今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 飛鳥井望 医療法人社団青山会青木病院/公益財団法人東京都医学総合研究所

監修: 上島国利 昭和大学

著者校正/監修レビュー済:2023/06/07
参考ガイドライン:
  1. 国際トラウマティック・ストレス学会公認:PTSD治療ガイドライン 第3版[18]
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. PTSD治療ガイドライン 第3版に基づき、下記について加筆した。
  1. トラウマ焦点化治療の利用ができなかったり適用困難な場合には、現在中心療法(心理教育と合わせて生活上の日々の困難に対処するスキルの向上を図ること)や、認知行動療法的アプローチを加えた心理療法が推奨される。
  1. 海外のガイドラインでは、強い推奨レベルにある心理療法(トラウマ焦点化治療)に比べ、SSRI(選択的セロトニン再取り込阻害薬)は低効果の介入レベルにとどまっている。
  1. PTSDの薬剤療法としてクエチアピンはランダム化比較試験により有効性を示されている。

概要・推奨   

  1. PTSDの有病率は国による違いはあるものの、男性よりも女性の有病率が高い。外傷(トラウマ)的出来事の種類により発症率は異なり、災害や事故に比べ、暴力犯罪やレイプなどの深刻な性被害では発症率が高まる。またPTSDでは、うつ病、不安障害、物質依存などを合併している割合が高い。
  1. トラウマ的出来事の体験者の多くは何らかの程度のストレス反応を生じるが、その多くは自然に回復し、PTSDとなるのは一部である。
  1. PTSDの危険因子となる心理社会的要因は、より大きな生命的危険の認知、社会的サポートの欠如、トラウマ体験時の感情反応(恐怖、孤立無援感、自責など)や解離反応、トラウマ体験後の生活ストレスである。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 心的外傷後ストレス障害(症)(post-traumatic stress disorder、PTSD)および急性ストレス障害(acute stress disorder、ASD)とは、生命や身体に脅威を及ぼし、強い恐怖感や無力感を伴い、精神的衝撃を与える心的外傷(トラウマ)的出来事の後に生じる、特徴的なストレス症状群である。
  1. トラウマ的出来事には、災害、深刻な事故、暴力犯罪や性暴力被害、虐待やドメスティック・バイオレンス、拉致監禁、テロ、戦闘などが挙げられる。
  1. 自分自身が直接の被害者とならなくても、凄惨な光景を目撃したり、あるいは家族・知人が被害を受けたことで強い精神的衝撃を受けることも原因となる。災害救援者の惨事ストレス体験も含まれる。
  1. ただし、失職、失恋、破産などの個人的挫折体験はPTSDの原因とはみなさない。
  1. 米国精神医学会診断基準(DSM-5)では、トラウマ的出来事に曝露後3日以上1カ月以内の症状に対してはASDと診断し、1カ月以上持続する場合にはPTSDと診断する。したがって出来事から1カ月後の時点を境に診断が変更されることになる。
  1. 世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第11版(ICD-11)では、トラウマ的出来事から間もない時期の急性ストレス反応は脅威がなくなれば数日以内に回復する一過性可逆性の反応として精神疾患カテゴリーからは除外された。ICD-11では基準を満たすトラウマ症状が数週間以上持続していれば1か月以内であってもPTSDと診断される。
  1. ICD-11では、虐待やドメスティック・バイオレンス、政治的難民など長期に繰り返され逃れられないトラウマ後に見られやすい症状群として複雑性PTSDの診断を定義づけている。
  1. DSM-5のPTSDは以下の4症状クラスターからなる[1]
  1. 1.侵入症状(フラッシュバックや悪夢など)
  1. 2.回避症状(出来事を想起することの回避、想起刺激となる事物・人物・状況の回避)
  1. 3.認知と気分の陰性の変化(否定的信念や歪んだ認識、興味や関心の低下、陽性感情の消失など)
  1. 4.覚醒度と反応性の著しい変化(怒りの爆発、過度の警戒心、過敏反応、集中困難、睡眠障害など)
  1. PTSDのサブタイプとして解離症状(離人感や現実感喪失)を伴う場合と、子ども(6歳以下)の場合の基準がもうけられている。
  1. ASDは侵入症状、陰性気分、解離症状、回避症状、覚醒症状の5領域14症状のうち9症状以上が存在すれば該当する。
  1. ICD-11のPTSDは以下の3症状クラスターからなる[2]
  1. 1.再体験症状(解離性フラッシュバックや悪夢)
  1. 2.回避症状(出来事を想起することの回避、想起刺激となる事物・人物・状況の回避)
  1. 3.脅威の感覚(過度の警戒心や過剰な驚愕反応)
  1. ICD-11の複雑性PTSDは上記の3症状クラスターに「自己組織化の障害」として以下の3症状クラスターが加わり6症状クラスターからなる[3]
  1. 4.感情制御不全(感情不安定ないしは感情の麻痺や解離)
  1. 5.否定的自己概念(自己の無価値感や敗北感)
  1. 6.対人関係困難(対人関係の忌避、親密感の困難)
 
