今日の臨床サポート 今日の臨床サポート

著者: 西川光重 神甲会 隈病院

監修: 平田結喜緒 公益財団法人 兵庫県予防医学協会 健康ライフプラザ

著者校正済:2025/04/23
現在監修レビュー中
参考ガイドライン:
  1. 日本甲状腺学会亜急性甲状腺炎(急性期)の診断ガイドライン2024(2024年11月21日改定)
  1. 米国甲状腺学会(ATA):甲状腺中毒症の診断と治療ガイドライン2016(2016 American Thyroid Association Guidelines for diagnosis and management of hyperthyroidism and other causes of thyrotoxicosis)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 日本甲状腺学会の『亜急性甲状腺炎(急性期)の診断ガイドライン』(2024年11月)の改定に伴い、記述を修正した。
  1. 典型例および治療中にクリーピング現象を起こした例について、データと画像を提示して解説した。
  1. 亜急性甲状腺炎急性期の甲状腺エコー画像をわかりやすいものに差し替えた。
  1. 適宜、本文中の文言を修正した。

概要・推奨   

  1. 発熱や甲状腺部疼痛などの症状を有する亜急性甲状腺炎患者は、禁忌がなければステロイド薬で治療する。症状の軽い場合は非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)で治療しても良い。中等~高度の甲状腺中毒症症状のある患者にはβ遮断薬を併用する(推奨度2)
  1. 日本人亜急性甲状腺炎には副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロン(プレドニン) 初期量 15 mg)が奏効する(推奨度2)
  1. ステロイド群とNSAIDs群を比較すると、疾患持続期間はステロイド群が短いが、経過中の甲状腺機能低下症期間、FT4頂値、TSH最高値には差がない。

病態・疫学・診察 

疾患情報(疫学・病態)  
  1. 亜急性甲状腺炎は、有痛性甲状腺腫と甲状腺濾胞の破壊による一過性甲状腺中毒症を特徴とする疾患である。
  1. 発症にウイルス感染との関連が示唆されている。また、ヒト白血球抗原(HLA)B-35と強く相関する。
  1. 急性期には痛みや発熱が強い疾患であるが、基本的には、数カ月で治癒する疾患である。通常、甲状腺中毒症期から一過性の甲状腺機能低下症期を経過して、数カ月で甲状腺機能は自然に改善するが、少数例で永続性の甲状腺機能低下症を来すことがある。
 
  1. トルコでの亜急性甲状腺炎患者に関する臨床的報告(O)(参考文献:[1]
  1. 1987年から2001年の176例の患者を後ろ向きに検討した。平均年齢34.0歳。痛みは女性の97%、男性の100%にみられた。46%に高熱があり、赤沈は平均43 mm/時であった。Tg抗体は20%、TPO抗体は4%で陽性であった。再発率は女性で約14%、男性で約11%にみられ、NSAIDs治療群とステロイド薬治療群で差はなかった。
  1. 追記:トルコ、特にAegean地方は甲状腺疾患の多いところとされている。この地の中心的病院であるEge大学病院1施設での亜急性甲状腺炎患者の特徴を検討した。
 
  1. 日本での多数の亜急性甲状腺炎患者の治療前臨床像に関する報告(O)(参考文献:[2]
  1. 亜急性甲状腺炎の治療前臨床的特徴を1施設での852人の患者を対象に後方視的に検討した。患者は40~50歳の女性に多く、発症に夏から秋に多い有意の季節変動がみられた。平均13.6カ年周期での再発が1.6%にみられた。28%で38℃以上の発熱があり、典型的甲状腺機能亢進症症状は60%以上にみられた。治療前、甲状腺中毒症、炎症所見、肝障害は発症1週間以内にピークがあった。甲状腺エコーでは、片葉の痛みを訴える患者の半数に甲状腺両葉の低エコー域が認められた。両側低エコー域の頻度は発症2カ月後に上昇する傾向にあった。
  1. 追記:多数の日本人亜急性甲状腺炎患者の臨床像を報告した。亜急性甲状腺炎の甲状腺機能異常と炎症は発症1週間でピークとなると考えられる。
 
  1. ミネソタのコミュニティでの亜急性甲状腺炎患者に関する報告(O)(参考文献:[3]
  1. 1960年から1997年の160人を研究した。亜急性甲状腺炎発症率は4.9人/10万人/年であった。痛みは96%にみられ、6~21年後に4%が再発。ステロイド薬は36%に投与された。早期の甲状腺機能低下症はステロイド薬あり(29%)なし(37%)両方でみられた。最終経過観察で、甲状腺機能低下症はステロイド薬あり(25%)はステロイド薬なし(10%)より有意に多かった(全体の甲状腺機能低下症比率は15%)。初期一過性甲状腺機能低下症はよくみられたが、永続性低下症はあまりなく、28年経過観察で15%のみがT4服用中であった。ステロイド薬で症状の改善はみられるが、早期・晩期の甲状腺機能低下症は防げない。
  1. 追記:ミネソタ州オルムステッド郡(2000年の国勢調査で人口12万人余)でのコミュニティ研究である。
病歴・診察のポイント  
  1. 急性上気道炎などの感染症の前駆症状をしばしば認める。その後、甲状腺部の痛みと、症例により頚部から顎、耳介部や後頭部などへの放散痛を訴える。

これより先の閲覧には個人契約のトライアルまたはお申込みが必要です。

最新のエビデンスに基づいた二次文献データベース「今日の臨床サポート」。
常時アップデートされており、最新のエビデンスを各分野のエキスパートが豊富な図表や処方・検査例を交えて分かりやすく解説。日常臨床で遭遇するほぼ全ての症状・疾患から薬剤・検査情報まで瞬時に検索可能です。

まずは15日間無料トライアル
本サイトの知的財産権は全てエルゼビアまたはコンテンツのライセンサーに帰属します。私的利用及び別途規定されている場合を除き、本サイトの利用はいかなる許諾を与えるものでもありません。 本サイト、そのコンテンツ、製品およびサービスのご利用は、お客様ご自身の責任において行ってください。本サイトの利用に基づくいかなる損害についても、エルゼビアは一切の責任及び賠償義務を負いません。 また、本サイトの利用を以て、本サイト利用者は、本サイトの利用に基づき第三者に生じるいかなる損害についても、エルゼビアを免責することに合意したことになります。  本サイトを利用される医学・医療提供者は、独自の臨床的判断を行使するべきです。本サイト利用者の判断においてリスクを正当なものとして受け入れる用意がない限り、コンテンツにおいて提案されている検査または処置がなされるべきではありません。 医学の急速な進歩に鑑み、エルゼビアは、本サイト利用者が診断方法および投与量について、独自に検証を行うことを推奨いたします。
薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 伊勢雄也 以下、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光および日本医科大学多摩永山病院 副薬剤部長 林太祐による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、 著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
※同効薬・小児・妊娠および授乳中の注意事項等は、海外の情報も掲載しており、日本の医療事情に適応しない場合があります。
※薬剤情報の(適外/適内/⽤量内/⽤量外/㊜)等の表記は、エルゼビアジャパン編集部によって記載日時にレセプトチェックソフトなどで確認し作成しております。ただし、これらの記載は、実際の保険適応の査定において保険適応及び保険適応外と判断されることを保証するものではありません。また、検査薬、輸液、血液製剤、全身麻酔薬、抗癌剤等の薬剤は保険適応の記載の一部を割愛させていただいています。
(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
西川光重 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:平田結喜緒 : 特に申告事項無し[2025年]

ページ上部に戻る

亜急性甲状腺炎

戻る