今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 横溝晃 医療法人 原三信病院 泌尿器科

監修: 中川昌之 公益財団法人 慈愛会 今村総合病院 泌尿器科顧問

著者校正/監修レビュー済:2021/09/29
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行い、化学療法や新しいガイドラインについて加筆した。

概要・推奨   

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 腎盂・尿管腫瘍は、腎盂尿管という上部尿路に生じる腫瘍の総称で、その多くは癌である。
  1. 腎盂尿管癌は腎盂、尿管の尿路上皮由来の悪性腫瘍で、以前は組織型として「移行上皮癌」と称されていたが、現在は腎盂尿管癌と膀胱癌を併せて「尿路上皮癌」と呼ばれる。
  1. 尿路上皮癌のなかで、多くは膀胱癌であり、腎盂尿管癌はその5~10%を占める。
  1. 欧米諸国での年間新患発生率は10万人当たり1~2人と推定されるが、日本の患者数は、正確な集計が行われていないため不明である。
  1. 男女比は3対1で、膀胱癌と同じ男女比である。
  1. 膀胱癌は診断時に浸潤癌である率は15%であるのに対し、腎盂尿管癌は60%と高い[1]
  1. 腎盂尿管癌患者の約10%に同時に膀胱癌が存在し、過去もしくは将来の膀胱内再発は30~51%に生じる[2]
  1. 膀胱癌と同じように喫煙が最も重要なリスク因子であり、芳香族アミンなど有機溶媒曝露もリスク因子である。
 
下部尿管癌の摘出標本写真

尿管下端に乳頭状広基性腫瘍が認められた。

出典

著者提供
 
腎盂癌

腎盂に充満し、腎実質に浸潤する腎盂癌の摘出標本の写真。

出典

著者提供
 
  1. 左尿管癌の症例
  1. 主訴:無症候性肉眼的血尿
  1. 病歴:67歳、女性。受診の1年6カ月前より、ときどき無症候性肉眼的血尿が出現することに気づいたが、その後、血尿は消失したため、受診せず放置。1カ月前に、健診のエコーにて、左水腎症を指摘され、当科紹介初診。背部痛など、症状はなし。喫煙:20本/日を20歳から53歳まで。
  1. 診断のためのテストとその結果:検尿では尿潜血2+、沈渣RBC50/H、WBC4/H。尿細胞診class V。エコーで左水腎水尿管症、左萎縮腎を認める。膀胱鏡では膀胱内に異常なし。血清Cr値1.2mg/mL(eGFR 48mL/min)。CTにて、左中部尿管に造影効果のある腫瘤を認め、一部周囲に浸潤を疑う所見あり。腫大リンパ節なし、胸部CT、骨シンチでは異常なく、左尿管癌T3N0M0、stageⅢの診断となった。
  1. 治療:尿管周囲浸潤も疑われたため、開腹による左腎尿管全摘除術、同時に腎門部から、大動脈分岐部までリンパ節郭清術を施行した。
  1. 転帰:病理診断は尿路上皮癌、high grade、G2、pT3、pN0。術後血清Cr値1.5mg/mL(eGFR 34mL/min)。腎機能障害はあるが、術後補助化学療法の有用性が最近明らかになり、カルボプラチンとゲムシタビンによるアジュバント化学療法を予定している。
 
左尿管癌のCT所見

a:腎内部リンパ節腫大を認める。
b:左水腎症と左腎萎縮を認める。

出典

著者提供
 
  1. 左腎盂癌の症例
  1. 主訴:無症候性肉眼的血尿
  1. 病歴:2010年9月より、無症候性肉眼的血尿出現。近医総合病院受診。CTにて、左腎盂癌の診断にて当科紹介初診。
  1. 治療:後腹膜鏡下左腎尿管全摘除術を施行。
  1. 転帰:術後1年で再発転移なし。
 
左腎盂癌患者の造影(早期)CT

造影早期で、左腎盂に造影効果のある腫瘤陰影を認める。

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著者提供
 
CT(造影排泄相)

造影排泄層で、左腎盂に陰影欠損を認める。

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著者提供
 
CT Urography

左腎盂に陰影欠損を認める。

出典

著者提供
 
CT 排泄相の冠状断画像

左腎盂に陰影欠損を認める。

出典

著者提供
問診・診察のポイント  
  1. 最も多い症状は、無症候性肉眼的血尿である。

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オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
横溝晃 : 講演料(アステラス製薬(株),ヤンセンファーマ(株))[2024年]
監修:中川昌之 : 特に申告事項無し[2024年]

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腎盂・尿管腫瘍

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