ウイルス性関節炎 :トップ    
監修: 岸本暢将 聖路加国際病院
押川 英仁 熊本赤十字病院 リウマチ・膠原病内科

概要

疾患のポイント:
  1. 急性に発症した対称性の関節炎で、発症から1カ月以内の場合にはウイルス性関節炎の可能性を常に想起しなければならない。
  1. 日常診療において遭遇する可能性があるウイルスとしては、ヒトパルボウイルスB19、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、風疹ウイルス(あるいはワクチン)、デングウイルスや、アルファウイルス(特にチクングニアウイルス)などが挙げられる。
  1. 特に若年女性で伝染性紅斑の患児との接触歴がある場合は、ヒトパルボウイルスB19感染症のリスクがある。
  1. ウイルス性関節炎ではしばしば抗核抗体が陽性となり、ときにRFも陽性となることがある。関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)の分類基準を満たす場合があり、RAやSLEとの鑑別が必要である。 エビデンス   エビデンス   エビデンス 
 
診断: >詳細情報 
  1. 病歴と診察により特定のウイルス性関節炎が疑われる場合、血清中の特異的IgM抗体の検出によって診断が確定される。
  1. B型肝炎では、HBs抗原陽性と抗HBcIgM陽性、C型肝炎を疑う症例では、HCV抗体陽性とHCV-RNA(PCR法)陽性、ヒトパルボウイルスでは、抗IgM抗体陽性を認めた際に診断となる。
  1. アフリカ、南アジア、東南アジアなどへの海外渡航歴があり、帰国前後に発症した関節炎では、デングウイルス感染症やチクングニアウイルス感染症を鑑別に挙げる。

重症度・予後評価: >詳細情報 
  1. ウイルス性関節炎の多くは基本的には予後良好な疾患であり、通常数週以内(多くは2~3週)に改善する。ただし、少数例であるがパルボウイルスB19や風疹ウイルス(あるいはワクチン)、チクングニアウイルスでは数カ月以上関節炎が持続する場合がある。またHCV関連の関節炎は慢性の経過をとる。
 
治療: >詳細情報 

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

初診時特に重要な検査
  1. 病歴、身体診察とあわせて臓器障害の評価を行いつつ、関節炎を起こす他の疾患を除外し、ウイルス感染症を確認することで診断となる。特にルーチンの検査で著明な血球減少、あるいは腎炎や血管炎、重篤な感染症などを疑わせる所見などがないかに注意する。
  1. ウイルス感染症は、各ウイルスの血清中の特異的IgM抗体の検出によって診断が確定される。また、IgG抗体が出現している場合にはペア血清をとり、IgG抗体価の増加(4倍以上)を確認した場合に診断となる。
  1. 現在パルボウイルスB19IgM抗体測定は、妊婦において感染が疑われたときのみ保険適用となっている。またIgG抗体については保険適用外である。
  1. 先行感染症状の有無(感冒症状など):ヒトパルボウイルスB19、風疹、アルファウイルス
  1. 子供との接触歴:ヒトパルボウイルスB19
  1. 職業(教師、保育士、医療従事者など):ヒトパルボウイルスB19
  1. ワクチン接種歴、輸血・血液製剤使用歴:HBV、HCV、HIV
  1. 静注薬物使用、刺青歴:HBV、HCV、HIV
  1. 性交渉歴:HBV、HIV、HTLV-1
  1. 海外渡航歴:デングウイルス、アルファウイルス(チクングニアウイルスなど)
  1. 居住地・出身地:HTLV-1
  1. 家族歴:HBV、HCV、HIV、HTLV-1
  1. 頬部の紅斑、四肢の網目状紅斑や、体幹部、四肢の斑丘疹:ヒトパルボウイルスB19感染症
  1. 耳介後部、後頚部や後頭部のリンパ節腫脹と体幹、四肢の小斑丘疹:風疹
  1. 下肢に蕁麻疹様皮疹や斑丘疹、黄疸:HBV
○ 臓器障害の評価および関節炎を起こす他の疾患の除外のため1)~32)の検査を鑑別疾患に基づき行う。特に1)~6)、10)12)13)~16)30)は比較的よく行われる評価である。また、原因のウイルスや細菌感染症の評価のために17)~27)を上述の病歴・診察に応じて追加する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
著者により作成された情報ではありません。
尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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ウイルス性関節炎疑い例のマネジメントアルゴリズム
著者校正/監修レビュー済
2016/06/30