が接触した際に、誤って他者に付着し有害事象が発現したとの報告がある。[8.2、14.1.3参照]
14.3.2 本剤が皮膚から一部剥離した場合は、再度手で押しつけて剥離部を固定するが、粘着力が弱くなった場合はばんそう膏等で縁を押さえること。完全に剥離した場合は、直ちに同用量の新たな本剤に貼り替えて、剥がれた製剤の貼り替え予定であった時間まで貼付すること。なお、貼り替え後血清中フェンタニル濃度が一過性に上昇する可能性があるので注意すること。[8.2、14.1.3参照]
14.3.3 使用済み製剤は粘着面を内側にして貼り合わせた後、安全に処分すること。未使用製剤は病院又は薬局に返却すること。[8.2、14.1.3参照]

7.用法及び用量に関連する注意

7.1 初回貼付用量
7.1.1 他のオピオイド鎮痛剤から本剤に切り替える場合
<がん疼痛>
成人の場合、初回貼付用量として、本剤8mgは推奨されない(初回貼付用量として6mgを超える使用経験は少ない)。
6歳以上の小児の場合、初回貼付用量として8mgは推奨されず、4mg又は6mgとする場合には、患者の状態を観察しながら、慎重に投与すること(6歳以上の小児に対する初回貼付用量として、臨床試験では2mgを超える用量の使用経験がない)。2歳以上6歳未満の小児の場合、初回貼付用量は換算表を目安に選択するが、2mgを超える用量は推奨されず、患者の状態等に応じて換算表よりも低い用量への切り替えも考慮すること(2歳以上6歳未満の小児では、成人に比べ血中フェンタニル濃度の上昇及び傾眠の発現割合の増加が認められており、また初回貼付用量として、臨床試験では2mgを超える用量の使用経験がない)。[9.7.1、16.6.1参照]
初回貼付用量を選択する換算表は、経口モルヒネ量60mg/日(坐剤の場合30mg/日、注射の場合20mg/日)、経口オキシコドン量40mg/日、フェンタニル経皮吸収型製剤(3日貼付型製剤)4.2mg(25μg/hr;フェンタニル0.6mg/日)に対して本剤2mgへ切り替えるものとして設定している。
なお、初回貼付用量は換算表に基づく適切な用量を選択し、過量投与にならないよう注意すること。
<がん疼痛>
換算表
(オピオイド鎮痛剤から本剤へ切り替える際の推奨貼付用量)
本剤1日貼付用量0.5mg1mg2mg4mg6mg
定常状態における推定平均吸収量(フェンタニルとして)注)0.15mg/日0.3mg/日0.6mg/日1.2mg/日1.8mg/日
本剤使用前の鎮痛剤モルヒネ経口剤(mg/日)≦1516~2930~8990~149150~209
坐剤(mg/日)≦1020~4050~7080~100
注射剤/静脈内投与(mg/日)≦56~910~2930~4950~69
オキシコドン経口剤(mg/日)≦1011~1920~5960~99100~139
フェンタニル経皮吸収型製剤
(3日貼付型製剤;貼付用量mg)
2.14.28.412.6
注)本剤8mgは、初回貼付用量としては推奨されないが、定常状態における推定平均吸収量は、フェンタニルとして2.4mg/日に相当する。
<慢性疼痛>
初回貼付用量として、本剤8mgは推奨されない(初回貼付用量として6mgを超える使用経験は少ない)。初回貼付用量を選択する換算表は、経口モルヒネ量60mg/日(坐剤の場合30mg/日、注射の場合20mg/日)、フェンタニル経皮吸収型製剤(3日貼付型製剤)4.2mg(25μg/hr;フェンタニル0.6mg/日)、経口コデイン量180mg/日以上に対して本剤2mgへ切り替えるものとして設定している。
なお、初回貼付用量は換算表に基づく適切な用量を選択し、過量投与にならないよう注意すること。
<慢性疼痛>
換算表
(オピオイド鎮痛剤から本剤へ切り替える際の推奨貼付用量)
本剤1日貼付用量0.5mg1mg2mg4mg6mg
定常状態における推定平均吸収量(フェンタニルとして)注)0.15mg/日0.3mg/日0.6mg/日1.2mg/日1.8mg/日
本剤使用前の鎮痛剤モルヒネ経口剤(mg/日)≦1516~2930~8990~149150~209
フェンタニル経皮吸収型製剤
(3日貼付型製剤;貼付用量mg)
2.14.28.412.6
コデイン経口剤(mg/日)≦9091~179180~
注)本剤8mgは、初回貼付用量としては推奨されないが、定常状態における推定平均吸収量は、フェンタニルとして2.4mg/日に相当する。
7.2 初回貼付時
7.2.1 他のオピオイド鎮痛剤から本剤に切り替える場合(がん疼痛、慢性疼痛)
本剤初回貼付後少なくとも2日間は増量を行わないこと。他のオピオイド鎮痛剤から本剤に初めて切り替えた場合、フェンタニルの血中濃度が徐々に上昇するため、鎮痛効果が得られるまで時間を要する。そのため、下記の「使用方法例」を参考に、切り替え前に使用していたオピオイド鎮痛剤の投与を行うことが望ましい。[16.1.1-16.1.3参照]
