聴神経腫瘍 :トップ    
監修: 森山寛 東京慈恵会医科大学附属病院
井上泰宏 耳鼻咽喉科いのうえクリニック院長

概要

疾患のポイント:
  1. 聴神経腫瘍は内耳道から小脳橋角部に発症する良性腫瘍であるが、まれに悪性のものもある。ほとんどが前庭神経のSchwann細胞を母地として発生するので、正確には前庭神経鞘腫(vestibular schwannoma)と呼称されるべき腫瘍ではあるが、臨床的には聴神経腫瘍という病名が一般に広く用いられている。
  1. 特に若年者の場合には、神経線維腫症2型である可能性を考慮する必要がある。
  1. 耳鳴・難聴を主訴に受診する症例が50~60%であり、めまいやふらつきを主訴とする症例(15~20%)より多い。
 
診断: >詳細情報 
  1. 頭部MRI:腫瘍の存在、性状を診断するには必須の検査である。腫瘍の大きさ、内耳道底の腫瘍の進展の有無、脳への圧迫の有無を確認する。
  1. 頭部CT:腫瘍が大きい場合には、脳の変形などで腫瘍の存在がわかる場合もあるが、腫瘍が小さい場合には造影剤を用いたCTでも腫瘍が描出できないことが少なくないので注意を要する。
 
ステージング合併症の確認: >詳細情報 
  1. 脳神経外科では、腫瘍の大きさについてはKoos分類が広く用いられてきた(<図表>)。一方、MRIにおける腫瘍の最大径や腫瘍の容積を測定して評価をすることも多くなっている。
  1. 聴力の分類にはさまざまなものが提案されてきたが、脳外科ではGardner & Robertson分類が多く用いられており、耳鼻科領域ではAAO-HNS分類が用いられることが多い。
 
予後: >詳細情報 
  1. 腫瘍発見後の聴力変化については、いくつかの報告があるが、一般に5年間の経過観察中で約50%の症例に有意な聴力低下が認められるものと考えられている。したがって、有効聴力(平均聴力レベル50dB以下、語音弁別能50%以上)を持つ症例の場合には、聴力保存手術を試みるという選択肢がある
  1. 腫瘍の増大についてはさまざまな報告があるが、通常1年間に平均1~2mmの腫瘍径の増大を生じると考えられている。
  1. 多くの場合、手術によって既に低下した聴覚、平衡覚が改善する…

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

診断のための検査例
  1. 聴神経腫瘍の診断においては、徐々に進行する感音難聴、めまい、耳鳴りなどの症状によってその存在を疑うことが重要である。しかしながら、明らかな症状を示さないまま腫瘍が増大する場合もあることから、最近では脳ドックなどで無症状のままに診断されることが増えている。その意味では、確定診断のゴールデンスタンダードはMRIということになる。
  1. 腫瘍が発見された場合には、腫瘍の大きさと聴力、めまいの有無が治療方針を決める主な要素となる。
  1. 腫瘍が生命を脅かすほど大きな場合には、早急な手術が必要となるが、そうでない場合は良性腫瘍であることを考慮し、治療後になるべく生活に支障を生じない方法を選択する。したがって、方針を決める際にも、まずはMRIによる腫瘍の大きさの評価が重要である。
  1. 次に日常生活で聴力に不自由がない場合には、聴力が維持できる可能性の高い治療法を選択する。したがって、純音聴力検査および語音聴力検査による聴力の評価が必要になる。
  1. 聴神経腫瘍は前庭神経を起源とする腫瘍なので、徐々に平衡機能は悪化する。通常は代償(前庭代償)が生じるため、すべての症例がめまいを訴えるわけではないが、なかにはめまい発作を繰り返す症例もある。このような症例では、手術などによって早期に前庭機能を廃絶させたほうが日常生活の質が改善することがあるため、平衡機能の評価も治療方針の決定に必要である。
  1. 内耳道内には顔面神経走行しているが、腫瘍そのものによる顔面神経麻痺の発症頻度は数%であり、一方、手術後顔面神経麻痺発症する確率は、それを上回るとする報告が多い。したがって、術前に顔面神経機能をきちんと評価しておく必要あると考える。
  1. T2(CISS等のHeavy T2の条件であれば内耳道内の腫瘍の位置などについてなど、なお情報が多い)で腫瘍の存在は確認できる場合が多く、必ずしも造影は必要ない。
○ 以下を必須の検査として行う。

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診療の流れ
突発性難聴で発症した左聴神経腫瘍症例のオージオグラム
右下位脳神経腫瘍
腫瘍の大きさの分類(Koos分類)
cystic changeをした左聴神経腫瘍
著者校正/監修レビュー済
2016/08/19