Brugada(ブルガダ)症候群 :トップ    
監修: 今井靖 自治医科大学 薬理学講座臨床薬理学部門・内科学講座循環器内科学部門
清水 渉 日本医科大学大学院医学研究科 循環器内科学分野

概要

疾患のポイント:
  1. Brugada症候群とは、12誘導心電図のV1またはV2(V3)誘導における特徴的なST上昇と心室細動(VF)を主徴とする、明らかな器質的心疾患を認めない症候群である。心臓突然死の原因として知られており、日本人の中高年男性が夜間に突然死する「ポックリ病」の少なくとも一部は、Brugada症候群に起因すると考えられている。
  1. Brugada症候群(特発性心室細動):<図表>
  1. 男性で頻度が高く(欧米8:1、日本10:1)、VFの初回発作の平均年齢は40~50歳で、日本を含めたアジア地域で頻度が高い。
  1. 日本人におけるBrugada型心電図(coved型またはsaddle back型)の頻度は、一般健常人の0.05~0.1%とされている。
 
診断: >詳細情報 
  1. 診断確定には、Na+チャネル遮断薬の投与の有無にかかわらず、12誘導心電図のV1またはV2誘導の1誘導でJ点またはST部分が基線から0.2mV以上上昇するType 1のcoved型ST上昇を認めることが必須条件である。高位肋間記録(V1、V2が第3または2肋間)のみでType 1 ST上昇を認める場合も、Brugada型心電図と考える。
 
予後: >詳細情報 
  1. 欧州4カ国の11施設において、Type 1心電図を認めるBrugada症候群患者1,029例の予後を検討した研究では、年間心事故発生率は、VF・心肺停止既往例で7.7%、失神例で1.9%、無症候例で0.5%であり、VF・心肺停止既往が最も強力な予後予測因子であった。 エビデンス 
 
治療: >詳細情報 
  1. 日本循環器学会のガイドラインに準じて、非薬物治療(ICD植込み術)を考慮する。 エビデンス 
  1. VF・心肺停止既往のある患者は再発率が高く、クラスI(絶対適応)の植込み型除細動器(ICD)適応となる。
  1. 失神既往例、男性、自然発生Type 1心電図(薬物負荷でなくType 1心電図を認める)例では、VF発生のリスクが高く予後不良である。
  1. Type 1 Brugada心電図を認め、本人に失神、または突然死の家族歴がある患者は、入院のうえ電気生理学的検査(EPS)によるVF誘発試験を行い、VFが誘発されればクラスIIaのICD適応となる。
  1. Brugada症候群におけるICDの植込みの適応:アルゴリズム
 
専門医への紹介: >詳細情報 
  1. Brugada心電図のTypeによらず、VF・心肺停止既往のある患者、本人に失神または突然死の家族歴を認める患者は専門医に紹介する。
 
臨床のポイント:
  1. V1、V2誘導にてST上昇を伴い、心室細動を呈する、明らかな器質的心疾患を伴わない症候群である。
  1. VF・心肺停止既往のある患者、またType1心電図でかつ本人に失神または突然死の家族歴を認める患者はICDを考慮する。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

Na+チャネル遮断薬(サンリズム)負荷試験の薬剤例
  1. 高位肋間心電図を記録してもType 2またはType 3 Brugada心電図しか認めない場合に、診断目的でNa+チャネル遮断薬負荷試験を行う。
  1. Type1 Brugada心電図をすでに認める患者では不要である。
  1. 伝導障害のある患者では禁忌である。
  1. 負荷中Type 1心電図を認めた時点で中止する。
  1. 負荷中QRS幅が135msを超えたら中止する。
  1. VFが誘発される場合もまれにあり、DC、救急セットを用意して行う。
○ 高位肋間心電図を記録してもType 2またはType 3 Brugada心電図しか認めない場合に、上記の方針に沿って、Na+チャネル遮断薬負荷試験を行う。
1)
サンリズム注射液[50mg] 1 mg/kgを10分かけて静注  エビデンス  [ブルガダ症候群は適用外/他適用用量内/㊜頻脈性不整脈](編集部注:想定する適用病名「ブルガダ症候群」/2015年11月)
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薬理情報 抗不整脈薬 >Naチャネル遮断薬(Ⅰc群抗不整脈薬)
同効薬一覧
要注意情報
腎注 肝注 不明 不明 児量無

