良性発作性頭位めまい症

著者: 肥塚泉 聖マリアンナ医科大学病院 耳鼻咽喉科

監修: 森山寛 東京慈恵会医科大学附属病院

著者校正/監修レビュー済:2018/09/20

概要・推奨  

疾患のポイント:
  1. 良性発作性頭位めまい症(BPPV)とは、特定の頭位で誘発される主に回転性のめまいを主徴とする疾患である。めまい疾患のなかで最も頻度が高い疾患(めまい疾患の4割近く)である。
  1. BPPVは、半規管結石症とクプラ結石症に分類される。半規管結石症は、三半規管に卵形嚢由来の小耳石片が迷入し、これが体位変換により管腔内を移動することによってリンパ流動が生じ、めまいと眼振が生じる。一方、クプラ結石症は、クプラに卵形嚢由来の小耳石片が付着し、体位変換に伴う重力方向の変化に対してクプラが偏倚するようになってめまいと眼振が生じる。
 
診断: >詳細情報 
  1. 問診と頭位変換・頭位眼振検査で診断に至ることが多い。
  1. 頭位変換眼振検査:
  1. 回旋成分の強い眼振・めまいが誘発されれば陽性である(後半規管・前半規管型良性発作性頭位めまい症)。通常、Dix-Hallpike法で首を曲げた方向が患側である。
  1. 頭位変換眼振検査:<図表>
  1. 頭位変換眼振検査(Dix-Hallpike法):<動画>
  1. 頭位眼振検査:
  1. 方向交代性の水平眼振・めまいが誘発されれば陽性である(外側半規管型良性発作性頭位めまい症)。
  1. 頭位眼振検査:<図表>
 
鑑別疾患:
  1. 前庭神経炎、頸性めまい、中枢性めまい(下記の図)に示す部位に病変が生じると上眼瞼向き眼振が出現する。中枢性めまいでは、後半規管型良性発作性頭位めまい症の上眼瞼向き眼振に比し、回旋成分が少ないか、これがないことが特徴である。
  1. めまい疾患の診断法(簡易):アルゴリズム
  1. 頭位眼振検査所見(頸性めまい症例):
検査・処方例
※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

初診時検査、保存的治療
診断:
  1. 頭位・頭位変換眼振検査を行う。
  1. 頭位変換眼振検査で、回旋成分を有す上眼瞼向き眼振が解発されれば後半規管型良性発作性頭位めまい症の診断となる。通常、Dix-Hallpike法でめまいが誘発されたときに首を曲げている方向が患側である。
  1. 頭位眼振検査で、方向交代性下行性(向地性)水平性眼振が解発されれば、外側半規管型良性発作性頭位めまい症(半規管結石症)、方向交代性上行性(反地性)水平性眼振が解発されれば外側半規管型良性発作性頭位めまい症(クプラ結石症)。
 
急性期治療:
  1. めまい急性期は下記の薬剤を適宜用いて悪心・嘔吐など、前庭自律神経反射による症状に対する対症療法を優先する。急性期の治療:心身の安静や鎮暈薬・制吐薬などの薬物による対症療法が主体となる。めまい急性期は内服が困難なことが多い。また速効性を要求される場合が多く、注射薬が用いられることが多い。
  1. めまいに伴う悪心・嘔吐の抑制には、抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)と制吐薬が有効である。
  1. めまいそのものに対しては、メリスロン、7%炭酸水素ナトリウムの加療を行なう。
  1. 用いられる薬剤:
  1. 7%炭酸水素ナトリウム(メイロン)
  1. 抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)
  1. 抗めまい薬
  1. 抗不安薬
  1. 制吐薬
 
急性期後の治療:
  1. 急性期を脱したら浮遊耳石置換法を行う。
  1. 急性期を脱したら浮遊耳石置換法(Epley法、Semont法、Lempert法)
  1. 後半規管型良性発作性頭位めまい症には、Epley法、Semont法を用いる(どちらでもよい)。
  1. 外側半規管型良性発作性頭位めまい症にはLempert 法を用いる。
  1. 前半規管型良性発作性頭位めまい症には、逆Epley法、逆Semont法を施行する(まれ)
  1. Epley法(右後半規管型良性発作性頭位めまい症の加療例):<図表>
  1. (右向きのDix-Hallpike法でめまいが誘発された場合は、右後ろに首を曲げた姿勢から治療を開始すると覚えるとよい。)
  1. Epley法動画(左後半規管型良性発作性頭位めまい症の治療動画):<動画>
  1. Semont法(右後半規管型良性発作性頭位めまい症の加療例): <図表>
  1. Lempert法(右外側半規管型良性発作性頭位めまい症の加療例):<図表>
 
○ 以下を急性期治療として、適宜併用する。通常強いめまい発作には2)5)12)を点滴・筋注で併用する。不安が強い場合は8)を考慮する。その後、3)-4)、6)-7)からそれぞれ一つずつ選択して用いる。嘔気が強い場合は、9)-11)から1剤選択して用いる。

薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)

改訂のポイント:
  1. めまいの診断基準化のための資料 診断基準2017年改定
を基づき、改訂を行った。


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