今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 大坪天平 東京女子医科大学附属足立医療センター 心療・精神科

監修: 上島国利 昭和大学

著者校正/監修レビュー済:2023/08/02
参考ガイドライン:
  1. Bandelow B, Lichte T, Rudlf S, Wiltink J, Beutel ME: The diagnosis of and treatment recommendations for anxiety disorders. Disch Arzebl Int. 2014 Jul 7;111(27-28):473-80. PMID: 25138725; PMCID: PMC4187407.(S3ガイドライン)
  1. カナダ不安症学会(Anxiety Disorders Association of Canada: ADAC): Canadian clinical practice guidelines for the management of anxiety, posttraumatic stress and obsessive-compulsive disorders. BMC Psychiatry. 2014;14 Suppl 1(Suppl 1):S1. Epub 2014 Jul 2. PMID: 25081580; PMCID: PMC4120194.
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、以下について修正した。
  1. 共存を併存に変更した。
  1. GAD-7について評価方法を追記した。GAD-7はGADのスクリーニング・重症度評価に使用され、日本でも次第に浸透している。21点満点で10点以上で中等度のGAD、15点以上で重度のGADと評価する(村松公美子.新潟青陵大学大学院臨床心理学研究 (7)、2014:35-39.)。
  1. 図表2点(DSM-5とICD-10におけるGADの診断基準の差異、全般性不安障害/全般不安症のプラセボ対照試験の所見に基づく薬物・心理療法)について出典を更新した。

概要・推奨   

  1. 日本人における全般不安症(generalized anxiety disorder:GAD)の有病率は、世界的にみれば低いグループに属するが、患者は十分な治療を受けていない。
  1. プライマリケアにおいて、GADの認識は不足しており、治療も不十分である。その理由としてGAD患者は不安を主訴としてプライマリケア医を受診することは少なく、もっぱら漠然とした身体症状を訴えることにより、プライマリケア医が対応させられるためである。
  1. GAD患者には身体疾患の併存が多い。GADの頻度は偏頭痛、胃腸障害、心疾患、および呼吸器疾患において特に高率である。身体疾患の診断だけに終わらず、隠れているGADを見逃さないことが推奨される(推奨度1)
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病態・疫学・診察 

疾患情報  
  1. 全般性不安障害/全般不安症(generalized anxiety disorder:GAD)の患者は過剰な不安と心配(予期憂慮)がほとんど毎日続くことが特徴である。
 
米国精神医学会の診断マニュアルDSM-5[1]によるGADの特徴
  1. A.(仕事や学業などの)多数の出来事または活動についての過剰な不安と心配(予期憂慮)が、起こる日のほうが起こらない日より多い状態が、少なくとも6カ月間にわたる。
  1. B.その人は、その心配を抑制することが難しいと感じている
  1. C.その不安および心配は、以下の6つの症状のうち3つ(またはそれ以上)を伴っている(過去6カ月間、少なくとも数個の症状が、起こる日のほうが起こらない日より多い)。
注:子どもの場合は1項目だけが必要
  1. (1)落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり
  1. (2)疲労しやすいこと
  1. (3)集中困難、または心が空白になること
  1. (4)易怒性
  1. (5)筋肉の緊張
  1. (6)睡眠障害(入眠または睡眠維持の困難、または、落ちつかず熟眠感のない睡眠)
  1. D.その不安、心配、または身体症状が、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
  1. E.その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症)の生理学的作用によるものではない。
  1. F.その障害は他の精神疾患ではうまく説明されない(例:パニック症におけるパニック発作が起こることの不安または心配、社交不安症[社交恐怖]における否定的評価、強迫症における汚染または、他の強迫観念、分離不安症における愛着の対象からの分離、心的外傷後ストレス障害における身体的訴え、醜形恐怖症における想像上の外見上の欠点の知覚、病気不安症における深刻な病気をもつこと、または、統合失調症または妄想性障害における妄想的信念の内容、に関する不安または心配)
(出典:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院, 2014; 220-221)
 
  1. 地域住民における1年有病率は0.4~3.6%で、生涯有病率は4~9%といわれ、決してまれな病気ではない[1][2]
  1. 身体症状を愁訴にプライマリケア医を受診する患者が多く[3]、時点有病率は8%との報告がある[4]
  1. 臨床場面では女性が男性の約2倍である[1]
 
