低(無)酸素・虚血後脳症 :トップ    
監修: 永山正雄 国際医療福祉大学大学院医学研究科 神経内科学
木下浩作 日本大学医学部付属板橋病院救命救急センター

概要

疾患のポイント:
  1. 低酸素虚血後脳症とは、脳の灌流低下や低酸素血症によって起こる脳の全体的な障害状態である。脳が低酸素状態に対して代償できる値はPaO2で40mmHgが限界で、それ以下では脳機能障害を来す。平均動脈圧も60mmHg以下では脳灌流圧を維持できず、脳血流は低下し意識障害が発生する。
 
診断: >詳細情報 
  1. 診断は、病歴にて行う。心停止や気道異物による窒息、入浴中の溺水などにより、バイタルサインが回復しても意識障害が持続する場合は、低(無)酸素・虚血後脳症を疑い原因の評価と加療の検討を始める。
 
原因の評価:
  1. 低(無)酸素・虚血後脳症は、全身性の病態に引き続いて発生することが多く、特に心筋梗塞、致死性不整脈や重症肺炎、急性呼吸窮迫症候群や肺塞栓などの心肺疾患や急性中毒が重要である。臨床的には、極端な低血圧(収縮期血圧<60mmHg)、心停止や気道異物による窒息が原因となることが多い。
  1. 心停止後の自己心拍再開患者(心停止後症候群:post cardiac arrest syndrome、PCAS)は最も重要で、かつ頻度の高い低(無)酸素・虚血後脳症の原因である。
  1. 一酸化炭素(CO)中毒は有毒ガス中毒のなかで最も多く、原因として火災、自動車排気ガス、産業事故や家庭用燃料の不完全燃焼などが挙げられる。CO中毒は、頭痛・悪心、脱力感、呼吸困難、失神、昏睡などの急性症状を引き起こす。診断は、現病歴、症状とCO-Hb濃度などにより行う。
 
予後: >詳細情報 
  1. 心停止後症候群は全身虚血の程度と持続により重症度が異なり、患者の約半数は24時間以内に死亡する。
  1. 心循環器系の障害は12~24時間で軽快傾向になる。第1~3病日には、心機能や全身状態は改善されるのに対して腸粘膜の透過性は亢進し、敗血症症候群の前段階に発展していく。臓器障害が進行し、肝臓、膵臓や腎臓の障害から多臓器不全の病態を形成する。最終的には、自己心拍再開後数日で感染症を併発し死に至る経過が多い。
 
治療: >詳細情報 

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

心停止後症候群の患者に対する体温管理療法(低体温療法)
  1. 心原性心肺停止患者で初期心電図が心室細動である傷病者への体温管理療法(32~36℃)の有効性は科学的にも示され、国内外の蘇生ガイドラインで推奨されている。
  1. 2002年に、相次いで「心原性院外心肺停止後症候群の患者に行う低体温療法は、低体温療法非施行群と比較して有意に転帰が改善する」と報告された。JRC 蘇生ガイドライン2010でも、院外での心室細動による心停止後、自己心拍再開後の昏睡状態(質問に対して意味のある応答がない)の成人患者に対しては、低体温療法(12~24時間、32~34℃)を施行すべきであり、院外での無脈性電気活動、心静止による心停止後もしくは院内心停止後に成人の自己心拍再開後昏睡状態の患者に有益かもしれないとしていた。しかし、2013年にNielsenらにより、同様の患者を低温で管理した場合(33℃;低体温療法)と高体温を避け体温管理した場合(36℃;体温管理療法 target temperature management、 TTM)では転帰に差のないことが報告された[1]。これを受けて2015年JRC蘇生ガイドライン[2]では、「体温管理療法施行時には、32~36℃の間で目標体温を設定し、その温度で一定に維持することを推奨する。特定の心停止患者において、低い目標体温(32~34℃)と高い目標体温(36℃)のどちらがより有益であるかは不明であり、今後の研究でこの点が明らかになるかもしれない」としている。いずれにしても、推奨レベルは異なるが、自己心拍再開後に反応のない場合は、体温管理療法を行うことの必要性を考慮する。
  1. 2015年JRC蘇生ガイドラインによると、体温管理療法(32~36℃)は、初期ECG波形が電気ショック適応の院外心停止に対しては推奨され、初期ECG波形が電気ショック非適応の院外心停止およびすべての初期ECG波形の院内心停止に対しては提案するとされている。また、初期ECG波形が電気ショック適応の成人院外心停止で、自己心拍再開後に反応がない場合は、体温管理を行うことを推奨し、体温管理療法を行わないことに反対する立場をとっている。
  1. 一方、初期ECG波形が電気ショック非適応の成人院外心停止で自己心拍再開後に反応がない場合は、体温管理療法を行うことを提案し、体温管理療法を行わないことに反対し、すべての初期ECG波形の成人院内心停止で自己心拍再開後に反応がない場合は、体温管理療法を行うことを提案し、体温管理療法を行わないことに反対している。
○ 鎮静薬と鎮痛薬(1)、3)を第1選択薬とする)を選択する。少量から増やすが、低血圧に注意する。筋弛緩薬( 5)もしくは6))は、シバリングを認める場合に考慮する。

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リファレンス

img  1:  Nielsen N, Wetterslev J, Cronberg T, Erlinge D, Gasche Y, Hassager C, Horn J, Hovdenes J, Kjaergaard J, Kuiper M, Pellis T, Stammet P, Wanscher M, Wise MP, Åneman A, Al-Subaie N, Boesgaard S, Bro-Jeppesen J, Brunetti I, Bugge JF, Hingston CD, Juffermans NP, Koopmans M, Køber L, Langørgen J, Lilja G, Møller JE, Rundgren M, Rylander C, Smid O, Werer C, Winkel P, Friberg H, TTM Trial Investigators.; Targeted temperature management at 33°C versus 36°C after cardiac arrest. N Engl J Med. 2013 Dec 5;369(23):2197-206.
img  2:  日本蘇生協議会監修:第2章 成人の二次救命処置. JRC蘇生ガイドライン2015、pp44-174、医学書院、2016.
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
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心停止後症候群での頭部CTの経時的変化
著者校正済:2017/11/30
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