使用方法例
使用していたオピオイド鎮痛剤a)の投与回数オピオイド鎮痛剤の使用方法例
1日1回投与12時間後に本剤の貼付を開始する。
1日2~3回本剤の貼付開始と同時に1回量を投与する。
1日4~6回本剤の貼付開始と同時及び4~6時間後に1回量を投与する。
持続投与本剤の貼付開始後6時間まで継続して持続投与する。
a)経皮吸収型製剤を除く
患者により上記表の「使用方法例」では、十分な鎮痛効果が得られない場合がある。患者の状態を観察し、本剤の鎮痛効果が得られるまで、適時オピオイド鎮痛剤の追加投与(レスキュー)により鎮痛をはかること。1回の追加投与量として、本剤の切り替え前に使用していたオピオイド鎮痛剤が経口剤又は坐剤の場合は1日投与量の1/6量を、注射剤の場合は1/12量を目安として投与すること。この場合、速効性のオピオイド鎮痛剤を使用することが望ましい。
7.2.2 本剤貼付前にオピオイド鎮痛剤を使用していない場合(がん疼痛)
本剤初回貼付後少なくとも2日間は増量を行わないこと。フェンタニルの血中濃度が徐々に上昇するため、鎮痛効果が得られるまで時間を要する。患者の状態を観察し、本剤の鎮痛効果が得られるまで、適時オピオイド鎮痛剤の追加投与(レスキュー)により鎮痛をはかること。1回の追加投与量として、経口剤の場合は1日投与量の1/6量を、注射剤の場合は1/12量を目安として投与すること。この場合、速効性のオピオイド鎮痛剤を使用することが望ましい。なお、本剤0.5mgは経口モルヒネ量15mg/日(注射剤の場合5mg/日)、経口オキシコドン量10mg/日に相当する。
7.3 用量調整と維持
7.3.1 疼痛増強時における処置
本剤貼付中に痛みが増強した場合や疼痛が管理されている患者で突出痛(一時的にあらわれる強い痛み)が発現した場合には、直ちにオピオイド鎮痛剤の追加投与(レスキュー)により鎮痛をはかること。
(1)他のオピオイド鎮痛剤から本剤に切り替える場合(がん疼痛、慢性疼痛)
1回の追加投与量として、本剤の切り替え前に使用していたオピオイド鎮痛剤が経口剤又は坐剤の場合は1日投与量の1/6量を、注射剤の場合は1/12量を目安として投与すること。この場合、速効性のオピオイド鎮痛剤を使用することが望ましい。
(2)本剤貼付前にオピオイド鎮痛剤を使用していない場合(がん疼痛)
1回の追加投与量として、経口剤の場合は1日投与量の1/6量を、注射剤の場合は1/12量を目安として投与すること。この場合、速効性のオピオイド鎮痛剤を使用することが望ましい。なお、本剤0.5mgは経口モルヒネ量15mg/日(注射剤の場合5mg/日)、経口オキシコドン量10mg/日に相当する。
7.3.2 増量
本剤初回貼付後及び増量後少なくとも2日間は増量を行わないこと。連日の増量を行うことによって呼吸抑制が発現することがある。
鎮痛効果が得られるまで患者毎に用量調整を行うこと。鎮痛効果が十分得られない場合は、追加投与(レスキュー)された鎮痛剤の1日投与量及び疼痛程度を考慮し、下記のとおり増量する。なお、本剤の1回の貼付用量が24mg(7.2mg/日)を超える場合は、他の方法を考慮すること。
(1)他のオピオイド鎮痛剤から切り替える場合(がん疼痛、慢性疼痛)
本剤を0.5mg(0.15mg/日)、1mg(0.3mg/日)、1.5mg(0.45mg/日)又は2mg(0.6mg/日)ずつ増量する。ただし、0.5mgから増量する場合は1mg、1mgから増量する場合は1.5mg又は2mg、1.5mgから増量する場合は2mg、2.5mg又は3mgに増量する。
(2)本剤貼付前にオピオイド鎮痛剤を使用していない場合(がん疼痛)
本剤初回貼付後、少なくとも至適用量を決定するまでは、0.5mgから1mgへ増量する場合を除き貼付用量の50%を超える増量は行わないこと。以降は、「(1)他のオピオイド鎮痛剤から切り替える場合」に従って増量してもよい。
7.3.3 減量
連用中における急激な減量は、退薬症候があらわれることがあるので行わないこと。副作用等により減量する場合は、十分に観察を行いながら慎重に減量すること。
7.3.4 慢性疼痛患者における使用の継続
本剤貼付開始後4週間を経過してもなお期待する効果が得られない場合は、他の適切な治療への変更を検討すること。また、定期的に症状及び効果を確認し、使用の継続の必要性について検討すること。
7.4 使用の中止
7.4.1 本剤の使用を必要としなくなった場合には、退薬症候の発現を防ぐために徐々に減量すること。
7.4.2 本剤の使用を中止し、他のオピオイド鎮痛剤に変更する場合は、本剤剥離後の血中フェンタニル濃度が50%に減少するのに17時間以上(16.75~45.07時間)かかることから、他のオピオイド鎮痛剤の投与は低用量から開始し、患者の状態を観察しながら適切な鎮痛効果が得られるまで漸増すること。

