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概要・推奨
所見のポイント:- 尿閉とは、排尿ができないか、あるいは排尿後にも多量の残尿を有する状態である。尿閉の原因には下部尿路閉塞、排尿筋収縮不全、薬剤による影響、下部尿路や性器の感染や炎症、神経因性の排尿障害などがあり、さらにいくつかの原因が複合している例もある。
- まず尿閉なのか無尿なのかを判断することが大事である。
緊急対応: >詳細情報 - 泌尿器科を受診するまで期間がある場合には、バルーンカテーテルによる尿の持続ドレナージか、3~4時間ごとの間欠導尿を行う。
症状治療・診断的治療: >詳細情報 - 尿閉の合併症として、尿路性器感染症、膀胱結石、膀胱壁の肥厚や膀胱憩室などのほかに、水腎症や膀胱尿管逆流症など上部尿路障害がある。さらに、重篤な合併症として、腎後性腎不全や膀胱の自然破裂に伴う尿溢流がある。
- 急性尿閉に伴う膀胱痛や頻尿・残尿感は、膀胱の過伸展が原因であり、問診から尿閉が疑われ、触診あるいは腹部エコーで拡張した膀胱を確認したら、診断の確定と患者の苦痛を緩和するために導尿による尿の排出が必要である。
専門医相談のタイミング: >詳細情報 - 尿閉は急性、慢性、あるいは尿閉に伴う合併症の有無にかかわらず、基本的に泌尿器科にコンサルトする必要がある。
診断へのアプローチ: >詳細情報 - ポイント:
- 尿閉は一般的に、急激に発症し膀胱痛や強い残尿感などを伴う急性尿閉と、慢性に経過し膀胱痛などの強い症状を伴わない慢性尿閉に区別される。急性尿閉の場合には導尿により膀胱内の尿を排出しない限り患者の苦痛は改善しない。慢性尿閉は自覚症状の乏しい例もあるが、腎後性腎不全などの合併症が潜在することがあり注意が必要である。
- 鑑別疾患は、性別により異なる。
- 男性の尿閉の鑑別疾患:
- 男性では前立腺肥大症が最も多く、そのほかに前立腺癌や尿道狭窄などがある。男性では直腸診により前立腺の腫大の程度や硬結の有無、前立腺炎による前立腺の腫脹や圧痛の有無を確認する。
- 女性の尿閉の鑑別疾患:
- 女性の尿閉は、腹圧性尿失禁に対する手術、骨盤臓器脱に伴う尿道の屈曲や下垂した子宮や直腸による膀胱頚部の圧迫、子宮や卵巣の腫瘍の膀胱への圧迫や浸潤により生じる。そのほか、比較的若年の女性に発症するFowler症候群という原因不明の尿道括約筋弛緩不全による排尿障害も存在する。
- 男性・女性胸痛の鑑別疾患:
- 男性、女性に共通する尿閉の原因として、膀胱癌や腎癌からの出血による膀胱内の凝血塊、尿路結石や膀胱内異物、膀胱排尿筋の収縮障害、尿路性器感染症や炎症、便秘による直腸内の便塊、排尿筋の収縮力を減弱させる薬剤、神経因性膀胱などが挙げられる。
- 検査:
- 検査としては、血液検査、尿検査、超音波検査、膀胱尿道内視鏡検査、腹部骨盤CTやMRI、膀胱尿道造影検査、尿流測定・残尿測定、内圧尿流測定、膀胱内圧測定を考慮する。
- ポイント:
- 下記の疾患が、尿閉を来す頻度の高い疾患、重篤な疾患、まれな治療可能な疾患である。
- 頻度の高い疾患: >詳細情報
- 前立腺肥大症、前立腺癌、尿道狭窄、神経因性膀胱、薬剤性排尿障害
- 重篤な疾患: >詳細情報
- 膀胱癌、腎癌・尿管癌・腎盂癌、婦人科腫瘍
- まれな治療可能疾患: >詳細情報
- 急性前立腺炎、膀胱結石、便秘、放射線性膀胱炎
検査・処方例
※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。
■尿閉の初診時のルーチン評価例
- 腹部診察にて膀胱の拡張を疑う所見のあるときにはエコー検査にて確認する。さらに導尿を行い、排出される尿量を測定する。尿沈渣は血尿の有無から膀胱癌などの疑いがないかを考えるきっかけであり、また尿閉の合併症である尿路感染症の有無を考えるために必要である。
○ まず行うのは無尿との鑑別である。
■上部尿路・腎の合併症を疑う場合の検査例
- 問診にて腎盂腎炎などの尿路感染症を繰り返していた既往や、腹部エコーにて上部尿路の拡張や腎実質のひ薄やエコーレベルの上昇を認める場合には、血液検査にて腎機能を確認する。また、発熱などの症状や尿沈渣で膿尿や細菌尿を認める場合には、血液検査にてWBCの増加やCRPの上昇の有無を確認する。さらに尿培養検査にて細菌の同定と感受性検査を行う。
