慢性進行性肺アスペルギルス症 :トップ    
監修: 具芳明 国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター
谷直樹 諏訪中央病院 呼吸器内科

概要

疾患のポイント:
  1. 呼吸器にアスペルギルスが起こす慢性感染を慢性肺アスペルギルス症(chronic pulmonary aspergillosis、CPA)と呼ぶ。わが国のガイドライン(深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014、アスペルギルス症の診断・治療ガイドライン2015)では、治療方針を決定する上で、CPAを、病変が単一の空洞内に限定される単純性肺アスペルギローマ(simple aspergilloma、SPA)と、慢性進行性肺アスペルギルス症(chronic progressive pulmonary aspergillosis、CPPA)に大別している。
  1. CPPAは、慢性空洞性肺アスペルギルス症(chronic cavitary pulmonary aspergillosis、CCPA)、慢性壊死性肺アスペルギルス症(chronic necrotizing aspergillosis、CNPA)の2つを包括する概念である。
  1. 慢性空洞性肺アスペルギルス症(CCPA)は、呼吸器症状や全身症状、炎症反応の亢進を伴い、複数の空洞(菌球を伴うこともある)が増大、周囲に拡大する病態である。病理学的に組織侵襲を伴わない。
  1. 慢性壊死性肺アスペルギルス症(CNPA)は、アスペルギルスの組織侵襲を伴うもので、緩徐進行性に肺の破壊が進行する病態である。
  1. CCPA、CNPAが更に進展、増悪し、肺の線維化と破壊が2葉以上の広範囲に及んだ病態を、慢性線維性肺アスペルギルス症(chronic fibrosing pulmonary aspergillosis、CFPA)という。
  1. CCPAとCNPAの厳密な鑑別には病理学的所見が必要であり、臨床的には困難であること、しかし、これらの2つの疾患は治療方針に大きな差異が認められないことから、わが国のガイドライン(前述)では、これらを包括した概念として、慢性進行性肺アスペルギルス症(chronic progressive pulmonary aspergillosis、CPPA)という名称を提唱している。
  1. IDSAやERSなどの海外のガイドラインでは、CPAを、SPA、aspergillus nodule(画像所見上結節影を呈するまれなアスペルギルス病変)、CCPAに大別し、CNPAはsubacute IPAとして、CPAと区別している。わが国のガイドラインでいうところのCPPAは、海外のガイドラインでいうCCPAと同義と考えられる。
 
診断: >詳細情報 
  1. 深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014では、基礎疾患(陳旧性肺結核、肺非結核性抗酸菌症、胸部外科術後、間質性肺炎、肺嚢胞を含む空洞性病変、気管支拡張症、COPD、糖尿病、肺炎の既往、アスペルギルス症の既往など)を有する患者で、以下の4項目が揃ったときにCPPAを疑うとしている。
  1. 1カ月以上続く呼吸器、全身症状
  1. 胸部画像所見上、新たな陰影の出現・既存陰影の増悪
  1. 一般抗菌薬や抗抗酸菌薬の投与に反応しない
  1. 炎症性マーカーの上昇がある
  1. 上記に加えて、抗アスペルギルス沈降抗体陽性、呼吸器検体の病理組織学的診断(気管支肺胞洗浄鏡検で菌糸確認、経気管支肺生検など)の少なくとも1つが陽性の場合を臨床診断例とし、それに加えて、培養検査(喀痰、気管支肺胞洗浄液)が陽性であれば、確定診断例としている。
  1. 抗アスペルギルス沈降抗体は、本症の診断において有用な検査である。感度・特異度に関しては報告によって差があるが、国内からの報告では、感度 78.9%、特異度 95.6%であった。しかし、この検査は現時点では保険適用がない(2016年2月時点)。
  1. 補助診断として、血清ガラクトマンナン抗原、β-Dグルカンの結果も参考にする(報告によって差はあるが、それぞれ陽性率は20~30%程度)。偽陽性の場合もあるので解釈には注意を要する。
  1. 喀痰検体でアスペルギルスが検出された場合、コンタミネーションの可能性も考慮しなければならない。
 
重症度・予後: >詳細情報 
  1. CNPAの予後についての検討で、抗真菌薬にて治療された症例において、死亡率42%(観察期間中央値15カ月)、生存期間の中央値は62カ月という報告がある(International Journal of Infectious Diseases 14 (2010) e479–e482)。
 
治療: >詳細情報 
  1. CPPAに対して有効な抗真菌薬治療のエビデンスは少ないが、点滴製剤であれば、MCFG、VRCZ、CPFGが推奨される。代替薬として、L-AMB、ITCZを考慮してもよい。経口薬は、VRCZ、ITCZがある。
  1. 点滴治療を考慮する状況しては、喀血・血痰、呼吸不全、発熱、体重減少、などがある場合である。
  1. 炎症マーカー(CRP、赤沈)を3カ月ごと、胸部X線・CTを6~12カ月ごと、沈降抗体などを定期的にフォローする。
  1. 治療期間は通常は6カ月以上必要と考えられているが、治療終了に関して明確な基準はない。1~3カ月ごとに病状をチェックし、安定していれば中止を検討してもよいが、治療中止後の再燃もしばしばみられ、中止後も慎重なフォローアップが必要である。
  1. 喀血を認めた場合には、トラキネム酸内服や、気管支動脈塞栓術を施行する。
  1. 病変が限局している場合、薬物療法への反応が不良(アゾール耐性株、気管支動脈塞栓術を施行したにも関わらず、喀血を繰り返すなど)の場合には、外科的切除を検討する。
 
