今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 大関覚 レイクタウン整形外科病院 国際足の外科センター

監修: 酒井昭典 産業医科大学 整形外科学教室

著者校正/監修レビュー済:2022/06/23
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 手術的治療として腓腹筋内側頭切離術を紹介した。

概要・推奨   

  1. 足底腱膜炎は、炎症ではなく過負荷が原因で起こる足底腱膜の微小断裂である。
  1. 保存療法では負荷を軽減するためのアキレス腱のストレッチ(推奨度1)と装具療法(推奨度2)を行う。
  1. 保存療法無効例には積極的保存療法として体外衝撃波療法(推奨度2)を、手術的治療として鏡視下足底腱膜切離術(推奨度2)や腓腹筋内側頭切離術(推奨度2)を行う。
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病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
病態:
  1. 足底腱膜は足底皮下に踵骨から足趾の底側まで拡がる丈夫な腱様の線維膜組織で、足の縦アーチを支える機能を持ち、つま先立ちや踏み返し動作の際にアキレス腱の張力を足底に伝える機能を持っている[1][2]
 
足底腱膜の機能

アキレス腱の力を足底に伝え、趾MP関節の背屈時には巻き上げ現象を起こす。足底腱膜炎となると赤矢印部の起始部内側に圧痛が著明になる。

出典

著者提供
 
  1. また、踏み返し動作時には、足趾のMTP関節が背屈するため、足底の縦アーチが高くなる「巻き上げ現象」と呼ばれる動きが起こる。有限要素法を用いたシミュレーションでは、足底腱膜には踏み返し期の直前に体重の70%の張力がかかると示唆され、踵の高い靴で母趾が背屈するとさらに高い張力がかかると解析されている[3]
  1. 足底腱膜炎は踵部痛の最も多い原因で中年期以降の40歳代から60歳代に、過度の負荷をきっかけに踵の内側の痛みとして発症することが多い[2]が、長距離ランナーやサッカー選手などではスポーツのストレスが過剰になると発症する[4]
  1. 発症の危険因子としては、立ち仕事、足関節の背屈制限、肥満などが挙げられている[5][6]
  1. 足底腱膜炎と呼ばれるが組織学的検討では、腱様組織の変性所見が主で炎症所見に乏しく繰り返す張力負荷により起こった微少損傷である[7]。アキレス腱の拘縮を伴っていることが多い。早期に、治療しないとしばしば慢性化し治療に難渋する。しかし、症状がどんどん悪化していくことはまれで、6カ月以降も症状はさほど変化しないといわれている[8]
 
症状:
  1. 主訴は踵の痛みであるが、程度はさまざまである。特徴的なのは朝の第1歩の激痛で、少し時間が経つと軽減する。
  1. しかし、朝の痛みは軽度でも次第に増強し、夕方には足を地面につくのが困難なほどの疼痛となることが多い[9]。夜間に就眠障害が出るほどの痛みになることは少ない。
  1. 新しい革靴に換えた、フローリングの部屋に引っ越したなど、歩行時に踵の衝撃が増大するきっかけがあることが多い。
  1. また、ランニング時間が長いスポーツを行っていて、さらに負荷が増大した際や、負荷環境の変化に遇った場合にも発症しやすい。合宿練習での最後に記録会のレースをしたあと、へたったシューズで長く走ったあと、逆に新しいランニングシューズに換えた直後、硬いグラウンドの上でスパイク付きのシューズでサッカーをしたあとなどは、しばしば経験する発症機転である[10]
問診・診察のポイント  
診察法
  1. 視診では、立位での踵の内外反を後方から観察し、足部の回内や回外の異常を観察する。触診では距骨下関節や足根骨間関節の可動性を確認し、踵骨内側の足底腱膜起始部に圧痛点があることが多い[11][12]<図表>)。踵骨の内外側壁に圧迫力をかけて痛みが誘発されるか調べるsqueeze testは、疲労骨折や骨嚢腫などの鑑別に有効である[2]
 
 
検査
  1. 単純X 線写真では、立位での足部側面、単純斜位を撮影する(<図表>)。踵骨棘の有無、足根骨癒合症の合併に注意する[13]
 
 
  1. MRIでは、T1強調像で低信号の細いバンドとして足底皮下脂肪の上層に描出されるが足底腱膜炎が慢性化していると中間輝度の膨大した腫瘤として描出される。T2強調像では踵骨起始部の上面に滑液包があるため、液体が貯留して高信号域が描出されることが多い[14]
 
 
  1. 超音波画像は高解像度となり診断に広く用いられており、超音波によるElastography (弾性率計測法)では、足底腱膜の軟化が早期に観察され診断に有用である[15]

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
大関覚 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:酒井昭典 : 講演料(旭化成ファーマ(株),帝人ヘルスケア(株))[2025年]

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足底腱膜炎

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