今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 和田忠志 ひだまりホームクリニック

監修: 和田忠志 ひだまりホームクリニック

著者校正/監修レビュー済:2022/06/23
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った。用語を最近の趨勢に合わせて書き換えた。統計データ等を更新した。

概要・推奨   

  1. 家族は高齢者や障害者の最大の擁護者であるとともに最大の虐待者(abuser, perpetrator)である。
  1. 「声なき声に耳を研ぎ澄ます」活動も、在宅医療の重要な要素である。
  1. 加害者や被害者の虐待に対する認識は問わない:「加害者が故意で行っていない場合」でも、また、「被害者が虐待されている自覚がない場合」でも、第三者からみて、被害がはなはだしいときには虐待とみなす。
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まとめ 

まとめ  
  1. わが国で通常使用される概念は、①身体的虐待(physical abuse)、②心理的虐待(psychological abuse)、③性的虐待(sexual abuse)、④介護等放棄(neglect)、⑤経済的虐待(financial abuse)である。これらの概念は高齢者虐待防止法(正式名称「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17年11月9日法律第124号)に記載されている。最近では、加えて、セルフ・ネグレクト(self-neglect)も虐待に含めて考えることがある。
  1. 基本的には虐待の疑いを発見した者は、地域包括支援センターあるいは市役所に通報義務がある。通報者は疑いのみで通報して差し支えなく、虐待の存在確認は地域包括支援センターあるいは市役所の責務とされる。
  1. 虐待かどうかが見分けにくい「グレーゾーンの事例」が多いことも事実である。その場合、在宅ケアに関わる支援者間での情報共有を行い、生活支援を行うことが多いであろう。そのうえで、「虐待がやはり存在しそうだ」とか、「支援が困難な事例である」と支援者が判断したときには、通報窓口である地域包括支援センターに通報あるいは相談し、地域包括支援センターを含めて支援計画を組み立てたい。
  1. 虐待事例では、被害者の救済も重要であるが、「加害者を含めた家庭全体の生活支援」が重要である。また、「見守り」を行う場合には、支援者で「介入の基準」を作成して対応する。身体的虐待や介護等放棄、セルフ・ネグレクトは生命に関わり得る点で重要な虐待だが、支援者からみえやすく、その意味では対応がしやすい。一方、経済的虐待は支援者からみえにくく、認知症高齢者が被害者になりやすい。経済的虐待では成年後見制度活用が有効である。はなはだしい虐待事例では、「一次分離」に踏み切り、その後、虐待が改善する見込みがないとき、あるいは被害者が永久的な別離を希望するとき、「二次分離」を行う。
  1. 多くの虐待事例では経済的虐待も伴なう。経済的虐待に対する有力な対応方法の一つは成年後見制度の利用である。一方、支援者が介入したときには、すでにわずかな手持ちの財産しか残ってない場合も多い。そのような場合、行政担当者と連携して生活保護の検討を行う。まれな深刻な事例では、自己破産の手続きを行う必要がある場合がある。経済的虐待の加害者はしばしば生活能力や対人関係能力に障害を持ち、長期的な支援を必要とするが、そのような若年者への社会復帰の支援体制が整っていない。
  1. 在宅医療は本人のみならず家族に関わる医療である。家族は高齢者や障害者の最大の擁護者でもあり、一方では残念ながら、最大の虐待者でもある。そして、地域医療や在宅医療を真剣に行っている医師は、地方公共団体や福祉事務所などからこのような社会的困難事例を多く紹介されるであろう。その意味では、虐待の問題を避けては在宅医療はできないというのが私の認識である。
 
