今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 藤本直浩 くらて病院

監修: 中川昌之 公益財団法人 慈愛会 今村総合病院 泌尿器科顧問

著者校正/監修レビュー済:2025/02/26
参考ガイドライン:
  1. 日本感染症学会日本化学療法学会:JAID/JSC感染症治療ガイド2023
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『JAID/JSC感染症治療ガイド2023』の改訂に準じて修正した。
  1. 「急性細菌性前立腺炎(カテゴリーI)に対する治療」の図を修正し、処方例に追記を行った。

概要・推奨   

  1. 急性前立腺炎の場合、尿培養・薬剤感受性試験は必須である。
  1. 原因微生物の60%はE.coliで他のグラム陰性桿菌とグラム陽性球菌がそれぞれ20%であり、empiric therapyとしては前立腺への移行がよいキノロン系薬剤、急性感染時には良好な移行性を示すβ-ラクタム系薬が推奨される。
  1. 青壮年の場合、原因菌は一般細菌だけでなく、淋菌やクラミジアも考慮する。

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 前立腺炎とは、何らかの原因により前立腺に炎症が起こり、会陰部痛や泌尿器症状を来す異なった疾患群である。前立腺炎は50歳以下の男性では最も頻度が高い前立腺疾患であり、50歳以上においても前立腺肥大症、前立腺癌に次いで多くみられる疾患である、NIHにより4つのカテゴリー(I~IV)に分類されている。
  1. カテゴリーIは急性細菌性前立腺炎で、細菌感染(E. coliが約60%)により排尿症状や疼痛、発熱などの身症状を伴うものである。
  1. カテゴリーII、IIIは慢性前立腺炎で骨盤痛症候群とも呼ばれる。カテゴリーIIは慢性細菌性前立腺炎、カテゴリーIIIは慢性非細菌性前立腺炎で、炎症所見を認めるIIIAと認めないIIIBに分類される。
  1. カテゴリーIVは無症状であるが、前立腺圧出液、精液、生検などで炎症所見が認められるものであり、臨床的に問題となることはない。
  1. 原因としてはカテゴリーI、IIは細菌感染(E. coliが約60%)であるが、その他については原因が明らかではなく、感染、排尿障害、ホルモンバランスの不均衡、前立腺内への尿の逆流、アレルギー、精神的因子が考えられる。
  1. カテゴリーIの診断は臨床症状、直腸診、尿および血液検査、細菌培養により比較的容易である。
  1. カテゴリーII、IIIは初期尿(VB1)、中間尿(VB2)、前立腺圧出液(EPS)、前立腺マッサージ後の尿(VB3)の沈渣および細菌培養(4-glass test)により分類するが、中間尿、前立腺マッサージ後の尿のみを用いる2-glass testが簡便であり、臨床的には2-glass testで十分である。
  1. カテゴリーI、IIでは抗菌薬の投与を行う。カテゴリーIIIでは治療法のコンセンサスが得られていないが、排尿症状が主な場合にはα受容体遮断薬、疼痛が強い場合には消炎鎮痛薬(NSAIDs)が有効である傾向にある。
  1. カテゴリーIはまれに重篤になることがある。カテゴリーII~IIIでは改善・増悪を繰り返しながら長期に及ぶことが多いが、重篤になることはない。
問診・診察のポイント  
  1. カテゴリーI(急性細菌性前立腺炎)では排尿痛、頻尿などの尿路症状、会陰部痛や下腹部痛、発熱、悪寒などの全身症状が身体に出現する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
藤本直浩 : 特に申告事項無し[2025年]
監修:中川昌之 : 特に申告事項無し[2025年]

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