PTSDは4種類の症状が揃った病態

PTSDの4症状クラスターの内容
参考文献:飛鳥井望.心的外傷後ストレス症.In 講座 精神疾患の臨床3 不安または恐怖関連症群・強迫症・ストレス関連症群・パーソナリティ症(三村将編).中山書店, 2021、pp243-253

出典

著者提供
 
  1. DSM-5もICD-11も症状による顕著な苦痛感ないしは生活上、仕事上の支障を来していることがPTSDの診断要件となる。
  1. 米国の調査では、PTSDは女性の有病率が男性の約2倍と高く、災害や事故に比べ、深刻な性犯罪や暴力犯罪の被害のほうが発症率は高い。またPTSDの約1/3が長期に慢性化していた[4]
 
  1. 疫学レジリエンス
  1. 外傷的出来事の体験者の多くは何らかの程度のストレス反応を生じるが、その多くは自然に回復し、PTSDとなるのは一部である。
  1. 心的外傷性ストレスの影響をほとんどないしわずかにしか受けない耐久性をレジスタンス、ストレスの影響を受けても速やかに回復する復元力をレジリエンス、さらに時間が経過してから回復する場合をリカバリーと定義すると、ニューヨークWTCテロ事件(2002年)後に周辺住民1,267人を縦断調査(6-42カ月)した報告では、レジスタンス型53%、レジリエンス型10%、リカバリー型9%、遅発型(再燃含む)14%、遷延型13%であった。したがってレジスタンス型、レジリエンス型、リカバリー型を合わせれば約7割と大多数を占めた[5]。トラウマ的出来事後にはほとんどの者がなんらかのストレス反応を経験するが、大半の者は自然経過の中で回復することが期待できる。ただし、暴力や性暴力などの故意による出来事では自然災害などに比べPTSD症状が長引きやすい。
  1. 疫学:有病率
  1. PTSDの有病率は国による違いはあるものの、男性よりも女性の有病率が高い。またトラウマ的出来事の種類により発症率は異なる傾向にある。
  1. WHO世界保健調査(2017)の結果では、わが国の一般人口中の生涯有病率は1.2%、トラウマ体験者中の生涯有病率は2.1%であった。トラウマ体験者中の生涯有病率はオーストラリア(9.6%)や米国(8.3%)では高いが、ドイツ(2.5%)やイスラエル(2.1%)はわが国に近いレベルである[6]
  1. わが国での救命救急センターに入院した重症交通外傷患者100例の調査結果では、多くの者が何らかの程度のストレス反応を生じていたが、ASDの発症率は9.0%、6カ月後のPTSD発症率は8.5%であった[7]。また阪神淡路大震災により全壊・全焼被災者のPTSD有病率は9.6%であった[8]。したがって大災害や重度事故においてもPTSDの発症率は限られたものである。
  1. 災害や事故に比べ、暴力や性暴力の被害ではPTSD発症率が高まる[4][9]。レイプなどの深刻な性被害はもっとも発症率が高く、男女にかかわらず半数近くがPTSDを発症する[4] <図表>
  1. PTSDにはうつ病、不安障害、物質依存など他の精神障害が高い割合で合併する[4][9][10]。米国の調査ではPTSDの約半数にうつ病が合併していた。
 