  1. 虐待防止関連法規
  1. わが国には、4つの虐待防止関係法規がある。
  1. 児童虐待防止法(正式名称「児童虐待の防止等に関する法律」平成12年法律第82号)
  1. DV防止法(正式名称「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」平成13年4月13日法律第31号)
  1. 高齢者虐待防止法(正式名称「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17年11月9日法律第124号)
  1. 障害者虐待防止法(正式名称「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」平成23年6月24日法律第79号)
  1. である。このような多彩な弱者に対する虐待防止の国法が揃っている国は珍しく、わが国は先進的な国である。
  1. これらの法では、①身体的虐待(physical abuse)、②心理的虐待(psychological abuse)、③性的虐待(sexual abuse)、④介護等放棄(neglect)、⑤経済的虐待(financial abuse)の5つの虐待の概念が規定されている。
  1. 高齢者と障害者の法には、法律名に「養護者支援」が明記されている。「養護者」とは、現に介護する家族や施設職員と解してよい。そこには、加害者の介護負担や加害者の障害などが虐待の背景にあること、介護者支援が社会的に重要との認識が伺える。これは、私たちの「現場の感覚」に沿うものである。
 
  1. 高齢者虐待の概念
  1. わが国で通常使用される概念は、①身体的虐待(physical abuse)、②心理的虐待(psychological abuse)、③性的虐待(sexual abuse)、④介護等放棄(neglect)、⑤経済的虐待(financial abuse)である[1]。加えて、セルフ・ネグレクト(self-neglect)も虐待に含めて考えることが多い。それぞれについて簡単な説明を加える。
  1. 身体的虐待(physical abuse)
    「暴力を行う」のが代表的だが、「ひも・器具などで身体を拘束する」、「部屋に閉じ込める」などや「鎮静薬などで活動を抑制する」もあたる。また、「無理やり食べ物を口に入れる」「ナースコールを使用させない」なども該当する。「深夜に作業をさせる」なども該当する。ベッド柵やミトンの使用などもこれに該当し得る。
  1. 心理的虐待(psychological abuse)
    あらゆる心理的なダメージを与える行為をいう。ののしる、どなりつける、侮蔑的な言葉を語るなどが代表的であるが、「親しい人に会わせない」「やりたいこと(活動など)をさせない」なども該当する。介護施設などでは、「食事に薬をふりかけて食べさせる」も該当し得る。
  1. 性的虐待(sexual abuse)
    本人の意思に反して行われる性的接触や性的な言葉がけが該当する。「わいせつな言葉をあびせる」、「本人の意思に反して性行為を迫る」、「無理に体に触れる」はもとより、「被害者にわいせつな行為を行うことを強要する」などが代表的である。(介護の途中などであっても)「下半身(女性の場合は胸なども)を露出したまま放置する」もこれにあたる。
  1. 介護等放棄(介護や世話の放棄)(neglect)
    被害者(victim)に不快感を与えたり、健康に影響が出るほどに、介護や世話を怠り、放置することをいう。「食事を与えない」「入浴させない」「おむつを交換しない」「劣悪あるいは不潔な住環境で生活させる」などが代表的である。適切な医療を受けさせないこともこれにあたる。
  1. 経済的虐待(financial abuse)
    被害者(victim)からの不当な金銭などの搾取をいう。「認知症になった親の預金を生活費に流用する」などが代表的である。生活に必要な金銭を渡さない(使わせない)、年金、預貯金や固定資産などを勝手に使用するなどをいう。「高齢者を意思に反して高齢者施設などに入所させ、その家屋を使用する」「不動産を無断で売却する」なども該当する。
  1. セルフ・ネグレクト(self-neglect)
    劣悪な環境や不潔な環境に自らを置く行為である。セルフ・ネグレクトは独立した死亡リスクである[2]。身体障害や、うつ病あるいは認知症を伴うことが多いが、必ずしも伴わない[3][4]
  1. 令和2年度厚⽣労働省データによれば[5]、全国1,741市町村の集計で、居宅での虐待(養護者による⾼齢者虐待)通報件数35,774件、虐待が確認された事件17,281件であった。通報は前年比5.0%増加した。
  1. 虐待の通報(複数回答)は、⾝体的虐待12,128人(68.2%)、⼼理的虐待7,362人(41.4%)、介護等放棄3,319人(18.7%)、経済的虐待2,588人(14.6%)であった。通報者は「警察」が11,978人(31.2%)で最も多く、次いで「介護支援専門員」が9,760人(25.4%)であった。また、虐待者で最多は息子7,462人(39.9%)であった。
  1. わが国のどこでも、調査を行うと、通報者は介護支援専門員が多く、虐待者は息子が多いという傾向がある[6]
  1. 以上のように虐待の定義を述べたが、疾患と同じくこれらは合併して生じ得る。すなわち、1人の被害者に加えられる虐待が複数種類であることは少なくない。ほとんどの身体的虐待や性的虐待は心理的虐待を伴う。つまり、「相手を心理的にも支配する」手段として身体的虐待や性的虐待が行われることも多い。また、加害者が複数の場合も珍しくなく、被害者が複数の場合もある。このような家庭内の全体状況を認識したい。
 