  1. 現在、全般性不安障害(GAD)/全般不安症の診断基準として米国精神医学会のDSM-IV-TRあるいはDSM-5とWHOのICD-10の2つが主に使用されている。両者を比較すると、ICD-10は世界中で使用することを目的にしており、診断基準は比較的緩い。他方、DSM-IV-TRあるいはDSM-5は、研究指向的であり診断基準は厳密であり、研究成果をふまえ改訂が繰り返されている(G)。
  1. この2つの診断基準の間にはいくつかの違いがある。
  1. ICD-10[5]は身体症状を重視しており、自律神経症状が必ず存在しなくてはならず、加えて胸部・腹部症状、精神症状、全身的症状、運動性緊張、非特異的症状のなかから3つ以上がみられることが求められている。
  1. DSM-5[1]の随伴症状は運動性緊張と警戒心にまとめられており、自律神経症状は必須ではない。
  1. DSM-5では病的憂慮の存在が必須であり、その程度は制御不能と条件付けられている。
  1. 他方、ICD-10では病的憂慮はなくてもよい。
  1. もう1つの大きな差異は、ICD-10ではパニック障害、恐怖症性不安障害、強迫性障害などの不安障害との併存を認めていないが、DSM-5は不安症との併存を認めている点である。
  1. 前者ではGADは残遺的な診断カテゴリーとされているが、後者では独立した診断カテゴリーとして扱われている。
  1. 両者の比較を表に示す[6][7]。ICD-10は身体症状に重点が置かれ、憂慮は重視されていない。<図表>
  1. しかし、憂慮はGADの中核症状であり、DSM-5は中核症状の憂慮から心身の症状が発生していることを的確に診断基準にまとめてある。
  1. 使用状況によって両者を使い分けることが推奨される。
 
DSM-5とICD-10におけるGADの診断基準の差異

ICD-10は世界中で使用することを目的としており、診断基準は比較的緩い。DSM-5は研究志向的であり、基準は厳密である。GADについてICD-10は他の不安症との併存を認めないが、DSM-5は併存を認めている。症状に関して、ICD-10は自律神経症状の存在を、DSM-5は予期憂慮を必須条件としている。

出典

越野好文:全般性不安障害.概念・診断・心理社会的研究.臨床精神医学2006;35(6): 793-799..(改変あり)
 
  1. 日本人におけるGADの有病率は、世界的にみれば低いグループに属するが、患者は十分な治療を受けていない(o)。
  1. 川上[8]は、2002~06年にかけて岡山、鹿児島、長崎、山形、栃木、神奈川の6県で世界精神保健日本調査World Mental Health Japan(WMHJ)を実施した。
    無作為に抽出された20歳以上の地域住民4,134人に対して直接面接を行った。
    いろいろな不安障害の生涯有病率は1%前後、12カ月有病率は0.7~0.9%で、GADの生涯有病率は1.4%、12カ月有病率は0.7%であった。GADを含む何らかの不安障害を経験した人は276人で、そのうち受診・相談歴のあった人は37%であった。
    精神科を受診していた人は30%、心療内科を含めた一般科の受診も18%に過ぎず、日本ではGADに限らず不安障害患者の多くは治療を受けていなかった。
  1. 米国のいくつかの疫学データで生涯有病率は約5%、時点有病率は2~3%と報告されている[9][4][10][11]
  1. ヨーロッパの6カ国のDSM-IVのGAD疫学研究のメタアナリシスでは、生涯有病率0.1%から6.9%とばらつきが大きい[12]
  1. 西ヨーロッパでの21,000人を対象とした最大規模の研究ではDSM-IVのGADの生涯有病率は2.8%であった[13]
  1. 日本でのGADの有病率は世界の国々のなかでは低いほうに属する。
 