5.効能又は効果に関連する注意

<効能共通>
5.1 本剤はオピオイド鎮痛剤の継続的な投与を必要とするがん疼痛及び慢性疼痛の管理にのみ使用すること。
5.2 本剤を他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する場合は、他のオピオイド鎮痛剤が一定期間投与され、忍容性が確認された患者に本剤を使用すること。
<がん疼痛>
5.3 成人の場合、本剤貼付前にオピオイド鎮痛剤を使用していないがん疼痛患者に対しては、経口オピオイド鎮痛剤に比べ本剤による治療が有益であると考えられる場合(経口投与が困難な患者、経口剤による副作用発現のおそれがある患者、多剤併用等により貼付剤の投与が望まれる患者など)にのみ使用すること。本剤は経口オピオイド鎮痛剤に比べ有効成分の血中濃度が徐々に上昇するため、至適用量を決定するまでに時間を要する可能性がある。[16.1.1-16.1.3参照]
<慢性疼痛>
5.4 慢性疼痛の原因となる器質的病変、心理的・社会的要因、依存リスクを含めた包括的な診断を行い、本剤の使用の適否を慎重に判断すること。

16.薬物動態

16.1 血中濃度
<がん疼痛>
16.1.1 単回投与
成人がん疼痛患者に本剤(2及び4mg)を24時間単回貼付したときのAUC0-24、AUC0-∞及びCmaxの平均値はほぼ貼付用量に比例して増加した。tmax及び製剤剥離後のt1/2は貼付用量間で著明な差はなかった。[5.3、7.2.1参照]
貼付用量tmax(hr)Cmax(pg/mL)AUC0-∞(pg・hr/mL)AUC0-24(pg・hr/mL)本剤剥離後のt1/2(hr)
2mg(n=6)20.1±6.1349±9615614±59594763±110027.09±14.14
4mg(n=7)20.6±5.9724±55331126±159179316±9856a)37.76±46.60
平均値±標準偏差a)n=8
血清中フェンタニル濃度(平均値+標準偏差)推移
<がん疼痛>
16.1.2 反復投与
成人がん疼痛患者に本剤(2及び4mg)を10回反復貼付(1回24時間)したとき、AUC216-240の平均値はほぼ貼付用量に比例して増加した。製剤剥離後のt1/2は貼付用量間で著明な差はなかった。[5.3、7.2.1参照]
貼付用量AUC216-240(pg・hr/mL)本剤剥離後のt1/2(hr)
2mg(n=7)19961±922231.31±9.78
4mg(n=5)34102±1440925.73±7.00
平均値±標準偏差
血清中フェンタニル濃度(平均値+標準偏差)推移
16.1.3 用量と血清中濃度との関係
<がん疼痛>
本剤を3日間以上同一用量(1~10mg)で貼付した成人がん疼痛患者において、最終貼付剥離前の血清中フェンタニル濃度は貼付用量に比例して増加することが示唆された(パワーモデル:log(y)=2.46+1.03・log(x))。[5.3、7.2.1参照]
本剤貼付用量と血清中フェンタニル濃度
<慢性疼痛>
成人慢性疼痛患者において、定常状態の血清中フェンタニル濃度は貼付用量(1~18mg)に比例して増加することが示唆された(パワーモデル:log(y)=2.62+1.08・log(x))。[7.2.1参照]
本剤貼付用量と血清中フェンタニル濃度
16.3 分布
16.3.1 組織への分布
14C]フェンタニルクエン酸塩を含むテープ剤をラット背部皮膚に単回経皮投与したとき、放射能は全身に広く分布し、放射能濃度は投与部位皮膚が最も高く、小腸、大腸、膀胱、肝臓、ハーダー氏腺、胃、腎臓、顎下腺で高濃度であった。
16.3.2 胎児移行性
妊娠ラットに[3H]フェンタニルを単回皮下投与したとき、胎児内放射能濃度は、母動物の血液中放射能濃度の約1.5~2.0倍高く推移したことが報告されている。[9.5参照]
16.3.3 乳汁移行性
分娩時にフェンタニルクエン酸塩を静脈内投与したとき、フェンタニルの乳汁移行が確認されたことが報告されている(外国人のデータ)。[9.6参照]
16.3.4 血漿蛋白結合率
