今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 平野滋 京都大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

監修: 森山寛1) 東京慈恵会医科大学附属病院

監修: 小島博己2) 東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科

著者校正/監修レビュー済:2024/07/10
参考ガイドライン:
  1. 日本音声言語医学会/日本喉頭科学会:音声障害診療ガイドライン2018年版. 金原出版,2018(https://www.jslp.org/gl/clin.pdf)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、記述の一部を刷新し、画像の一部を変更、日本語文献を追記した。

概要・推奨   

  1. 嗄声・発声障害に対しては喉頭内視鏡検査、ストロボスコピー検査による診断が必要である(推奨度1、J)
  1. 呼吸困難の有無を必ず確認し、急性喉頭蓋炎などの救急疾患を見逃さないことが重要である(推奨度1)
  1. 嗄声・発声障害の各病態に応じた治療法の選択が重要である(推奨度1)

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. 発声障害の原因は多岐にわたるが、主に隆起性病変、神経原性疾患、変性疾患、機能性疾患に分けられる。
  1. 隆起性病変:最もよく遭遇する。声帯ポリープ、結節、嚢胞、ラインケ浮腫など。
 
声帯ポリープの内視鏡所見(1)

右声帯中央にポリープを認める。声の乱用が原因とされ、典型的には粘膜内出血が血腫を来したものと解釈されている。

出典

著者提供
 
声帯ポリープ

右声帯前中1/3に赤色の出血性ポリープを認める。

出典

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声帯結節の内視鏡所見(1)

両側声帯前方に小隆起を認める。音声酷使が原因で、子どもにできる学童結節、大人では高音発声を行う女性、特に保育士、幼稚園などでの音声酷使者に多い。

出典

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声帯嚢胞の内視鏡所見(1)

右声帯やや後方に嚢胞を認める。上皮下に形成される真性嚢胞で、外傷を機転として形成される。病変が小さくても音声障害は高度であることが多い[1][19]

出典

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ラインケ浮腫(ポリープ様声帯)の内視鏡所見(1)

両側声帯のびまん性腫脹を認める。喫煙が最大の原因とされ、粘膜内の浮腫を来す。粗造性嗄声(がらがら声)が特徴[9][20]

出典

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ラインケ浮腫(ポリープ様声帯)の内視鏡所見(2)

高度なラインケ浮腫。気道が狭小化している。

出典

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  1. 神経原性疾患:反回神経麻痺が最も多いが、けいれん性発声障害も増加傾向にある。
 
反回神経麻痺の内視鏡所見(1)

右声帯(向かって左)は発声時(b)に内転閉鎖するが、左声帯は麻痺しており、発声時に内転しないため発声時の声門閉鎖不全を来す。息漏れが高度なので気息性でハスキーな声になる。発声持続時間は著しく短縮し、QOLが悪化する。高度の場合は誤嚥を来す[13]
a:吸気時
b:発声時

出典

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けいれん性発声障害の内視鏡所見

発声時に急激な声帯の過内転を来し声が中断する。とぎれとぎれの声になるのが特徴。発声時に声帯より上部の構造物が拘縮して、声帯の観察がしにくくなることが多い[21]
a:吸気時
b:発声時

出典

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  1. 変性疾患:声帯瘢痕、溝症
 
声帯溝症の内視鏡所見

両側声帯に溝を呈する陥凹がみられる。この部位は硬く変性し粘膜振動が障害されるため、高度の嗄声を呈する。先天性、後天性、混合性が考案されている[22]

出典

著者提供
 
  1. 機能性疾患:声帯粘膜や運動性に異常を認めない疾患であり、見落としやすい。性同一性障害も増加傾向にある。
問診・診察のポイント  
 
  1. 発声障害の原因を正確に診断する必要がある。

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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
平野滋 : 研究費・助成金など(クリングルファーマ(株))[2024年]
監修:森山寛 : 未申告[2024年]
監修:小島博己 : 特に申告事項無し[2024年]

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