トラウマ的出来事の種類によるPTSDの生涯有病率

トラウマ的出来事の種類によりPTSDの発症率は異なる。

出典

Ronald C Kessler, Wai Tat Chiu, Olga Demler, Kathleen R Merikangas, Ellen E Walters
Prevalence, severity, and comorbidity of 12-month DSM-IV disorders in the National Comorbidity Survey Replication.
Arch Gen Psychiatry. 2005 Jun;62(6):617-27. doi: 10.1001/archpsyc.62.6.617.
Abstract/Text BACKGROUND: Little is known about the general population prevalence or severity of DSM-IV mental disorders.
OBJECTIVE: To estimate 12-month prevalence, severity, and comorbidity of DSM-IV anxiety, mood, impulse control, and substance disorders in the recently completed US National Comorbidity Survey Replication.
DESIGN AND SETTING: Nationally representative face-to-face household survey conducted between February 2001 and April 2003 using a fully structured diagnostic interview, the World Health Organization World Mental Health Survey Initiative version of the Composite International Diagnostic Interview.
PARTICIPANTS: Nine thousand two hundred eighty-two English-speaking respondents 18 years and older.
MAIN OUTCOME MEASURES: Twelve-month DSM-IV disorders.
RESULTS: Twelve-month prevalence estimates were anxiety, 18.1%; mood, 9.5%; impulse control, 8.9%; substance, 3.8%; and any disorder, 26.2%. Of 12-month cases, 22.3% were classified as serious; 37.3%, moderate; and 40.4%, mild. Fifty-five percent carried only a single diagnosis; 22%, 2 diagnoses; and 23%, 3 or more diagnoses. Latent class analysis detected 7 multivariate disorder classes, including 3 highly comorbid classes representing 7% of the population.
CONCLUSION: Although mental disorders are widespread, serious cases are concentrated among a relatively small proportion of cases with high comorbidity.

PMID 15939839
 
  1. 危険因子
  1. PTSDの危険因子となる心理社会的要因は、より大きな生命的危険の認知、社会的サポートの欠如、トラウマ体験時の感情反応(恐怖、孤立無援感、自責など)や解離反応、トラウマ体験後の生活ストレスである。
  1. Brewinら[11]による77報告のメタアナリシスでは、基本属性要因として年齢、性別、社会経済状況、教育歴、人種を含み、他の要因として、精神疾患の家族歴、知性、児童期の不良な環境とトラウマ、他のトラウマ、トラウマ体験の重篤度、社会的サポート、トラウマ体験後の生活ストレスなどが含まれた。その結果、PTSDの発症リスク要因として推定効果量(effect size)が最も大きかったのは、社会的サポートの欠如であった。
  1. Ozerら[12]による68報告のメタアナリシスの結果においても、個人的特性や生活歴に関する要因の推定効果量はおしなべて小さい。具体的には、過去の精神的問題、過去のトラウマ体験、家族の精神疾患歴、性別、年齢、教育歴、社会経済的状況、IQ、人種といった要因である。一方、推定効果量が相対的に大きかったのは、よりトラウマ体験に近接した要因であり、具体的には、生命的危険の認知、社会的サポートの認知、トラウマ体験時の感情反応(恐怖、孤立無援感、自責など)や解離反応、トラウマ体験後の生活ストレスであった。
問診・診察のポイント  
  1. 患者はかならずしもPTSD関連症状を主訴として受診するわけではなく、また自らトラウマ体験について打ち明けないこともある。

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薬剤監修について:
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
飛鳥井望 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:上島国利 : 特に申告事項無し[2024年]

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