○ 発熱、腎機能障害を疑う場合は採血を行う。
■治療例
- 尿閉の原因が前立腺肥大症による下部尿路閉塞である場合、バルーンカテーテルの留置または間欠導尿の開始とともにα1遮断薬の投与を開始する。カテーテル留置した場合には、内服開始から3~8日後カテーテルを抜去して自排尿をトライする方法が推奨されている[1]。
- α1遮断薬の内服でも自排尿が改善しない場合には、5α還元酵素阻害剤を併用すると改善する可能性がある[1]。
- 自排尿が改善しない例やいったん改善するも尿閉を繰り返す場合には外科的治療の適応である。
- 排尿筋の収縮抑制や尿道平滑筋の収縮作用を有する薬剤、排尿反射を中枢性に抑制する薬剤を内服している患者が尿閉となった場合、薬剤の減量や中止を考慮する。
- 神経因性膀胱では、膀胱出口部の閉塞軽減を目的にエフブランチルを、また排尿筋の収縮障害が原因である場合にはウブレチドの投与を考慮する。改善のない場合には間欠導尿あるいはバルーンカテーテル留置を考慮する。
- 排尿筋収縮障害を呈する神経因性膀胱に対して、仙骨神経刺激療法の有効性が報告されている。
○ 前立腺肥大症では1)~4)のいずれかを、神経因性膀胱では5)、6)のいずれかを用いる。
1)
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2)
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3)
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4)
アボルブカプセル[0.5mg] 1カプセル 分1 朝食後 [用量内/㊜前立腺肥大症]
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5)
エブランチルカプセル[30mg] 30~90mg 分2 朝夕食後 [用量内/㊜神経因性膀胱]
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6)
ウブレチド錠[5mg] 1錠 分1 朝食後 [用量内/㊜神経因性膀胱]
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■尿路感染症治療例
- 尿閉に尿路感染症を合併している場合は、尿の培養を提出し、適切な抗菌薬による治療を開始する。さらにバルーンカテーテルまたは間欠導尿による尿のドレナージが必要である。
○ 1)~4)のいずれかを用いる。
1)
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2)
パンスポリン静注用1gバッグS[1g] 1回1g 6~12時間ごと 7~14日間 [用量適宜増減2倍以下/㊜膀胱炎]
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3)
スルペラゾン静注用[1g]1回 1g 6~12時間ごと 7~14日間 [用量内/㊜膀胱炎]
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商品名一覧
先発品:スルペラゾン
後発品:バクフォーゼ,セフロニック,セフォセフ,ワイスタール,セフォン
薬理情報
抗菌薬 >抗菌薬(βラクタマーゼ阻害薬配合セフェム系)
同効薬一覧
- スルペラゾン静注用など(スルバクタム・セフォペラゾン配合)
- ザバクサ配合点滴静注用など(セフトロザン・タゾバクタム配合)
要注意情報
腎注
肝注
不明
不明
児量[有]
4)
ゾシン静注用[4.5g] 1回4.5g 8~12時間ごと 7~14日間 [用量内/㊜慢性複雑性膀胱炎]
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商品名一覧
先発品:ゾシン
後発品:タゾピペ
薬理情報
抗菌薬 >抗菌薬(βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系)
同効薬一覧
- オーグメンチン配合錠など(アモキシシリン・クラブラン酸配合)