Brugada症候群の急性期治療例(VF発作時またはelectrical storm時)
  1. Brugada症候群の診断が確定している患者で、VFを頻回に繰り返す場合、electrical storm時(24時間以内に3回以上のVF)には、l-イソプレナリン(プロタノール)の持続点滴(0.002~0.006 µg/kg/分、または心拍数を20%増加)が第1選択薬である。 エビデンス 
  1. プロタノールの持続点滴でVFが抑制された場合には、キニジン(硫酸キニジン)、シロスタゾール(プレタール)、デノパミン(カルグート)、ベプリジル(ベプリコール)などの内服薬を開始しl-イソプレナリン(プロタノール)を減量・中止する。
○ VFを頻回に繰り返す場合、electrical storm時(24時間以内に3回以上のVF)には、下記の薬剤を用いることを考慮する。
1)
プロタノールL注[0.2mg] 0.002~0.006µg/kg/分、または心拍数が20%増加するまで持続点滴<図表>  エビデンス  [ブルガダ症候群は適用外/他適用別単位/㊜徐脈、ストークス・アダムス症候群](編集部注:想定する適用病名「ブルガダ症候群」/2015年11月)
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薬理情報 昇圧・心不全・冠動脈・末梢血管疾患薬 >カテコラミン
同効薬一覧
要注意情報
腎可 肝可 妊C 不明 児量[有]

Brugada症候群の慢性期薬物治療例(VFの予防)
  1. Electrical storm既往患者、一定の頻度でVFを再発する患者では、VF予防目的で慢性期内服治療を行う。
  1. 慢性期内服治療薬として最もエビデンスがあるのはキニジン(硫酸キニジン)である。 エビデンス 
  1. その他のエビデンスがある内服薬としては、シロスタゾール(プレタール)、デノパミン(カルグート)、ベプリジル(ベプリコール)などがある。
○ Electrical storm既往患者、一定の頻度でVFを再発する患者では、下記の薬剤から1剤選択して用いることを考慮する。
1)
キニジン硫酸塩錠100mg「ファイザー」[100mg] 2~6錠 分2~3 朝夕食後または毎食後 次回外来まで  エビデンス  エビデンス  [ブルガダ症候群は適用外/他適用用量内/㊜心室頻拍](編集部注:想定する適用病名「ブルガダ症候群」/2015年11月)
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薬理情報 抗不整脈薬 >Naチャネル遮断薬(Ⅰa群抗不整脈薬)
同効薬一覧
要注意情報
腎注 肝注 妊C 不明 児量無
2)
プレタールOD錠[100mg] 2錠 分2 朝夕食後 次回外来まで  エビデンス  [ブルガダ症候群は適用外/他適用用量内/㊜閉塞性動脈硬化症]
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薬理情報 凝固・抗血栓薬 >抗血小板薬(ホスホジエステラーゼ阻害薬)
同効薬一覧
要注意情報
3)
カルグート錠[5mg] 3~6錠 分3 毎食後 次回外来まで  エビデンス  [ブルガダ症候群は適用外/他適用用量内/㊜慢性心不全]
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薬理情報 昇圧・心不全・冠動脈・末梢血管疾患薬 >カテコラミン
同効薬一覧
要注意情報
腎可 肝可 不明 不明 児量無
4)
ベプリコール錠[50mg] 2~3錠 分2~3 朝夕食後または毎食後 次回外来まで  エビデンス  [ブルガダ症候群は適用外/他適用用量内/㊜頻脈性不整脈]
薬剤情報を見る
薬理情報 降圧薬 >Ca拮抗薬(非ジヒドロピリジン系)
同効薬一覧
要注意情報

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)

Brugada症候群におけるICDの植込みの適応
Brugada症候群(特発性心室細動)
Brugada症候群の原因遺伝子とイオンチャネル機能
Brugada型心電図(V1-V6誘導心電図)
Brugada症候群の薬物療法
著者校正/監修レビュー済
2017/07/31


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