今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 山口正雄 帝京大学

監修: 長瀬隆英 東京大学名誉教授

著者校正/監修レビュー済:2023/05/24
参考ガイドライン:
  1. 日本呼吸器学会:薬剤性肺障害の診断・治療の手引き 第2版2018
  1. 厚生労働省:免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象対策マニュアル. 2022
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 定期レビューを行った。
  1. 免疫チェックポイント阻害薬に関して加筆を行った。

概要・推奨   

  1. 薬剤性肺炎の可能性を疑う(推奨度1)。薬剤投与歴を確認することがまず重要(推奨度1)。症状としては呼吸器症状、特に乾性咳や呼吸困難に着目するとともに他の異常所見(例として皮疹や肝障害、好酸球増多など)も参考にする(推奨度1)
  1. 血清KL-6、SP-Dは間質性肺炎のマーカーとして多用されるが、薬剤性肺炎でも上昇し得るので診断の参考となる(推奨度1)

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 医薬品が適切に選択され、適切に投与されたにもかかわらず、本来の投与目的とは異なる有害な反応が生じることを有害薬物反応(adverse drug reaction)と呼ぶ。薬剤性肺障害は、薬剤と関連して生ずる多様な肺病態を指す。欧米ではdrug-induced lung(またはpulmonary)diseasesと呼ぶことが多く、臓器毒性に基づいて障害が発生したと考えられる場合はtoxicosisやinjuryも用いられる。国内では、一般的に発症機序を毒性作用に限定せずに薬剤性肺障害の用語が使われるとともに、薬剤性肺炎の言い方も用いられる。
  1. 薬剤による肺障害の発症率を高める危険因子が知られている。
  1. 薬剤ごとに異なるが、大まかに共通するものとしては高齢、既存の肺疾患(間質性肺炎など)、酸素投与、放射線照射、抗腫瘍薬の多剤併用が挙げられる。
  1. 関節リウマチで用いられるメトトレキサート(Methotrexate:MTX)では、糖尿病、低アルブミン血症、関節リウマチの肺胸膜病変合併、以前の抗リウマチ薬投与歴、高齢などが危険因子である。
  1. ゲフィチニブにおいて、知られている発症危険因子として男性、喫煙歴、既存の肺線維症や間質性肺炎の存在、化学療法歴、全身状態不良が挙げられており、これら各因子は発症した患者における予後不良にも関連している。
  1. 薬剤性肺障害の発症率に対しては人種差も影響しており、特にゲフィチニブにおいては、欧米白人の肺障害の発症率は日本人と比べて6〜10分の1にとどまっている。
  1. 免疫チェックポイント阻害薬により誘発される間質性肺炎について、発症の危険因子は既存の肺病変(特に間質性肺炎)、肺への放射線照射歴、呼吸器感染症、喫煙歴、呼吸機能低下、酸素投与中の患者、高齢者などがある。また、免疫チェックポイント阻害薬投与後にEGFR阻害薬を用いて重篤な間質性肺炎を生じたとの報告もみられる。
  1. 薬剤投与開始後に数週〜数カ月間(ときには数年)経過してから発症し、原因薬剤を続けている限り症状は悪化していく。以下の表に示す通り、薬剤により起こりやすい肺障害の型が知られている。
 
薬剤性肺障害の主な原因薬剤

出典

日本呼吸器学会  薬剤性肺障害の診断・治療の手引き第2版作成委員会編: 薬剤性肺障害の診断・治療の手引き 第2版 2018、p5、表Ⅰ-3、メディカルレビュー社、2018.
病歴・診察のポイント  
  1. 薬剤(サプリメントを含む)の詳細な使用歴と症状の経過の付き合わせが特に重要である。

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著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
山口正雄 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:長瀬隆英 : 特に申告事項無し[2024年]

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薬剤性肺炎

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