- ユナシン-S静注用など(アンピシリン・スルバクタム配合)
- ゾシン静注用など(タゾバクタム・ピペラシリン配合)
要注意情報
腎注
肝注
妊B
不明
児量[有]
所見のポイント:
- 尿閉とは、排尿ができないか、あるいは排尿後にも多量の残尿を有する状態である。尿閉の原因には下部尿路閉塞、排尿筋収縮不全、薬剤による影響、下部尿路や性器の感染や炎症、神経因性の排尿障害などがあり、さらにいくつかの原因が複合している例もある。
- まず尿閉なのか無尿なのかを判断することが大事である。
緊急対応: >詳細情報
- 泌尿器科を受診するまで期間がある場合には、バルーンカテーテルによる尿の持続ドレナージか、3~4時間ごとの間欠導尿を行う。
症状治療・診断的治療: >詳細情報
- 尿閉の合併症として、尿路性器感染症、膀胱結石、膀胱壁の肥厚や膀胱憩室などのほかに、水腎症や膀胱尿管逆流症など上部尿路障害がある。さらに、重篤な合併症として、腎後性腎不全や膀胱の自然破裂に伴う尿溢流がある。
- 急性尿閉に伴う膀胱痛や頻尿・残尿感は、膀胱の過伸展が原因であり、問診から尿閉が疑われ、触診あるいは腹部エコーで拡張した膀胱を確認したら、診断の確定と患者の苦痛を緩和するために導尿による尿の排出が必要である。
専門医相談のタイミング: >詳細情報
- 尿閉は急性、慢性、あるいは尿閉に伴う合併症の有無にかかわらず、基本的に泌尿器科にコンサルトする必要がある。
診断へのアプローチ: >詳細情報
- ポイント:
- 尿閉は一般的に、急激に発症し膀胱痛や強い残尿感などを伴う急性尿閉と、慢性に経過し膀胱痛などの強い症状を伴わない慢性尿閉に区別される。急性尿閉の場合には導尿により膀胱内の尿を排出しない限り患者の苦痛は改善しない。慢性尿閉は自覚症状の乏しい例もあるが、腎後性腎不全などの合併症が潜在することがあり注意が必要である。
- 鑑別疾患は、性別により異なる。
- 男性の尿閉の鑑別疾患:
- 男性では前立腺肥大症が最も多く、そのほかに前立腺癌や尿道狭窄などがある。男性では直腸診により前立腺の腫大の程度や硬結の有無、前立腺炎による前立腺の腫脹や圧痛の有無を確認する。
- 女性の尿閉の鑑別疾患:
- 女性の尿閉は、腹圧性尿失禁に対する手術、骨盤臓器脱に伴う尿道の屈曲や下垂した子宮や直腸による膀胱頚部の圧迫、子宮や卵巣の腫瘍の膀胱への圧迫や浸潤により生じる。そのほか、比較的若年の女性に発症するFowler症候群という原因不明の尿道括約筋弛緩不全による排尿障害も存在する。
- 男性・女性胸痛の鑑別疾患:
- 男性、女性に共通する尿閉の原因として、膀胱癌や腎癌からの出血による膀胱内の凝血塊、尿路結石や膀胱内異物、膀胱排尿筋の収縮障害、尿路性器感染症や炎症、便秘による直腸内の便塊、排尿筋の収縮力を減弱させる薬剤、神経因性膀胱などが挙げられる。
- 検査:
- 検査としては、血液検査、尿検査、超音波検査、膀胱尿道内視鏡検査、腹部骨盤CTやMRI、膀胱尿道造影検査、尿流測定・残尿測定、内圧尿流測定、膀胱内圧測定を考慮する。
- ポイント:
- 下記の疾患が、尿閉を来す頻度の高い疾患、重篤な疾患、まれな治療可能な疾患である。
- 頻度の高い疾患: >詳細情報
- 前立腺肥大症、前立腺癌、尿道狭窄、神経因性膀胱、薬剤性排尿障害
- 重篤な疾患: >詳細情報
- 膀胱癌、腎癌・尿管癌・腎盂癌、婦人科腫瘍
- まれな治療可能疾患: >詳細情報
- 急性前立腺炎、膀胱結石、便秘、放射線性膀胱炎
■尿閉の初診時のルーチン評価例
■
尿閉の初診時のルーチン評価例
- 腹部診察にて膀胱の拡張を疑う所見のあるときにはエコー検査にて確認する。さらに導尿を行い、排出される尿量を測定する。尿沈渣は血尿の有無から膀胱癌などの疑いがないかを考えるきっかけであり、また尿閉の合併症である尿路感染症の有無を考えるために必要である。
○ まず行うのは無尿との鑑別である。
■上部尿路・腎の合併症を疑う場合の検査例
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上部尿路・腎の合併症を疑う場合の検査例