  1. プライマリケアにおいて、GADの認識は不足しており、治療も不十分である。その理由としてGAD患者は不安を主訴としてプライマリケア医を受診することは少なく、もっぱら漠然とした身体症状を訴えることにより、プライマリケア医が対応させられるためである(o)。
  1. GADのプライマリケアにおける診療状況がWittchenら[14]によってドイツで調査された。
  1. プライマリケア医558人、患者20,000人以上が参加した。
  1. 各疾患の頻度は、GADが5.3%、大うつ病が6.0%であったが、GADのみは3.8%、大うつ病のみは4.4%で、GAD/大うつ病併存が1.6%であった。
  1. GAD患者の13.3%のみが、不安を主訴としてプライマリケア医を受診していた。GAD患者が頻繁に訴えていたのは身体疾患と身体症状(47.8%)であり、特に痛み(34.7%)、抑うつ感(15.5%)、睡眠障害(32.5%)が多かった。
  1. 医師は、GAD患者の72.5%、大うつ病患者の76.5%、両者の併存患者の85.4%に臨床的な重要な精神的な問題があると認識していた。
  1. しかし、正確に診断されたのはGADで34.4%、大うつ病で64.3%と少なかった。
  1. プライマリケア医がGADと診断した場合、自ら治療するのが60.0%、専門医に紹介するのが13.9%、自ら治療するあるいは紹介するのが19.9%であった。
  1. 薬物が90%以上の患者に処方されていた。
  1. ハーブ系薬物と抗うつ薬が多かった。
  1. なお、GADと診断されなかった例も含めた患者全体の治療は表のごとくであり、抗うつ薬を処方された人は21.0%に過ぎない。
  1. 44.3%で治療的介入がなかった。
 
GAD 患者の治療内容(665人)

ドイツのプライマリケアにおけるGADの治療状況の研究。GAD患者のうち、抗うつ薬療法が21.0%、心理療法が12.3%、そして専門医への紹介が12.5%に行われているのみで、十分な治療的介入を受けていた例は少ない。44.3%は介入が行われていなかった。

出典

Hans-Ulrich Wittchen, Ron C Kessler, Katja Beesdo, Petra Krause, Michael Höfler, Jürgen Hoyer
Generalized anxiety and depression in primary care: prevalence, recognition, and management.
J Clin Psychiatry. 2002;63 Suppl 8:24-34.
Abstract/Text AIMS: Determine attitudes toward patients with generalized anxiety disorder (GAD) and major depressive episodes (MDE) in primary care; determine prevalence of GAD, MDE, and comorbid GAD/MDE among primary care patients; assess physician recognition of GAD and MDE; and describe primary care interventions for these patients.
METHOD: 558 primary care physicians participated in a 1-day survey. Over 20,000 patients completed a diagnostic-screening questionnaire for GAD and MDE. Physician questionnaires included a standardized clinical appraisal of somatic and psychosocial symptoms and information on past and current treatments and a prestudy questionnaire assessing experience with and attitudes toward patients with GAD and MDE.
RESULTS: 56.9% of physicians viewed GAD as a genuine mental disorder with clinical management problems and considerable patient burden; 27.4% treated GAD patients differently from MDE patients. 5.3% of patients met criteria for GAD, 6.0% for MDE, 3.8% for pure GAD, 4.4% for pure MDE, and 1.6% for comorbid GAD/MDE. Pure GAD and MDE were associated with disability, high utilization of health care resources, and suicidality, which were even higher with comorbid GAD/MDE. Physicians recognized clinically significant emotional problems in 72.5% of patients with pure GAD, 76.5% with pure MDE, and 85.4% with comorbid GAD/MDE. However, correct diagnosis was much lower (64.3% for MDE and 34.4% for GAD). Although the majority of patients with recognized GAD or MDE were treated, only a small minority with GAD were prescribed medications or referred to specialists.
CONCLUSION: The high proportion of respondents with pure GAD is inconsistent with previous reports that GAD is usually comorbid with depression. GAD remains poorly recognized and inadequately treated. Improving the recognition and treatment of GAD in primary care patients is discussed relative to new treatments.

PMID 12044105
問診・診察のポイント  
  1. 現在の不安症状を評価すると同時に、過去の類似の症状を確認する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
大坪天平 : 講演料(武田薬品工業(株),Viatris製薬合同会社)[2025年]
監修:上島国利 : 特に申告事項無し[2024年]

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