  1. 加害者や被害者の虐待に対する認識は問わない:「加害者が故意で行っていない場合」でも、また、「被害者が虐待されている自覚がない場合」でも、第三者からみて、被害がはなはだしいときには虐待とみなす。
  1. 「加害者が故意で行っていない場合」でも、また、「被害者が虐待されている自覚がない場合」でも、第三者からみて、被害がはなはだしいときには虐待とみなす。医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構や千葉県松戸市での調査では、加害者のうち半数程度は自分の行為を虐待と自覚していないというデータが得られている[7][8]。例えば、加害者が「しつけ」と称して親に暴力を行っている例とか、「母親にはしっかりしてほしい」という理由で、ADLの低下した高齢の母親を無理に買い物に行かせているような事例は虐待とみなすべきことがある。あるいは、家族が「リハビリテーション」と称して、被害者にとっては過酷な運動をさせている場合なども虐待とみなすべきことがある。
  1. 被害者が強要されているのではなく、自発的に行っている場合でも、虐待とみなすべき事例がある。被害者が「自発的に金銭を与える」形態の経済的虐待もある。例えば、息子に「お金に困っている」といわれ、母親が金銭を渡す場合などである。その回数が多い場合や供与額が多額の場合、被害者が認知症で話し合いの主導権を持っていない場合、あるいは、金銭を供与したために被害者が生活に困窮する事例は、虐待とみなすべきことがある。
 
  1. 家族は高齢者や障害者の最大の擁護者であるとともに最大の虐待者(abuser, perpetrator)である。
  1. 在宅医療は患者の居宅で実施される。そして、患者の生活や生き方そのものと関わる医療である。通常は表に出ないような「家庭のなかの諸事情」に関わる医療でもある。要介護者や認知症患者に対して虐待(abuse、mistreatment)が起こりやすいが、在宅医療はこのような「障害のある方々」を診療する医療でもある。
  1. 在宅医療が語られるとき、家族に見守られて最期まで療養する素晴らしさが、しばしば描かれる。自宅療養は、本人にも満足感があり、家族にも達成感があるという魅力的なストーリーにあふれている。しかし、家族は高齢者や障害者の最大の擁護者であるとともに最大の虐待者(abuser、 perpetrator)である。この現実に眼をそむけて、本当の意味で、在宅医療に取り組むことはできないと筆者は考える。
 
  1. 「声なき声に耳を研ぎ澄ます」活動も、在宅医療の重要な要素である。
  1. 地域において、真に救済が必要な人は、しばしば「声を上げない」というのが筆者の認識である。本当に深刻な状況や劣悪な状況にある人は、救済をもたらす情報にうまくアクセスできないことが珍しくない。また、自らの障害や、(加害者の存在を含めた)諸々の妨害要因のために、救済そのものを求めることができない場合もある。しかし、真摯に在宅医療を行っている医師は、地域に根をはって仕事をしているうちに、虐待事例を含めた「社会的困難事例」を公的機関や他職種から紹介されるであろう。つまり、地域の「声なき声」が聞こえてくるのである。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
和田忠志 : 未申告[2024年]
監修:和田忠志 : 未申告[2024年]

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居宅虐待への対応(在宅医療)

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