デング熱・デング出血熱 :トップ    
監修: 山本舜悟 京都大学医学部附属病院 臨床研究教育・研修部
忽那賢志 国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター

概要

疾患のポイント:
  1. デング出血熱とは、フラビウイルス科に属するデングウイルス感染症の重症型であり、血漿漏出や出血症状を特徴とする疾患である。デングウイルスに感染した蚊(ネッタイシマカ・ヒトスジシマカ)に刺されることによって感染する。
  1. デングウイルスによる臨床像は、無症候性感染や非致死性のデング熱から重症型のデング出血熱やデングショック症候群まで幅広い。デング熱が1週間程度で自然軽快するのに対し、デング出血熱は解熱の時期に血漿漏出や血小板減少による出血傾向に基づく症状が出現し、死に至ることもある。
  1. 感染症法では4類感染症となっており、デング熱として診断され、かつ診断基準の表の基準を満たした場合にデング出血熱としてただちに届け出るよう定められている。
  1. デング出血熱 診断基準:<図表>
  1. 2014年に海外渡航歴のないデング熱症例が162例報告された。2015年以降国内例は報告されていないが、今後は輸入感染症としてだけでなく、国内での感染症としても考慮する必要がある。
 
診断: >詳細情報 
  1. 海外渡航歴のある患者が3~14日の潜伏期の後に発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、皮疹などの症状を認めたときにデング熱を疑う。その後、血漿漏出や出血症状を呈した場合には、デング出血熱の診断となる。
  1. 確定診断はIgM抗体やPCR検査によるが、民間の検査会社では行われていないため、国立感染症研究所などの施設に検査を依頼する。
  1. 発症早期(発熱が出現してから1~5日)ではNS1抗原、遺伝子検査が陽性となり、解熱する前後(4~5日以降)からIgMが陽性となる。IgGは初感染では発症から1週間以降、2回目以降の感染ではより早期から陽性となる。
  1. 上記の検査結果が判明するまでには1週間以上を要するため、デング熱流行地域への渡航歴があり、発熱に加えて嘔気・嘔吐、皮疹、疼痛、タニケット試験陽性(収縮期血圧と拡張期血圧の中間で5分間圧迫後の点状出血を観察し、圧迫解除後に1インチ四方に10個以上観察されれば陽性)、白血球減少、血小板減少などの所見があればデング熱の疑いとして治療を開始すべきである。
  1. デング出血熱 診断基準:<図表>
  1. WHOのデング熱、重症デングの診断基準:<図表>
  1. 重症デング症例の皮下血腫:<図表>
  1. デング熱の流行地域:<図表>
 
重症度・予後: >詳細情報 
  1. WHOのデング熱ガイドラインでは注意すべき徴候として腹痛・圧痛、持続する嘔吐、臨床的な体液貯留、粘膜出血、嗜眠・不穏、2cm以上の肝腫大、急速な血小板減少を伴うヘマトクリット値の上昇が挙げられている。これらの所見のいずれかを有する場合は厳重な経過観察あるいは治療が必要である。
  1. また、同ガイドラインでは重度の血漿漏出、重度の出血症状、重度の臓器障害(ASTまたはALT ≧ 1,000IU/l、意識障害、心不全など)のいずれかを認めた場合を重症デングと定義している。
 
治療: >詳細情報 
  1. デングウイルスに特異的な治療はなく輸液療法が中心となる。バイタルサインの安定や尿量の確保が得られるまで十分量の輸液を行う。
  1. 明らかな出血症状がある場合、あるいは血小板が10,000/mm3以下の場合は血小板輸血を行う。また、出血症状に対して輸血が必要となることもある。
  1. デング出血熱の輸液管理アルゴリズム(代償性ショック時):アルゴリズム
  1. デング出血熱の輸液管理(非代償性ショック時):アルゴリズム
 
専門医相談のタイミング: >詳細情報 
  1. デング出血熱・重症デングの可能性が高いと判断した時点で感染症専門医に相談する。
 
臨床のポイント:
  1. 2014年に69年ぶりに国内感染事例が確認された。これまで海外渡航歴がなければ、国内でデング熱が鑑別診断に入ることはなかったが、今後検査を行う機会が増えればさらに国内感染例が診断されるケースが増えるかもしれない。
  1. しかし、デング熱に対する特異的な治療はなく、ほとんどが自然軽快するため、軽症例で早期診断に躍起になる必要性はかなり低い。蚊に刺された病歴のある患者で、ヘマトクリット上昇を伴うショック症状や重度の血小板減少を伴う場合には確定診断のための検査を検討するのがよいだろう。
  1. PCR検査や抗体検査は発症からの時期によって陽性になる期間が異なるため、検査陰性の結果解釈には注意を要する。

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

デング熱診断のための検査例
  1. デング熱抗体またはデングウイルスPCR検査を国立感染症研究所に依頼する。
  1. 手続きについては管轄の保健所または保健環境研究所に問い合わせを行う。
○ 1)を行う。
1)
血清NS1抗原およびデングウイルス抗体(IgG、IgM)  エビデンス 
2)
血液または尿デングウイルスPCR検査

合併症の評価例
  1. デング熱に特徴的なWBC減少、血小板低下、肝逸脱酵素上昇の有無の確認をする。
  1. デング出血熱でみられる血液濃縮、臓器障害の有無の確認をする。
○ 合併症のスクリーニングとして1)~3)を行う。

対症療法による治療例
  1. デング出血熱の病態の本態である血漿漏出に対する対症療法として細胞外液の大量輸液を行う。
○ 代償性ショックのときは1)、非代償性ショックのときは2)を行う。
1)
大塚生食注[500mL]またはリンゲル液アルゴリズム 20mL/kg(体重60kgで1,200mL)を1時間で投与。その後はアルゴリズムに従って投与を行う。  エビデンス 
薬剤情報を見る
薬理情報 電解質・輸液・栄養製剤 >輸液
要注意情報
腎注 肝可 不明 不明 児量無
2)
大塚生食注[500mL]またはリンゲル液アルゴリズム 20mL/kg(体重60kgで1,200mL)を15分で投与。その後はアルゴリズムに従って投与を行う。  エビデンス 
薬剤情報を見る
薬理情報 電解質・輸液・栄養製剤 >輸液
要注意情報
腎注 肝可 不明 不明 児量無

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(詳細はこちらを参照)

デング出血熱の輸液管理アルゴリズム(代償性ショック時)
デング出血熱の輸液管理(非代償性ショック時)
デング出血熱 診断基準
デング熱の流行地域
デング熱の皮疹
重症デング症例の皮下血腫
WHOのデング熱、重症デングの診断基準
著者校正/監修レビュー済
2018/02/28


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