今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 須並英二 杏林大学医学部 消化器・一般外科

監修: 杉原健一 東京医科歯科大学大学院

著者校正/監修レビュー済:2022/10/26
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 小腸癌に関する疫学を追加した。
  1. NETの分類を更新した。
  1. NETの治療法を更新した。

概要・推奨   

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 小腸腫瘍の頻度は全消化管腫瘍のおよそ3~6%、全消化管悪性腫瘍のおよそ1~3%にすぎず、人口あたりの統計でも10万人あたり1人以下の発生率であり、非常にまれな疾患である。
  1. 小腸には40種類以上の腫瘍性病変が発生し得るが、およそ2/3は悪性とされている。
  1. 小腸悪性腫瘍としては、腺癌、悪性リンパ腫、平滑筋肉腫(GIST)、神経内分泌腫瘍などが認められるが、わが国では欧米に比較し神経内分泌腫瘍の占める割合は低い。
  1. カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡の登場により、小腸腫瘍の診断は急速に進歩したが、小腸腫瘍は腫瘍が増大し症状が現れてから診断されることが依然として多い。
  1. 米国の統計では小腸悪性腫瘍の新規発生数は2012年までは増加傾向であったが2013年以降は横ばいとなっている[1]
 
10万人あたりの新規症例・死亡率

出典

[https://seer.cancer.gov/statfacts/html/smint.html SEER Cancer Stat Facts: Small Intestine Cancer. National Cancer Institute. Bethesda, MD.]
 
  1. 治療は小腸癌、小腸神経内分泌腫瘍、GISTは原則として手術が第1選択であるが、悪性リンパ腫に対しては手術は限局性のものに限られる。
 
  1. 小腸腫瘍の疫学
  1. 小腸腫瘍が疑われる際には、その頻度に関する知識も重要である。小腸悪性腫瘍の疫学的報告は日本と欧米では若干の相違があり、さらに今後、小腸ダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡の進歩・普及により、その頻度に関する報告は変化する可能性がある。
  1. わが国の集計では、1990年代に小腸悪性腫瘍481例に関する検討で、小腸腺癌32.6%、悪性リンパ腫30.4%、GIST29.1%、カルチノイド(神経内分泌腫瘍)1.7%という報告がなされている[2]が、ダブルバルーン内視鏡導入後の統計では、小腸腫瘍全体144症例に関する検討で、悪性リンパ腫22%、GIST19%、小腸癌10%カルチノイド(神経内分泌腫瘍)3%と報告されている[3]
  1. 一方海外では、米国での67,843症例の検討で、カルチノイド(神経内分泌腫瘍)38%、癌37%、悪性リンパ腫17%、GIST8%と報告されており、わが国では欧米に比較し、神経内分泌腫瘍の頻度が低い傾向が認められる[4]
 
  1. 小腸腺癌の疫学
  1. 小腸癌は近年の報告では全小腸腫瘍の約10%を占めるとされる。発生部位としては、空腸53%、回腸46%とやや空腸に多く、空腸ではトライツ靱帯から50cm以内の近位空腸に76%が発生し、回腸ではBauhin弁から50cm以内の回腸末端に76%が発生していた[5]
  1. 症状としては、腹痛が48%、次いで嘔気・嘔吐などの腸閉塞関連が28%、貧血10%、下血・黒色便5%、便潜血陽性5%など消化管出血関連がそれらに次いで認められている[5]
  1. 術前に診断のついた症例は約4割と報告され、早期癌の占める割合は11%と未だに多くはない[5]
 
  1. 小腸神経内分泌腫瘍の疫学
  1. 消化管神経内分泌腫瘍のなかで小腸神経内分泌腫瘍の占める割合は、欧米では25~45%であるが、わが国では約4%程度と比較的まれであり、わが国の特殊性が示されている[6]。部位的には、回腸および回腸終末部に約90%が発生していた[7]
  1. 神経内分泌腫瘍で産生されるセロトニンなどの物質により、皮膚紅潮や喘息様発作などが引き起こされることをカルチノイド症候群といい、神経内分泌腫瘍の特徴的症状の1つである。小腸神経内分泌腫瘍では約10%に認められる[8]
  1. 小腸神経内分泌腫瘍のリンパ節転移頻度は高く、海外のデータでは直径1cm以下のものでも40%強に転移を認め、1~2cmになると80%を超えるという報告もある[9]。本邦のデータでは直径5mm以下のものでも17.2%、1cm以下のもので30.2%に、1~2cmになると34.2%、2cmをこえると53.3%に転移を認めたという報告もある。5年生存率は50~60%(進行度によって変わる;局所のみ75%、リンパ節転移あり60%、肝転移あり20~35%程度)との報告がある[9]
問診・診察のポイント  
  1. 小腸腫瘍は他疾患の精査中に偶然指摘される場合もあるが、何らかの症状を呈することが契機となり診断されることが多い。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
須並英二 : 未申告[2024年]
監修:杉原健一 : 特に申告事項無し[2025年]

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小腸腫瘍

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