専門医相談のタイミング: >詳細情報 
  1. CPPAを疑う状況(血痰・喀血、画像所見で空洞影・fungus ball、一般抗菌薬で改善しない肺病変、喀痰検査でアスペルギルスが検出されるなど)に遭遇した際には、CPPAの可能性について専門家と相談することが望ましい。
  1. 喀血、難治性の血痰の場合には、気管支動脈塞栓術を考慮する。
  1. 治療中止のタイミング、治療中止の可否についても、専門家と相談して決定することが望ましい。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

診断のための検査例
  1. 症状、画像、血液検査、細菌学的検査などを総合して診断する。
○  CPPAを疑う患者では以下の検査を考慮する。
1)
ガラクトマンナン抗原
2)
3)
抗アスペルギルス沈降抗体(保険適用外)
4)
喀痰真菌培養
5)
気管支肺胞洗浄液(真菌培養、ガラクトマンナン抗原[保険適用外] )
6)
経気管支肺生検
7)
胸部単純X線写真2方向
8)
胸部単純CT

治療の例
  1. 点滴製剤であれば、MCFG、VRCZ、CPFGが推奨される。代替薬として、L-AMB、ITCZを考慮してもよい。経口薬は、VRCZ、ITCZがある。VRCZを使用する場合には、治療薬物モニタリング(TDM)を行うことが勧められる。病状が安定している場合には、初期治療から内服薬を用いても良い。
  1. 点滴治療を考慮する状況としては、喀血・血痰がある、呼吸不全がある、発熱がある、体重減少がある、などとされる。
  1. 治療期間は長期に及ぶため、点滴治療を開始した場合には、病状が安定した後に経口薬へ変更する必要がある。
○ CPPAの診断がついた患者では、1) ~5) の点滴治療薬、および 6)~7) の内服治療薬から選択して投与する。点滴治療薬においては、1)、 2)を第1選択薬、3)~5)を第2選択薬とする。
1)
ファンガード点滴用[75mg] 150-300mg/回 1日1回 点滴静注 [適用内/用量内/㊜肺アスペルギルス症](編集部注:本ページで想定する適用病名「慢性壊死性肺アスペルギルス症、肺真菌症」/2015年7月)
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薬理情報 抗真菌薬 >抗真菌薬(キャンディン系)
同効薬一覧
要注意情報
腎可 肝注 妊C 不明 児量有
2)
ブイフェンド200mg静注用[200mg] 4mg/kg/回(loading dose 初日のみ6mg/kg/回)1日2回 点滴静注[適用内/用量内/㊜慢性壊死性肺アスペルギルス症]
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薬理情報 抗真菌薬 >抗真菌薬(アゾール系)
同効薬一覧
要注意情報
3)
カンサイダス点滴静注用[50mg] 50mg(loading dose 初日のみ1回70mg)1日1回 1時間かけて点滴静注[適用内/用量内/㊜慢性壊死性肺アスペルギルス症]
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薬理情報 抗真菌薬 >抗真菌薬(キャンディン系)
同効薬一覧
要注意情報
腎可 肝可 妊C 不明 児量有
4)
イトリゾール注1%[200mg][1%20mL1管(溶解液付)] 1回200mg/回 1日1回 点滴静注(loading dose 1回200mg 1日2回 点滴静注を2日間)[適用内/用量内/㊜肺真菌症]
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薬理情報 抗真菌薬 >抗真菌薬(アゾール系)
同効薬一覧
要注意情報
5)
アムビゾーム点滴静注用50mg[50mg] 2.5~5mg/kg/回 1日1回 1~2時間以上かけて点滴静注[適用内/用量内/㊜肺真菌症]
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薬理情報 抗真菌薬 >抗真菌薬(アムホテリシン系)
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要注意情報
腎注 肝可 妊B 乳可 児量[有]
6)
ブイフェンド錠[200mg] 2錠 分2 [適用内/用量内/㊜慢性壊死性肺アスペルギルス症]
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薬理情報 抗真菌薬 >抗真菌薬(アゾール系)
同効薬一覧
要注意情報
7)
イトリゾール内用液1%[1%1mL] 20mL(イトラコナゾールとして200mg)を1日1~2回 空腹時に経口投与 [適用内/用量内/㊜肺真菌症]
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薬理情報 抗真菌薬 >抗真菌薬(アゾール系)
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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適用の査定において保険適用及び保険適用外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適用の記載の一部を割愛させていただいています。
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慢性進行性肺アスペルギルス症の診断フローチャート
CPPAの画像所見
著者校正/監修レビュー済
2016/11/30