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著者: 近藤雅楽子 東京都立墨東病院 周産期センター 新生児科

監修: 渡辺博 帝京大学老人保健センター

著者校正/監修レビュー済:2024/06/12
参考ガイドライン:
  1. 新生児黄疸の治療基準(森岡の基準):Morioka I:Hyperbilirubinemia in preterm infants in Japan: New treatment criteria. Pediatr Int 60:684–690, 2018
  1. 日本医療研究開発機構(AMED) 難治性疾患実用化研究事業「早産児核黄疸の包括的診療ガイドラインの作成」班:早産児ビリルビン脳症(核黄疸)診療の手引き
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. わが国における新生児黄疸の治療基準は、長らくの間、1985年の村田・井村の基準および1991年の中村の基準が用いられてきた。その後、早産児の生存率向上に伴い早産児ビリルビン脳症の発生が問題視されるようになり、2018年に森岡の新基準が提唱され、2020年には早産児ビリルビン脳症(核黄疸)診療の手引きが作成された。今回の定期レビューでは、それら2点を踏まえた加筆修正を行った。

概要・推奨   

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 新生児は、生理的に多血であり、赤血球寿命も短いためにビリルビン産生量が多い(ビリルビンは、ヘモグロビン異化の最終代謝産物)。かつ、肝機能も未熟であり、腸肝循環も亢進しており、ビリルビンの尿や便への排泄能力が低い。このため、ほとんどの新生児は生理的に、生後4~5日でピークとなるような黄疸を呈する。
  1. 生後24時間以内に顕在化する黄疸(早発黄疸)のほとんどは溶血性黄疸であり、迅速な治療開始が必要である。
  1. 生後2週間を超えて遷延する黄疸(遷延性黄疸)は、病的意義の少ない母乳性黄疸のこともあるが、甲状腺機能低下症や胆道閉鎖症などの基礎疾患による症状のことがあるため原因検索が重要である。
  1. 新生児黄疸の治療は、中枢神経障害予防が目的であり、血中ビリルビン値により、日齢および体重別の治療基準に則した光線療法または交換輸血が基本である。
  1. 黄疸による中枢神経障害は、ビリルビンの神経毒性によって生じる。血中UB(unbound bilirubin、すなわちアルブミンに結合していない遊離ビリルビン、血液脳関門を容易に通過して神経組織に結合して毒性を示す)レベルの上昇、血液脳関門の破綻、脳内アシドーシスの亢進が関与していると考えられている。
  1. ビリルビンの神経毒性による中枢神経障害を、ビリルビン脳症という。
  1. ビリルビン脳症では、正期産児の場合は典型的に急性期から慢性期へと神経症状が進行する。一方、早産児の場合は、在胎週数が小さいほど急性期の症状がはっきりしないまま、慢性期の神経症状が出現することが知られている。
  1. ビリルビン脳症の急性期症状は、Praaghの症状(第1期:筋緊張低下、嗜眠傾向、吸啜反射の減弱、までは可逆性、第2期:緊張亢進、発熱、後弓反張に至ると不可逆性とされる)として知られ、慢性期には、アテトーゼ型脳性麻痺などの症状を示す。
  1. ビリルビン脳症の検査所見:頭部MRI検査では、T2強調画像における両側淡蒼球の異常高信号を認め、聴性脳幹反応(ABR)では、無反応や著しい低振幅などの異常を認める。
  1. ビリルビン脳症の頭部MRI病変は、生後6カ月~1歳半で高率に認めるが、新生児期や生後2歳過ぎでは病変の検出率が下がる。一方、ABR異常の検出率は年齢による差が少ない。
問診・診察のポイント  
  1. 新生児黄疸は生理的症状としても多く認めるため、その発症時期と生理的範囲からの逸脱により病的黄疸と診断する。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
近藤雅楽子 : 未申告[2024年]
監修:渡辺博 : 特に申告事項無し[2024年]

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新生児黄疸(小児科)

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