今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 松山豪泰 山口大学医学部付属病院

監修: 中川昌之 公益財団法人 慈愛会 今村総合病院 泌尿器科顧問

著者校正/監修レビュー済:2021/11/02
参考ガイドライン:
  1. 日本泌尿器科学会:膀胱癌診療ガイドライン2019年版
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った(変更なし)。

概要・推奨   

  1. PDD(photodynamic diagnosis)やNBInarrow-band imagingなど腫瘍可視化技術の使用により癌検出率は向上し(推奨の強さ1),膀胱内再発の低下につながる(PDD:推奨の強さ1、NBI: 推奨の強さ2
  1. 腹腔鏡下/ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術は開放膀胱全摘除術よりも低侵襲で、同等の制癌効果が報告されており、推奨される。(推奨の強さ2、エビデンスの確実性B)
  1. 一次治療のプラチナ製剤併用化学療法後に再発または進行した、あるいはプラチナ製剤併用化学療法による術前もしくは術後補助化学療法の治療終了後12月以内に再発または転移した膀胱癌に対して、ムブロリズマブを使用することが推奨される(推奨の強さ1、エビデンスの確実性:A)。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 膀胱癌は約70%が筋層まで達しない筋層非浸潤性、約30%が筋層またはそれ以上に浸潤転移を来す浸潤性膀胱癌に大別される。
  1. 生物学的特徴として時間的、空間的多中心性が挙げられ、再発や多発傾向を認める。
  1. 再発のメカニズムとして単クローン説(単クローンの癌細胞が播種により再発)とfield change説(尿路上皮全体が前癌状態となり、多中心性に再発)の2説があり、いずれも関与しているようである。
  1. 膀胱癌の一度近親者(親子兄弟)での罹患リスクは約1.7 倍であり、次世代シークエンス、Genome–wide association studies(GWAS)、メタアナリシスなどから膀胱癌の発症に関与する遺伝子(遺伝子座)も同定されつつある。リンチ症候群は、DNA複製時のミスマッチ修復異常によって癌の易罹患性に関与する常染色体優性(顕性)の遺伝性疾患であり、腎盂尿管癌はリンチ症候群関連癌として知られているが、膀胱癌との関連も示唆されている。膀胱癌に多い遺伝子変異としてp53, FGFR3などが挙げられ、前者は膀胱上皮内癌や浸潤性膀胱癌に、後者は乳頭状非浸潤性膀胱癌に多い変異である。
  1. 膀胱癌の年齢調整罹患率(全国推計値。基準人口は1985 年のモデル人口)は、2013 年において6.6(/10 万人/ 年)であり、男女別にみると男性11.5、女性2.6 と男性において約4 倍頻度が高い。年齢調整死亡率は、2016 年の集計にて、男女合計で2.1(/10 万人/ 年)で、男女別にみると男性3.7、女性1.0である。60歳以上の高齢者に多発し、人口10万人あたりの年齢調整罹患率は、7.6人(2002年統計)であるが、男性13.5に対して女性2.9と、男性に多い疾患である。
  1. リスクファクター:
  1. 喫煙:喫煙者は非喫煙者に比べ2~4倍発癌のリスクが高く、5~6年発症が早いことが報告されている。
  1. 職業性発癌物質:化学染料に含まれる芳香族アミン(2- naphthylamine, benzidineなど)の曝露と膀胱癌発癌の因果関係が明らかで、これらの薬剤を取り扱う職業従事者は一般人より2~40倍発癌リスクが高いことが報告されている。最近新たにortho-toluidine とchloroaniline(MOCA)が発癌物質と認定された。
  1. その他危険因子:結石感染症などの慢性刺激、ビルハルツ吸虫症、ヒトパピローマウイルス感染、シクロホスファミドの長期連用、放射線照射による発癌が挙げられる。
  1. 病理組織型は尿路上皮癌が約90%を占め、その他、扁平上皮癌、腺癌が存在する。特に扁平上皮癌は上記の慢性刺激や寄生虫感染時に多く、腺癌は膀胱頂部に発生する尿膜管癌に多い。
 
尿路上皮癌病理組織像(Grade1, pTa)

軽度異型性を有するも比較的極性を保った移行上皮細胞が7層以上の層状構造を形成。

出典

著者提供
 
尿路上皮癌(Grade2, pTa)

核は大小不同性で不均等な細胞配列を有する。

出典

著者提供
 
尿路上皮癌(Grade3, pTis)

細胞間の結合性に乏しく大小不同性でN/C比(核胞体比)の大きな細胞が不規則に配列、核小体は明瞭である。

出典

著者提供
問診・診察のポイント  
  1. 膀胱癌の特徴的自覚症状は無症候性肉眼的血尿である。特に50歳以上の男性でこの症状が出現した場合、その原因の第1位は膀胱癌である。症状は間欠的であるため、症状の初発から受診まで長時間の間隔がみられることも少なくなく、問診の際、注意が必要である。

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
松山豪泰 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:中川昌之 : 特に申告事項無し[2025年]

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