ヒト血漿蛋白結合率は89.1%(in vitro、5ng/mL)であった。
16.4 代謝
フェンタニルは肝臓で主に代謝され、その主代謝物はピペリジン環の酸化的N-脱アルキル化により生じるノルフェンタニルである。ヒト肝ミクロゾームを用いた検討により、ノルフェンタニルへの代謝にはCYP3A4が関与していることが報告されている(ラット、in vitro)。[10.参照]
16.5 排泄
成人がん疼痛患者に本剤(2及び4mg)を10回反復貼付(1回24時間)したとき、貼付開始後216~240時間(10回目貼付時)の尿中にはフェンタニルが24.88及び60.61μg、ノルフェンタニルは292.36及び550.78μg排泄された〔排泄量(平均値)はいずれもフェンタニルクエン酸塩の換算量として算出〕。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 小児
小児がん疼痛患者に本剤(0.5~2mg)を同一用量で3回以上貼付したときの3回目以降の剥離直前の血清中フェンタニル濃度(用量0.5mgに基準化、平均値±標準偏差)は、年齢区分が2~5歳において302.6±307.4pg/mL(3例)、6~14歳において202.7±93.7pg/mL(5例)、15~19歳において122.4±203.6pg/mL(2例)であった。成人がん疼痛患者に本剤(1~8mg)を同一用量で3回貼付したときの最終剥離直前、及び4回以上貼付したときの貼付開始96時間後以降の剥離直前の血清中フェンタニル濃度(用量0.5mgに基準化、平均値±標準偏差:185.5±129.9pg/mL、176例)と比較して、年齢区分が6歳以上の小児では成人と同程度であったが、年齢区分が2~5歳の小児では約1.6倍高値を示した。[7.1.1参照]

併用禁忌 

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
ナルメフェン塩酸塩水和物
(セリンクロ錠)[2.2参照]
本剤の退薬症候を起こすおそれがある。また、ナルメフェン塩酸塩水和物により本剤の鎮痛作用を減弱させるため、効果を得るために必要な用量が通常用量より多くなるおそれがある。ナルメフェン塩酸塩水和物のμオピオイド受容体拮抗作用により、本剤に対して競合的に阻害する。

併用注意 

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
中枢神経抑制剤
フェノチアジン系薬剤
ベンゾジアゼピン系薬剤
バルビツール酸系薬剤等
吸入麻酔剤
モノアミン酸化酵素阻害剤
三環系抗うつ剤
骨格筋弛緩剤
鎮静性抗ヒスタミン剤
アルコール
オピオイド系薬剤
呼吸抑制、低血圧、めまい、口渇及び顕著な鎮静又は昏睡が起こることがあるので、減量するなど慎重に使用すること。相加的に中枢神経抑制作用が増強する。
セロトニン作用薬
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)
モノアミン酸化酵素阻害剤等
セロトニン症候群(不安、焦燥、興奮、錯乱、発熱、発汗、頻脈、振戦、ミオクローヌス等)があらわれるおそれがある。相加的にセロトニン作用が増強するおそれがある。
CYP3A4阻害作用を有する薬剤
リトナビル
イトラコナゾール
フルコナゾール
ボリコナゾール
アミオダロン
クラリスロマイシン
ジルチアゼム
フルボキサミン等
フェンタニルのAUCの増加、血中半減期の延長が認められたとの報告がある。呼吸抑制等の副作用が発現するおそれがあるので、観察を十分に行い、慎重に使用すること。肝CYP3A4に対する阻害作用により、本剤の代謝が阻害される。
CYP3A4誘導作用を有する薬剤
リファンピシン
カルバマゼピン
フェノバルビタール
フェニトイン等
本剤の血中濃度が低下し、治療効果が減弱するおそれがある。必要に応じて本剤の用量調整を行うこと。CYP3A4誘導作用を有する薬剤の中止後、本剤の血中濃度が上昇し、重篤な呼吸抑制等の副作用が発現するおそれがあるので、観察を十分に行い、慎重に使用すること。肝CYP3A4に対する誘導作用により、本剤の代謝が促進される。

