今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 金子忠良 嬉泉病院

監修: 近津大地 東京医科大学

著者校正済:2025/05/14
現在監修レビュー中
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、以下について加筆・修正した。
  1. 口腔白板症の癌化率は0.1~36.4%である(Evren I, et al. Oral Dis. 2023 Mar;29(2):696-706.)。
  1. 病理組織検査による軽度および中等度の口腔上皮異形成症での癌化率(malignant transformation:MT rate)は1桁であるが、重度口腔上皮異形成症では2桁のMT率との報告がある(Bernard C, et al. Head Neck. 2023 Dec;45(12):3096-3106.)。
  1. 組織試験採取(生検)の切開法による病変の一部採取ではサンプリングエラ―による過少診断の可能性があるため、生検部位の選択が極めて重要である(Gates JC, et al. Head Neck. 2025 Feb;47(2):733-741.)。
  1. 白板症、紅板症や初期癌などの表在性疾患は、CTやMRIなどの画像検査では撮影スライス厚により病変の探知が難しく、超音波検査(エコー検査)が有用なことが多い。

概要・推奨   

  1. 白板症では、まずは詳細な問診をとる(推奨度1)
  1. 白板症の発症誘因となるような物理的慢性刺激などを確認し、その因子を除去する(推奨度1)
  1. 白板症での検査としては、最初に擦過細胞診を施行する。通常は次に生検を施行して病理組織学的診断に基づいて治療方針を決定する(推奨度1)

病態・疫学・診察 

疾患(疫学・病態)  
  1. 白板症は口腔粘膜でみられる白色病変の総称である。
  1. 白板症の発生は口腔粘膜のいずれの部位でもみられるが、舌、頬粘膜、歯肉に好発する[1]
  1. 白板症の発生頻度は男性が女性の2倍で、年齢は50~70歳代に好発する[1]
  1. 白板症の有病率は1~4%とされている[2]
  1. 白板症の原因または誘因は、喫煙や口腔内における物理的な慢性刺激である場合が多い[3]
  1. 白板症は、「臨床的あるいは病理学的に他のいかなる疾患の特徴も有さない口腔粘膜の白色の板状もしくは斑状の病変であり、しかも病理組織学的に上皮異形成の有無に関係なく用いる臨床的な病名である」と定義される。臨床的には、均一型(homogeneous type)は平坦、波状、ヒダ状、敷石状などさまざまなタイプがある。不均一型(non-homogeneous type)は結節状、疣贅状または斑状などのタイプに分類される[2][4][5]
  1. 「臨床的にも組織学的にも他の疾患に分類されない紅斑または紅板」と定義される紅板症は舌、歯肉、軟口蓋、口底、頬粘膜などが好発部位であり、白板症と共存してみられることも多い。
  1. 2017年のWHO頭頸部腫瘍分類で、口腔潜在的悪性疾患として「臨床的に定義可能な前駆病変か正常な口腔粘膜かにかかわらず、口腔癌へ進展する危険性を有する臨床症状」との新たな臨床的疾患概念が提唱され、白板症を含めた12疾患が包含された。従来の前癌病変と前癌状態が包括されている[2]
  1. 口腔潜在的悪性疾患の発症原因はさまざまであるが、特に喫煙や飲酒などとの関連が挙げられている[2]
 
  1. 症例:右上顎歯肉~口蓋部白板症
  1. 主訴:右上顎臼歯部歯肉の白斑
  1. 病歴:右上顎臼歯部の抜歯後、抜歯窩周囲に白斑が出現。
  1. 診察:右上顎第二大臼歯抜歯窩周囲における白板症
  1. 診断のためのテストとその結果:白板症部から生検を施行した結果、病理組織検査結果は上皮過形成症であった。
  1. 治療:炭酸ガスレーザーによる蒸散治療を施行した。
  1. 転帰:改善した。
 
右上顎歯肉~口蓋部白板症の所見

ミラー使用。

出典

著者提供
 
  1. 症例:右舌白板症
  1. 主訴:右舌縁の違和感
  1. 病歴:初診の1年前から舌白斑に気づくも、自覚症状がないため放置していた。2カ月ほど前に、う蝕治療のため近歯科を受診した際に、同白斑を指摘され、精査のため紹介により来院した。
  1. 診察:右舌縁に白斑があり、病変は30×20 mm、境界明瞭で隆起性であった。
  1. 診断のためのテストとその結果:擦過細胞診検査でClass II、生検の病理組織学的診断は過角化症であった。
  1. 治療:全身麻酔下に外科的切除を施行し、創部にポリグリコール酸シートをフィブリン糊で被覆した。
  1. 病理所見:錯角化層が著しく肥厚した重層扁平上皮で、上皮下組織の血管は充血と拡張を呈していた。
  1. 病理組織診断:過角化症
  1. 転帰:術後の経過は良好である。
 
右舌白板症

左:口腔内写真
右:病理写真

出典

著者提供
問診・診察のポイント  
問診:
  1. 誘因である喫煙歴や飲酒歴について聴取する。う歯、歯の鋭縁または歯列不整などの患部に対する口腔内の物理的な慢性刺激の有無を評価する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
金子忠良 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:近津大地 : 特に申告事項無し[2025年]

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