- 問診にて腎盂腎炎などの尿路感染症を繰り返していた既往や、腹部エコーにて上部尿路の拡張や腎実質のひ薄やエコーレベルの上昇を認める場合には、血液検査にて腎機能を確認する。また、発熱などの症状や尿沈渣で膿尿や細菌尿を認める場合には、血液検査にてWBCの増加やCRPの上昇の有無を確認する。さらに尿培養検査にて細菌の同定と感受性検査を行う。
○ 発熱、腎機能障害を疑う場合は採血を行う。
■治療例
■
治療例
- 尿閉の原因が前立腺肥大症による下部尿路閉塞である場合、バルーンカテーテルの留置または間欠導尿の開始とともにα1遮断薬の投与を開始する。カテーテル留置した場合には、内服開始から3~8日後カテーテルを抜去して自排尿をトライする方法が推奨されている[1]。
- α1遮断薬の内服でも自排尿が改善しない場合には、5α還元酵素阻害剤を併用すると改善する可能性がある[1]。
- 自排尿が改善しない例やいったん改善するも尿閉を繰り返す場合には外科的治療の適応である。
- 排尿筋の収縮抑制や尿道平滑筋の収縮作用を有する薬剤、排尿反射を中枢性に抑制する薬剤を内服している患者が尿閉となった場合、薬剤の減量や中止を考慮する。
- 神経因性膀胱では、膀胱出口部の閉塞軽減を目的にエフブランチルを、また排尿筋の収縮障害が原因である場合にはウブレチドの投与を考慮する。改善のない場合には間欠導尿あるいはバルーンカテーテル留置を考慮する。
- 排尿筋収縮障害を呈する神経因性膀胱に対して、仙骨神経刺激療法の有効性が報告されている。
○ 前立腺肥大症では1)~4)のいずれかを、神経因性膀胱では5)、6)のいずれかを用いる。
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アボルブカプセル[0.5mg] 1カプセル 分1 朝食後 [用量内/㊜前立腺肥大症]
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5) |
エブランチルカプセル[30mg] 30~90mg 分2 朝夕食後 [用量内/㊜神経因性膀胱]
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ウブレチド錠[5mg] 1錠 分1 朝食後 [用量内/㊜神経因性膀胱]
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■尿路感染症治療例
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尿路感染症治療例
- 尿閉に尿路感染症を合併している場合は、尿の培養を提出し、適切な抗菌薬による治療を開始する。さらにバルーンカテーテルまたは間欠導尿による尿のドレナージが必要である。
○ 1)~4)のいずれかを用いる。
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パンスポリン静注用1gバッグS[1g] 1回1g 6~12時間ごと 7~14日間 [用量適宜増減2倍以下/㊜膀胱炎]
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スルペラゾン静注用[1g]1回 1g 6~12時間ごと 7~14日間 [用量内/㊜膀胱炎]
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ゾシン静注用[4.5g] 1回4.5g 8~12時間ごと 7~14日間 [用量内/㊜慢性複雑性膀胱炎]
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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
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編集部編集コンテンツ:
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エルゼビアは医療の最前線にいらっしゃる
すべての医療従事者の皆様に敬意を表します。
人々の健康を守っていただき、ありがとうございます。
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