今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 沖山奈緒子 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科皮膚科学

監修: 戸倉新樹 掛川市・袋井市病院企業団立 中東遠総合医療センター 参与/浜松医科大学 名誉教授

著者校正/監修レビュー済:2022/11/24
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 治療薬選択肢にシクロスポリン内服を追加した。
  1. 金属アレルギーが診断された症例では、歯科金属除去と非金属材料使用が保険適用となったことを周知する。

概要・推奨   

  1. 扁平苔癬の診断には、皮膚生検で病理学的に苔癬型反応を示すことを確認することが推奨される。
  1. 薬剤アレルギー、金属アレルギー、C型肝炎ウイルス感染を精査することが推奨される。
  1. 治療はステロイド外用を中心として行うことが推奨される。

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 扁平苔癬は苔癬型皮疹をもたらす皮膚病変の原型で、皮膚と粘膜に病変を生じる。
  1. 扁平苔癬は成人の0.22~1%に発症するといわれている[1]
  1. 扁平苔癬の好発年齢は30~60歳で、性差はみられない。
  1. 典型的な皮疹は紅色~紫紅色を呈する円形~多角形の扁平隆起性の角化性紅斑で、表面に鱗屑を有し(図<図表>)、ときに水疱・びらんを呈し、瘙痒を伴う。
  1. 好発部位は、手背~前腕、下腿~足背などの皮膚と、口腔粘膜である。爪甲や陰部・食道粘膜に発症することもある。(図<図表>
 
手背の扁平苔癬

病 歴:3年前から手背に瘙痒性皮疹が出現。
診 察:小豆大前後の紅褐色の扁平丘疹がみられた。
診断のためのテストとその結果: 採血検査でCBC、一般生化学は正常範囲内であった。C型肝炎ウイルス感染なし。臨床所見、皮膚生検所見より診断。薬剤の内服歴なく、原因不明。
治 療:ステロイド外用を行った。
転 帰:色素沈着を残して略治した。

出典

狩野葉子先生ご提供
 
  1. 口腔扁平苔癬は頰粘膜に生じる白色の網目状の粘膜疹である。
 
頰粘膜の扁平苔癬

病歴:60歳代、女性。数年前から両側頰粘膜と下口唇粘膜にびらんが出現し受診した。
診察:頰粘膜部に、わずかに隆起し、一部網目状でびらんを伴う白色粘膜疹がある。病変は歯科金属あり。
診断:皮膚生検を施行し、苔癬型組織反応を確認した。歯科金属のパッチテストは陰性であった。
治療:タクロリムス軟膏を外用し、軽快。

出典

著者提供
 
  1. 発症要因として、薬剤アレルギー(図<図表>)、歯科金属アレルギー、C型肝炎ウイルスをはじめとしたウイルス感染、自己免疫疾患、移植片対宿主病(GVHD)の部分症(図<図表>)などがある[2]
  1. 原因を特定できないことも多い。(図<図表>
  1. 扁平苔癬の発症に発汗低下に起因した皮膚の乾燥が関与している可能性がある[3][4][5]
  1. 多くの鑑別すべき疾患があり、確定診断は皮膚生検を施行して病理組織所見を確認して行う。(図<図表>,図<図表>
問診・診察のポイント  
  1. 長い経過で病変が発現してくる。

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文献 

Shiohara T, Kano Y: Lichen planus and lichenoiddermatoses. In: Dermatology 2nd edn. Bolognia JL, Jorizzo JL, Rapini RP (Eds.). London:Mosby, 2008;175-198.
林伸和:扁平苔癬.玉置邦彦編.角化異常性疾患 最新皮膚科学大系 第7巻.中山書店,2002;243-250.
早川和人: 汗から探る皮膚病 汗は善玉か、悪玉か? 汗と関連がある意外な皮膚病 扁平苔癬. Visual Dermatology 2008;7: 992-993.
堀江千穂, 水川良子, 早川順, 塩原哲夫: 乾燥が増悪因子と考えられた扁平苔癬の1例. 臨皮 2009; 63(7): 473-476.
堀江千穂, 水川良子, 塩原哲夫: 苔癬型組織反応における汗腺,汗管の病理組織学的検討. 日皮会誌 2011: 121: 1869-1874.
堀川達弥,于希軍: 扁平苔癬. JOHNS 2007; 23:532-534.
早川和人: 口腔粘膜疾患と金属. 皮膚アレルギーフロンティア 2005; 3(3):147-151.
Laurence Le Cleach, Olivier Chosidow
Clinical practice. Lichen planus.
N Engl J Med. 2012 Feb 23;366(8):723-32. doi: 10.1056/NEJMcp1103641.
Abstract/Text
PMID 22356325
D Ioannides, E Vakirlis, L Kemeny, B Marinovic, C Massone, R Murphy, A Nast, J Ronnevig, T Ruzicka, S M Cooper, R M Trüeb, R M Pujol Vallverdú, R Wolf, M Neumann
European S1 guidelines on the management of lichen planus: a cooperation of the European Dermatology Forum with the European Academy of Dermatology and Venereology.
J Eur Acad Dermatol Venereol. 2020 Jul;34(7):1403-1414. doi: 10.1111/jdv.16464.
Abstract/Text Lichen planus (LP) is a chronic inflammatory and immune-mediated disease that affects the skin, hair, nails and mucous membranes. Although there is a broad clinical spectrum of lichen planus manifestations, the skin and oral cavity remain the major sites of involvement. A group of European dermatologists with a long-standing interest and expertise in lichen planus has sought to define therapeutic guidelines for the management of patients with LP. The clinical features, diagnosis and possible medications that clinicians can use, in order to control the disease, will be reviewed in this manuscript. The revised final version of the lichen planus guideline was passed on to the European Dermatology Forum (EDF) for a final consensus with the European Academy of Dermatology and Venereology (EADV).

© 2020 European Academy of Dermatology and Venereology.
PMID 32678513
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
沖山奈緒子 : 講演料(日本イーライリリー(株),サノフィ(株),マルホ(株),大塚製薬(株)),研究費・助成金など(第一三共(株),花王(株),MBL社,マルホ(株),高木皮膚科学振興財団,アッヴィ合同会社,内藤記念科学振興財団)[2025年]
監修:戸倉新樹 : 講演料(サノフィ(株),日本イーライリリー(株),アッヴィ合同会社,マルホ(株))[2025年]

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