今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 久松理一 杏林大学医学部付属病院消化器内科

監修: 上村直実 国立健康危機管理研究機構 国府台医療センター

著者校正/監修レビュー済:2022/12/07
参考ガイドライン:
  1. 難病情報センター(https://www.nanbyou.or.jp/entry/4708)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)。

概要・推奨   

  1. 回腸末端を除く下部小腸を中心に多発性の浅い潰瘍が多発する疾患であり、若年者に好発する。
  1. 顔面蒼白、易疲労感、浮腫、第二次性徴を含めた成長障害がみられ、女性では無月経が少なくない。
  1. 診断基準に沿って、臨床的事項、X線・内視鏡所見を確認し、鑑別疾患を除外することにより診断となる。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 非特異性多発性小腸潰瘍症とは、回腸末端を除く下部小腸を中心に多発性の浅い潰瘍が多発する疾患であり、若年者に好発する。腹痛や潰瘍からの出血による下血、それに付随する貧血などを主症状とする。非特異性多発性小腸潰瘍症の主な病態は、慢性小腸潰瘍からの持続性潜性消化管出血と低蛋白血症である。
  1. この度、非特異性多発性小腸潰瘍症は、さまざまな研究により、SLCO2A1というプロスタグランジンのトランスポーターに関する遺伝子の変異に起因する疾患であることが解明され、本症の英語疾患名がchronic enteropathy associated with SLCO2A1(CEAS)という新名称に変更された。
  1. 非特異性多発性小腸潰瘍症と非ステロイド性消炎鎮痛薬による小腸病変の内視鏡所見は類似している。(参考文献:[1]
  1. まとめ:小腸内視鏡所見の遡及的検討が報告されている。
  1. 事 例:非特異性多発性小腸潰瘍症の小腸潰瘍と非ステロイド性消炎鎮痛薬による小腸病変は、いずれも輪状ないし斜走する幅の狭い浅い潰瘍を特徴としていた。
  1. 結 論:これらのことから、非特異性多発性小腸潰瘍症の病態にプロスタグランジン代謝異常が関与する可能性が示唆されている。
  1. 非特異性多発性小腸潰瘍症に類似した疾患が欧米でも報告されている。(参考文献:[2][3]
  1. まとめ:原因不明の小腸潰瘍症の遡及的研究が報告されている。
  1. 事 例:フランスを中心とした欧州からは、空腸、回腸に境界明瞭な潰瘍と多発性再発性狭窄を来す疾患としてcryptogenic multifocal ulcerous enteritisが報告されている。臨床像はCNSUに類似するが、発症年齢、臨床経過、好発部位は若干異なっている。
  1. 結 論:いまだに異同は不明であるが、非特異性多発性小腸潰瘍症に類似した病態が存在すると考えられる。
  1. 常染色体劣性遺伝形式を示す小腸潰瘍症が存在する。
  1. まとめ:原因遺伝子が特定された成人の小腸潰瘍症が存在する。
  1. 事 例:cPLA2遺伝子のホモ変異による血小板機能異常により出血性小腸潰瘍を繰り返す疾患として、細胞質ホスフォリパーゼA2欠乏症による腸病変が報告されている。肉眼的血便が主症状である。
  1. 結 論:非特異性多発性小腸潰瘍症の類似疾患の可能性がある。
  1. 組織学的には潰瘍は粘膜層ないし粘膜下層に限局し、形質細胞、リンパ球、好酸球を主体とする軽度の炎症細胞浸潤がみられる[4][5][6][7][8][9][10][1][11]
  1. 女性に好発し、多くは幼・若年期に発症する。長期間に及ぶ持続性潜性の消化管出血による高度の貧血および低蛋白血症に関連した症状が主症状である[4][5][6][7][8][9][10][1][11]
  1. 非特異性多発性小腸潰瘍症は、指定難病であり、重症例(ヘモグロビン10.0g/dl以下の貧血、あるいはアルブミン値 3.0g/dl以下の低アルブミン血症、あるいは合併症として、腸管狭窄による腸閉塞症状を呈する場合)などでは、申請し認定されると、保険料の自己負担分の一部が公費負担として助成される。([平成27年7月施行])
  1.  難病法に基づく医療費助成制度 
問診・診察のポイント  
  1. 顔面蒼白、易疲労感、浮腫、第二次性徴を含めた成長障害がみられ、女性では無月経が少なくない。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
久松理一 : 講演料(田辺三菱製薬(株),アッヴィ合同会社,持田製薬(株),武田薬品工業(株),ファイザー(株),ヤンセンファーマ(株)),研究費・助成金など(EAファーマ(株),キッセイ薬品工業(株))[2024年]
監修:上村直実 : 講演料(武田薬品工業(株),大塚製薬(株))[2024年]

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非特異性多発性小腸潰瘍症

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