今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 礒部威 島根大学医学部内科学講座呼吸器・臨床腫瘍学

監修: 高橋和久 順天堂大学大学院

著者校正/監修レビュー済:2024/06/12
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 「肺癌診療ガイドライン 2023年度版」の発行に伴いレビューを行い、PS0-1の進展型小細胞肺癌の一次治療に関して、プラチナ製剤併用療法+PD-L1阻害剤に関する記載を修正した。

概要・推奨   

  1. 小細胞肺癌は、非小細胞肺癌に比べ、化学療法と放射線療法に対する感受性が高いものの、腫瘍の増殖・進展速度が速く、多臓器への遠隔転移の頻度が高く、特に予後不良である。外科切除や化学放射線療法の適応とならない進展型小細胞肺癌は、現時点では有効な治療薬が限られる「難治癌」である。そのため、治療に伴う有害事象を上手くコントロールし使用可能な薬剤を適正な量とスケジュールで投与することが重要となる。薬物療法の概要は以下のとおりである。
  1. 進展型小細胞肺癌(PS 0-1)には、プラチナ製剤併用療法+PD-L1阻害薬を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:RsJG〕
  1. 進展型小細胞肺癌(PS 0-2、70 歳以下)にはシスプラチン+イリノテカン(PI)療法を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:RsJG〕
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病態・疫学・診察 

定義  
  1. 小細胞肺癌とは、免疫組織化学染色で神経内分泌学的特徴を示す、細胞質の乏しい小型腫瘍細胞がびまん性に増殖し、核分裂像を多く認め、壊死巣を伴う腫瘍である。進展型小細胞肺癌は、以下の限局型小細胞肺癌と定義される範囲を超えて進展したものを指す。
  1. 限局型の定義:一側胸郭に病変が限局するもので、同側肺門、両側縦隔および両側鎖骨上窩リンパ節転移を含む。悪性胸水(細胞診陽性、あるいは細胞診陰性でも中等量以上の胸水)がある場合は進展型とする。
  1. 診断メモ:
  1. 日本肺癌学会の肺癌診療ガイドラインでは多くの第III相臨床試験で採用されている定義、すなわち病変が同側胸郭内に加え、対側縦隔、対側鎖骨上窩リンパ節までに限られており悪性胸水、心嚢水を有さないものを限局型小細胞肺癌と定義付けられている。
 
疫学  
  1. わが国における肺癌死亡者数は年々増加してきており、悪性腫瘍による死亡原因の第1位となっている。2020年の統計では全肺癌死亡者数は75,585人/年であった。肺癌の組織型のうち、約15%が小細胞肺癌(small cell lung cancer:SCLC)であるため、約11,300人が小細胞肺癌と診断され、そのうち進展型の比率は70%であることから、約7,940名が進展型小細胞肺癌と考えられる。危険因子としては、以前または現在の喫煙歴、受動喫煙、アスベスト、ヒ素、クロム、ベリリウム、ニッケルなどの物質への職業曝露、肺癌の家族歴などがある。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
礒部威 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:高橋和久 : 講演料(アストラゼネカ(株),中外製薬(株)),研究費・助成金など(小野薬品工業(株),中外製薬(株),MSD(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株)),奨学(奨励)寄付など(杏林製薬(株),日本ベーリンガーインゲルハイム(株),大鵬薬品工業(株),中外製薬(株))[2024年]

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小細胞肺癌(進行期)

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