今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 千葉 大 Family Medical Practice Hanoi

監修: 箕輪良行 みさと健和病院 救急総合診療研修顧問

著者校正/監修レビュー済:2024/08/07
参考ガイドライン:
  1. European Resuscitation Council Guidelines 2021: Cardiac arrest in special circumstances
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. ERCの蘇生ガイドライン(Lott C, et al. Resuscitation. 2021 Apr;161:152-219. Epub 2021 Mar 24. Erratum in: Resuscitation. 2021 Oct;167:91-92)、偶発性低体温症のクリニカルレビュー(Paal P, et al. Int J Environ Res Public Health. 2022 Jan 3;19(1):501)が更新された。
  1. 上記の情報更新を受けて、アルゴリズムをはじめ記載を大幅に見直した。
  1. SSSの改訂版であるRSSSについて詳述した。
  1. 体外循環を示す用語について整理した。

概要・推奨   

  1. 冬山などの現場では、RSSS(revised swiss staging system)を念頭において低体温症の重症度を判断する。
  1. RSSSには適用条件があるため、予め内容に習熟しておくこと。
  1. 治療はフローチャートに沿って行う、特にパッキング法やCPRの適応を熟知しておく。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 深部体温35℃以下を低体温と定義する(正常は37.2~37.7℃)[1]
  1. 臨床的には、単純な低温曝露による場合を1次性(偶発性)低体温症、低体温症を来す内因性疾患による場合を2次性低体温症と分類する。
  1. 2次性低体温症の誘因として、体熱喪失の亢進、熱産生低下、体温調節障害を考慮する[2]
  1. 本稿は主に偶発性低体温症、つまり低温環境への曝露による1次性低体温症について記載する。
  1. さらに近年は、大血管手術や蘇生後治療の一環として人為的に導入される低体温療法も普及しつつあるが、本稿では触れない。
  1. 偶発性低体温症は、進行すると多臓器機能不全から心肺停止に至る重篤な病態で、乳幼児やBMIが低い成人は体表からの熱損失が相対的に大きくなるため、特に注意が必要である。
  1. 高齢者は体内のエネルギー産生が少なく復温に長時間を要し、若年者と比較すると生命および機能予後は悪い。高齢化により、日本において低体温症例が増えているとの報告がある[3]
  1. アルコールや薬物の摂取は、低体温症の引き金となりやすい。住宅の喪失や貧困は、十分な保温を妨げ、低体温症のリスクになる。また、温暖な気候の地域であっても偶発性低体温症は発生しうる[3][4]
  1. 偶発性低体温症の発生率は、10万人あたり0.13から6.9[5][6][7][8]とされるが、風があり湿度が高いと冷却速度が速い。風による冷却効果を検討した指標としてthe wind chill indexが知られている[9]
  1. 雪崩埋没では9℃/hourと急速に冷却されうる。また、冷水での溺水では30分で心肺停止をきたしうる[10]
  1. 発汗、意識障害、薄着、頭部露出、薄い皮下脂肪も速度に影響する。健康な若年者でも30℃以下で、並存疾患ある高齢者は32℃で心肺停止を起こしうる[11]
  1. シバリングが疲労・鎮静あるいは重篤な状態で停止すると、深部体温は急速に低下して患者自身では復温不能となる。
  1. 逆に、深部体温が30℃以上あれば低体温だけで心肺停止は起こらないとの報告もある[12]
  1. 低体温状態では代謝が低下していることから、長時間の心肺停止や蘇生処置を経ても良好な転帰が期待できる。そのため、明らかな外傷や窒息などの合併がない限り蘇生や復温を積極的に行い、復温するまで死亡宣告しない[13]。“no one is dead until warm and dead”。
  1. 救助後や復温開始後も冷却が続く現象をアフタードロップと呼ぶ。復温部位と深部臓器との間の血流再開による不均衡などが原因とされているが[14]、実臨床上の影響については諸説ある[15]

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
千葉 大 : 未申告[2024年]
監修:箕輪良行 : 特に申告事項無し[2025年]

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偶発性低体温症

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