今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 佐々木健 鹿児島大学大学院 消化器・乳腺甲状腺外科学

監修: 杉原健一 東京医科歯科大学大学院

著者校正/監修レビュー済:2025/02/26
参考ガイドライン:
  1. 日本消化器病学会:胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2015 第2版
  1. 米国消化器内視鏡外科学会(SAGES):Guidlines for Surgical treatment of Gastroesophageal Reflux Disease (GERD), 2010
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)。

概要・推奨   

  1. 嘔吐、腹痛、腹部膨満、便秘などを主訴に受診した場合には、腸閉塞の診断を行い、その原因として、内ヘルニアを念頭に置いておく必要がある。内ヘルニアによる絞扼性腸閉塞は重篤化するため、早期診断が重要である。早期診断には造影CTが有用であるため、行うことが勧められる(推奨度1 O)
  1. 内ヘルニア・横隔膜ヘルニアと診断がつき次第、手術適応である。緊急的に行うか、待機的に行うかについては、造影CTで腸閉塞の状態を把握する必要がある。陥入した腸管を整復し、ヘルニア門を閉鎖もしくは開放する手術を行う(推奨度2 C)
  1. 食道裂孔ヘルニアのある場合には胃食道逆流症(GERD)の合併率が高い。胃液の逆流による逆流症状を認め、治療はまず胃酸分泌抑制としてPPIによる治療を行う。内服治療だけでなく、食事指導、生活指導も重要である(推奨度1 M)
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 内ヘルニアとは、腹腔内の異常に大きな陥没部、嚢状部、裂孔に腸管など腹腔内臓器が陥入した状態である[1]
  1. 腸間膜や大網にできた異常裂孔へ陥入する異常裂孔ヘルニアと腹膜窩を通じて後腹膜へ入り込んだり、窩や嚢状部へ陥入する腹膜窩ヘルニアに大きく分類される。
  1. 内ヘルニアの分類として傍十二指腸窩(53%)、盲腸窩(13%)、Winslow孔(8%)、腸間膜裂孔(8%)、S状結腸間膜窩(6%)、後吻合部(5%)などがある[2][3]
 
内ヘルニアの発生部位

A:傍十二指腸 B:Winslow孔 C:S状結腸間 D:盲腸周囲 E:小腸腸間膜 F:後方吻合部

 
  1. 腸閉塞症状を契機に指摘される比較的まれな疾患であり、機械性腸閉塞全体の0.5~5.8%である[2]
  1. 腸閉塞の術前に内ヘルニアと診断される頻度は4.1~9.3%である。
  1. 診断には、理学的所見のほかに腹部単純X線写真、超音波、CTを用いるが、内ヘルニアの明確な診断基準はなく、発見動機となる腸閉塞の診断がもとになる。
  1. 診断がつき次第、手術を行う必要があるが、絞扼性腸閉塞では、緊急手術を行う必要がある。腸管壊死となり、敗血症など重篤な状態となれば、死に至ることもあり、早期診断により手術適応を見誤らないことが重要である[2][4]
  1. 横隔膜ヘルニアは、横隔膜の欠損部位から腹腔内臓器が胸腔内へ脱出する内ヘルニアである[5]
  1. 脱出する部位により胸腹裂孔(Bochdalek)ヘルニア・傍胸骨裂孔(Morgagni)ヘルニア・食道裂孔ヘルニアに大きく分類される。
 
横隔膜ヘルニアの部位

先天性横隔膜ヘルニア:横隔膜でヘルニアの様相を呈している部分を下部からみたところ。
1. 前側よりみた傍胸骨のMorgagni孔
2. 食道裂孔
3. 後側よりみた胸腹のBochdalek 孔
矢印はヘルニアの方向を示す。

出典

Mark Feldman, Lawrence S. Friedman, and Lawrence J. Brandt:Sleisenger and Fordtran's Gastrointestinal and Liver Disease , Ninth Edition.Chapter 24 Abdominal Hernias and Gastric Volvulus, 379-395.e4,Figure 24-2. Saunders,2010
 
  1. 横隔膜ヘルニアのなかでも、食道裂孔ヘルニアが頻度として圧倒的に多く、Bochdalekヘルニア、Morgagniヘルニアは先天性疾患として知られ、Bochdalekヘルニアが多い。
  1. 食道裂孔ヘルニアは、滑脱型、傍食道型、混合型に分けられ、滑脱型の頻度がほとんどで、胃食道逆流症(GERD)と密接に関連しており、逆流による症状などから食道胃造影検査や上部消化管内視鏡検査で判明する。<図表>
  1. 食道裂孔ヘルニアの治療は、合併するGERDの治療が目的であり、GERDの治療ガイドラインに沿って、まず内服治療からはじめ、薬物治療に抵抗性の場合や、患者が希望する場合には手術を行う[6]
  1. Bochdalekヘルニアは、約10%が成人になるまで無症状・軽症で経過することがあり、内ヘルニアと同様に腸閉塞症状で指摘され、診断には腹部単純X線写真、超音波、CTを行う。
  1. Bochdalekヘルニア、Morgagniヘルニアの治療は、脱出臓器の還納とヘルニア門の閉鎖が基本である。
問診・診察のポイント  
  1. 臨床症状を確認する。特に腸閉塞症状の有無、消化器症状の有無を確認する。

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
佐々木健 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:杉原健一 : 特に申告事項無し[2025年]

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