今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 戸澤 啓一1) 名古屋市立大学大学院医学研究科 医療安全管理学分野(泌尿器科)

著者: 安井 孝周2) 名古屋市立大学大学院医学研究科 腎・泌尿器科学分野

監修: 中川昌之 公益財団法人 慈愛会 今村総合病院 泌尿器科顧問

著者校正/監修レビュー済:2024/05/29
参考ガイドライン:
  1. 日本尿路結石症学会日本泌尿器科学会日本泌尿器内視鏡学会:尿路結石症診療ガイドライン 第3版(2023年版)
 
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『尿路結石症診療ガイドライン 第3版』の発行に伴うレビューを行った。
  1. 疫学を更新した
  1. 一般的治療法について加筆した

概要・推奨   

  1. 下部尿路結石の多くは膀胱結石であり、その有病率は男性に多く、男女比は10:1から4:1の間で報告されている。結石治療前後に膀胱結石の原因精査を行い、原因疾患の併用療法を検討する。
  1. 膀胱結石に対する一般的な積極的治療法は、経尿道的膀胱砕石術である。後部尿道結石は膀胱内に戻して、膀胱内で砕石する。
  1. 経皮的膀胱砕石術や体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は、わが国では保険適応外であり、注意が必要である。

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 膀胱結石の発生機序は、大きく2つに分けられる。1つは、上部尿路結石が、自然に下降し膀胱内に排石したものが、膀胱内にとどまったもので、もう1つは、前立腺肥大症を代表とする膀胱出口部閉塞(Bladder outlet obstruction:BOO)による二次性のものである。前者はまれで、後者が多く45~79%を占める。
  1. 前者は、すべての年齢層に発症するが、後者は、圧倒的に60歳以上の高齢者に多い。
  1. 上部尿路結石(腎結石、尿管結石)と下部尿路結石(膀胱結石、尿道結石)の比は近年ほぼ一定しており、下部尿路結石は全体の約4~5%を占める。
  1. 膀胱結石症・尿道結石の男女比は約10:1から4:1の間で報告されており、上部尿路結石よりさらに男性に多い。
  1. 結石成分はリン酸マグネシウムアンモニウム(感染性結石)、尿酸(非感染性結石)の頻度が高い。膀胱結石は難治性・再発性尿路感染症の原因となる。
  1. 異物による膀胱結石は、誤って膀胱内に入ってしまった自慰目的のヘアピン、体温計などや膀胱手術の縫合糸、尿道つり上げ術の牽引糸を核として形成される。また、長期の膀胱留置カテーテルも異物として膀胱結石の原因となる。
  1. 基本的には、先進国では、その頻度は低下し続けていたが、わが国では、高齢化と長期臥床の患者の増加によりその頻度は、増加傾向である。
  1. 尿道結石は尿路結石全体の0.3~1%で、男性に非常に多い。また、後部尿道に認めることが多く、後部尿道結石は通常、膀胱内に戻して、膀胱内で砕石する。
  1. 診断は、超音波検査でルールアウトし、膀胱尿道鏡で確定診断する。ただし、超音波検査における膀胱結石の検出感度は20~83%であり、CTより検出感度が劣る。
  1. 膀胱結石に対する一般的な積極的治療法は、経尿道的膀胱砕石術である。経尿道的膀胱砕石術では繰り返す経尿道的操作による尿道損傷や術後の尿道狭窄に注意が必要である。
  1. 大きい結石や小児に対しては、膀胱切石術が治療オプションとなる。
  1. 経皮的膀胱砕石術やESWLは、わが国では保険適応外であり、注意が必要である。
  1. 治療後は、上部尿路結石が下降したものは、上部尿路結石の再発の有無を経過観察すればよい。排尿障害を伴う二次性の膀胱結石は、排尿障害を改善させないとすぐに再発するため、原因となっている疾患の併用治療を検討する。
  1. 尿道結石は、膀胱結石が排尿とともに尿道に陥頓した状態である。
  1. 尿閉を伴っていれば、緊急処置の対象となる。
  1. 緊急処置の方法は、尿道バルンカテーテルで結石を膀胱内に戻し、その後砕石するのが通常である。
問診・診察のポイント  
  1. 膀胱結石の自覚症状は、排尿困難、排尿痛、血尿、頻尿、残尿感がある。まれに結石が膀胱頚部を閉塞し尿閉を生じることもある。尿道結石の自覚症状は、排尿時痛、尿閉、滴下状尿失禁などを来す。後部尿道の結石では会陰や直腸部に、前部尿道の結石では、陰茎、亀頭部に痛みが放散する。また、前部尿道の結石は触診で触れることがある。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
戸澤 啓一 : 特に申告事項無し[2024年]
安井 孝周 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:中川昌之 : 特に申告事項無し[2024年]

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