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エムポックス（サル痘）

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著者: 氏家無限国立国際医療研究センター国際感染症センター

監修: 倉井華子静岡がんセンター感染症内科

著者校正/監修レビュー済：2025/01/15

参考ガイドライン：

厚生労働省：エムポックス診療の手引き第2.0版（Mar 2024）

疾病対策予防センター（Centers for Disease Control and Prevention：CDC）：Clinical Treatment of Mpox, 10 Dec 2024

世界保健機関（World Health Organization: WHO）：Clinical management and infection prevention and control for monkeypox: Interim rapid response guidance, 10 June 2022

世界保健機関（World Health Organization: WHO）：Smallpox and mpox (orthopoxviruses): WHO position paper, August 2024

患者向け説明資料

改訂のポイント：

2022年の流行以降の疫学情報を更新し、2024年8月に2度目のPHEIC（Public Health Emergency of International Concern）の原因となったクレードIbのサル痘ウイルス（MPXV）に関する情報を追加した。

サル痘の名称については、偏見や差別を避けるため、WHOは2022年11月にエムポックスと名称を変更することを推奨した。日本国内でも感染症法上の名称が、2023年5月に「サル痘」から「エムポックス」に変更された。

MPXVクレードIbの流行が2023年9月から、コンゴ民主共和国、南キブ州の鉱山町カミトゥガで始まり、性的感染等により近隣国などに急速に拡大し、アフリカ大陸内外への更なる流行拡大阻止のため、2024年8月に2度目のPHEICがWHOより宣言された。2024年12月時点では、クレードIb MPXVは、コンゴ民主共和国東部と周辺諸国で主に流行している。

クレードIb MPXV感染は、主に密接な身体接触（多くは性的接触）を介して拡大し、家庭内や地域社会での感染も増加、感染分布の変化により、小児患者の割合が増加している。また、動物との接触による感染は報告されておらず、ヒトとヒトの接触が主要な感染経路と考えられいる。

日本国内におけるエムポックス患者の疫学情報について追加した。

国立感染症研究所によると、国内における2024年2月25日までに報告された240例のエムポックス症例においては、すべてが男性であり、HIV陽性者が105例（61.8％）、症状としては発疹（89.6％）と発熱（72.5％）が多く認められ、HIV感染による免疫不全患者1例の死亡が報告されている。

エムポックスに対する治療薬の開発に関する臨床試験の結果を追加した。

これまで国内で利⽤可能な薬事承認された特異的な治療薬はなかったが、⽇本バイオテクノファーマが申請した抗ウイルス薬のテコビリマットが薬事申請され、薬事審議会が承認、2024年12月27日に厚⽣労働省が正式に承認した。

日本でエムポックスの予防に承認されている痘そうワクチン（LC16m8）に関して追加した。

日本で1975年に承認されたLC16m8は、2022年8月2日、エムポックスの予防が追加承認された。

LC16m8は市場流通していないが、日本国内の各地域における8つの医療機関で、研究を通じてLC16m8を用いた曝露後予防接種を実施する体制が確立しており、濃厚接触者が特定できる場合には、曝露から14日以内の予防接種の適応について検討する。

エムポックス確定患者の濃厚接触者に対する曝露後予防の研究が2022年に開始され、2人のHIV陽性例を含む6人にLC16m8が接種されたが、重篤な有害事象やエムポックス症例の発生は認めなかった（Tomita N, et al. Hum Vaccin Immunother. 2023 Aug 1;19(2):2242219.）。

概要・推奨

※本項は、2024年12月時点で得られた情報を元に作成しています。最新情報は厚生労働省ホームページ等でご確認ください。

流行状況、性別、年齢、渡航歴、性交渉歴などの疫学的な感染症のリスクを考慮し、性器周辺などの水疱や膿疱などの皮膚病変に対して、エムポックスを鑑別疾患として想起する。

2022年から感染拡大したエムポックスでは、発疹出現前の発熱やリンパ節腫脹や皮疹の性状（数、場所、進行など）が古典的なエムポックス症状と異なることを考慮する。

2023年より、新たなクレードⅠaによる感染拡大が、コンゴ民主共和国やその周辺国を中心に報告されており、異なる特徴の患者発生の可能性に留意する。

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