今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 小林 賢 日本薬科大学

監修: 中原 保裕 (有)ファーマシューティカルケア研究所

著者校正/監修レビュー済:2024/10/16
参考ガイドライン:
  1. 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、下記の点を加筆・修正した。
  1. 前回改訂から新しいガイドラインは発表されていないが、新薬の上市などがあった。各薬剤の添付文書に沿って加筆・修正した。

概要・推奨   

  1. パーキンソン病は、中脳の黒質緻密部にあるドパミン産生神経細胞が減少することで発症する。進行すると、黒質以外の部分にも影響が広がる。
  1. パーキンソン病の治療は、主に症状を緩和する対症療法が中心である。ドパミン補充療法(レボドパなど)が基本であり、病気の進行を遅らせ、生活の質(QOL)を向上させることを目的としている。また、リハビリテーションや生活習慣の改善も重要である。外科的治療方法として、脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)があり、特定の症状に対して有効である。
  1. パーキンソン病の治療に使用されている薬剤としては、以下の9種類がある。
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総論 

パーキンソン病の病態  
概要
  1. パーキンソン病は、中脳の黒質緻密部にあるドパミン産生神経細胞が減少することで発症する。この神経細胞の減少によって、黒質から線条体(尾状核と被殻)へのドパミン供給が減少し、運動の調整が困難になる。ドパミンの減少は、アセチルコリン作動性神経とGABA作動性神経のバランスを崩し、運動に関連する問題を引き起こす。また、黒質 − 線条体ループの機能低下が原因で、運動の開始や調整が困難になる。
  1. パーキンソン病の症状には、運動症状と非運動症状がみられる。
  1. パーキンソン病の運動症状には、3大症状といわれる(1)無動、(2)振戦、(3)筋強剛がみられる。このほかに、(4)姿勢保持障害、(5)前傾姿勢、(6)すくみ現象がみられることがある。
  1. パーキンソン病の非運動症状には、睡眠障害、幻覚、妄想、せん妄などの精神症状、衝動制御障害、起立性低血圧、排尿障害、便秘などがみられる。
 
病気の進行とその他の影響
  1. 病気が進行すると、黒質以外の部分にも影響が広がる。例えば、青斑核(ノルアドレナリン分泌部位)、縫線核(セロトニン産生部位)、マイネルト基底核(アセチルコリン分泌部位)も影響を受け、これらの神経伝達物質が減少する。これらの変化によって、多様な非運動症状(例えば、うつ病や自律神経の問題など)があらわれる。
 
病理学的特徴
  1. パーキンソン病患者の脳では、黒質と青斑核の色素である神経メラニンが減少していることが確認される。顕微鏡でみると、黒質や青斑核、迷走神経背側運動核、視床下部、交感神経節などの神経細胞が減少している。また、神経細胞内にはレビー小体と呼ばれる円形をした異常な蛋白質の塊がみられる。レビー小体は、主に異常なリン酸化α–シヌクレインと呼ばれる蛋白質が蓄積したものである。
 
発症年齢と頻度
  1. パーキンソン病は、通常50歳以上の中高年で発症しやすく、年齢が上がると有病率も高くなる。
  1. 発症年齢の中央値は60歳前後とされている。
  1. パーキンソン病の有病率は、0.1~0.3%と推定されている。また、65歳以上では約1%と推定されている。
 
病因
  1. パーキンソン病の正確な原因はまだ完全にはわかっていないが、以下の要因が関与していると考えられている。
  1. 便秘、気分障害、殺虫剤への曝露、頭部外傷の既往、β遮断薬の使用、農村生活、農業従事、井戸水の飲用は、発症リスクを高めることが示されている。
  1. 一方、喫煙歴、コーヒー摂取、高血圧症、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用、Ca拮抗薬の使用、アルコール摂取は、発症リスクを低下させる因子として示されている。
 
治療
  1. パーキンソン病の治療は、主に症状を緩和する対症療法が中心である。ドパミン補充療法(レボドパなど)が基本であり、病気の進行を遅らせ、生活の質(QOL)を向上させることを目的としている。また、リハビリテーションや生活習慣の改善も重要である。
  1. 外科的治療方法として、脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)があり、特定の症状に対して有効である。
  1. パーキンソン病の治療に使用されている薬剤としては、以下の9種類がある。
  1. ドパミン系薬剤(ドパミン補充薬):レボドパ(略語:L–ドパ)製剤、ドパミン作動薬
  1. 非ドパミン系薬剤:モノアミン酸化酵素B(MAO–B)阻害薬、カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害薬、アデノシンA2A受容体拮抗薬、抗コリン薬、ドパミン遊離促進薬、ノルアドレナリン補充薬、レボドパ賦活薬
 
抗パーキンソン病薬の種類とその作用機序・適応

出典

著者提供
 
パーキンソン病治療に使用される薬剤

出典

著者提供

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
監修:中原 保裕 : 特に申告事項無し[2025年]

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抗パーキンソン病薬(薬理)

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