重大な副作用 

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には使用を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 呼吸抑制(0.5%注)
無呼吸、呼吸困難、呼吸異常、呼吸緩慢、不規則な呼吸、換気低下等があらわれた場合には、使用を中止するなど適切な処置を行うこと。なお、本剤による呼吸抑制には、麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)が有効である。[8.3、9.1.1、9.1.4参照]
11.1.2 意識障害(0.2%注)
意識レベルの低下、意識消失等の意識障害があらわれることがある。
11.1.3 依存性(頻度不明)
連用中に投与量の急激な減量ないし中止により退薬症候があらわれることがある。また、乱用や誤用により過量投与や死亡に至る可能性があるので、これらを防止するため観察を十分行うこと。[8.5、8.7、8.8、9.1.6、9.5参照]
11.1.4 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
11.1.5 痙攣(頻度不明)
間代性、大発作型等の痙攣があらわれることがある。
注)発現頻度はがん疼痛の試験成績に基づく。

その他の副作用 

<がん疼痛>

5%以上1~5%未満1%未満頻度不明
精神神経系傾眠めまい、頭痛、不眠、譫妄幻覚、気分変動健忘、不安、易刺激性、振戦、不快気分、感覚鈍麻、アカシジア、失見当識、構語障害、悪夢
循環器上室性期外収縮血圧上昇、動悸、心房細動、徐脈
皮膚貼付部位のそう痒感そう痒、貼付部位の紅斑発疹紅斑、貼付部位の皮膚炎、湿疹、じん麻疹、貼付部位の湿疹
呼吸器咽頭痛、呼吸困難過換気、口腔咽頭不快感
消化器悪心、嘔吐、便秘下痢、食欲不振胃部不快感、腹部膨満感、胃炎、腹痛、味覚異常腹部不快感、消化不良、口内炎、憩室炎
肝臓ALT、AST、γ-GTP、AL-Pの上昇ビリルビン上昇
腎臓尿蛋白排尿困難、BUN上昇クレアチニン上昇
血液好中球増加、単球増加、白血球数増加リンパ球減少、白血球数減少、血小板数増加、好酸球増加
その他倦怠感、発熱発汗、しゃっくり、血中カリウム減少口渇、薬剤離脱症候群、異常感、末梢性浮腫、血中カリウム増加、鼻咽頭炎、悪寒、胸部不快感、高血圧、筋痙縮、耳鳴、挫傷

<慢性疼痛>

5%以上1~5%未満1%未満頻度不明
精神神経系傾眠(23.9%)、めまい頭痛、不眠、不安、易刺激性、振戦不快気分、感覚鈍麻、アカシジア、失見当識、構語障害、悪夢譫妄、幻覚、気分変動、健忘
循環器血圧上昇、動悸、心房細動、上室性期外収縮、徐脈
皮膚貼付部位のそう痒感そう痒、貼付部位の紅斑、貼付部位の皮膚炎発疹、湿疹、じん麻疹、貼付部位の湿疹紅斑
呼吸器呼吸困難、過換気、口腔咽頭不快感咽頭痛
消化器悪心(21.7%)、嘔吐、便秘、食欲不振腹部不快感、下痢消化不良、口内炎、腹痛、憩室炎胃部不快感、腹部膨満感、胃炎、味覚異常
肝臓AL-P上昇γ-GTP増加ALT、AST、ビリルビンの上昇
腎臓BUN上昇、クレアチニン上昇排尿困難尿蛋白
血液リンパ球減少、白血球数増加、白血球数減少、好酸球増加、好中球増加、単球増加血小板数増加
その他薬剤離脱症候群倦怠感、異常感、口渇、発汗、末梢性浮腫、血中カリウム増加、鼻咽頭炎血中カリウム減少、悪寒、発熱、胸部不快感、高血圧、筋痙縮、耳鳴、挫傷しゃっくり
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