たこつぼ型心筋症

著者: 渡辺昌文 山形大学医学部 内科学第一講座(循環・呼吸・腎臓内科学)

監修: 伊藤浩 岡山大学循環器内科

著者校正/監修レビュー済:2020/09/24

概要・推奨  

  1. 本症候群では、左心室壁の一部が一過性に無収縮となる。無収縮となる領域は、冠状動脈の支配領域では説明がつかず、80%以上の症例で心尖部を中心とした領域である。
  1. 1990年、佐藤らによって最初に報告され[1][2]、左室造影で、左室心尖部とその周囲が拡張したまま収縮しない様が、蛸壺の形を連想させることから、「たこつぼ心筋障害」または「たこつぼ心筋症」と呼ばれた。
  1. 河合らTakotsubo Cardiomyopathy Study Group(TCSG, 2007)による狭義の「たこつぼ心筋症」の診断基準[3]、より広義のMayo clinic criteria(2008)[4]が代表的な診断基準である。
  1. 現在の日本では、脳神経疾患の併存した場合を除外して、左室壁運動異常の部位に関わらず、「たこつぼ症候群(takotsubo syndrome)」と呼ばれることが多くなっている。
  1. 以上の各名称と概念を整理して、左室壁異常の種類と原因によって、診断の概念を示した(たこつぼ症候群の分類と定義:<図表>[5]。臨床研究では、どの疾患概念を用いているか、解釈に注意が必要なことがある。
  1. 高齢女性に多い、ストレスを契機とするなど特徴的な臨床経過を示すが、その病態は未だ解明されておらず、確立した治療法・ガイドラインは存在しない。
  1. 予後は、必ずしも良好とはいえず、再発も稀ではない。
 
臨床のポイント:
  1. 急性心筋梗塞によく似た病態を示すため、その鑑別診断や治療方法が、救急の現場で問題となることがある。
  1. 心因性・身体性ストレスなどを契機とすることが多いが、確認されない症例もある。
心エコー図検査による特徴的な心室壁運動異常で診断されることが多いが、病状が許せば、虚血性心疾患除外のための冠動脈の評価を行う。
検査・処方例
※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

診断のための検査例
  1. 心電図や心エコー図検査にて、たこつぼ型心筋症に典型的な所見を確認し、心筋逸脱酵素を測定し、診断に役立てると同時に、経過を追う。
  1. 虚血性心疾患を除外する:冠動脈危険因子を検討し、病状が許せば、冠動脈造影検査を行う。
  1. たこつぼ型心筋症の原因やきっかけとなる契機や、病態の存在を検討する。
○ すべての症例で下記の検査を行う。
1)
2)
3)
4)
5)
6)
7)
8)
9)
10)
11)
12)
BNP[CLEIA]
13)
胸部12誘導心電図
14)
X線 胸部 正面
15)
心エコー
16)
冠動脈造影、左心室造影

薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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