ST上昇型心筋梗塞 :トップ    
監修: 代田浩之 順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学
小菅雅美 木村一雄 横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター

概要

疾患のポイント:
  1. ST上昇型心筋梗塞とは、主に冠動脈粥腫の破綻(破裂またはびらん)により冠動脈内腔に血栓が形成され、冠動脈が閉塞し心筋壊死を生じた病態である。心筋梗塞は心電図上、ST上昇型とST低下型に分類される。
  1. 速やかに診断し、閉塞した冠動脈を再開通させ、心筋に血流を再灌流することが予後改善に繋がる。
  1. 再灌流療法として血栓溶解療法を選択した場合は患者来院後30分以内に血栓溶解療法を実施すること、冠インターベンションを選択した場合は同90分以内に初回バルーン拡張を実施することが目標である。 エビデンス 
 
診断: >詳細情報 
  1. ST上昇型心筋梗塞は、心筋虚血を示唆する症状、心電図でのST上昇、心筋壊死を示す生化学マーカーの一過性上昇により診断される。
  1. 病歴から急性心筋梗塞を疑ったら、直ちに心電図を記録し診断する。 エビデンス  エビデンス  エビデンス 
  1. 初回心電図で急性心筋梗塞の診断ができない場合でも、症状が持続し急性心筋梗塞が強く疑われれば、5~10分ごとに繰り返し心電図を記録し診断する( エビデンス )。超急性期にはST上昇が明らかでなくT波尖鋭・増高を認め、診断の鍵となる。 

評価・治療の進め方

※選定されている評価・治療は一例です。症状・病態に応じて適宜変更してください。

初期薬剤治療例
ポイント:
  1. 初期治療は重要だが、専門施設に救急搬送する場合は、搬送時間を遅らせない範囲で処置する。 エビデンス 
 
急性期の治療:
  1. 酸素吸入:動脈血酸素飽和度90%未満で投与する。
  1. 抗血小板薬:アスピリンアレルギーの既往がある患者を除き、急性心筋梗塞が疑われる患者には全例、できるだけ早くアスピリンを投与する( エビデンス )。早急に効果を得るため、アスピリンをかみ砕いて内服させる。アスピリン坐薬の投与は安全で、嘔気、嘔吐症状が強い患者や、上部消化管疾患のある患者には適する。クロピドグレルは初回投与300mgとし、その後の維持量は75mg/日とする。少なくとも、ベアメタルステント留置後は1カ月、薬剤溶出性ステント留置例では12カ月は投与を続ける。
  1. 硝酸薬:虚血による症状がある場合は、舌下またはスプレー口腔内噴霧で、症状が消失するか血圧低下のため使用できなくなるまで、3~5分ごとに計3回まで投与する。胸部症状が持続する場合や、高血圧や肺うっ血を認める場合は静脈内投与が勧められる。
  1. 塩酸モルヒネ:硝酸薬を投与しても胸部症状が持続する場合は投与が勧められる。
  1. 未分画ヘパリン:緊急冠インターベンション(PCI)中の未分画ヘパリン投与法は待期的PCIに準じる。血栓溶解療法時の併用投与に関しては、ACC(米国心臓病学会)/AHA(米国心臓協会)ガイドライン2004では60単位/kg(最大4,000単位)を単回静注し、その後、APTTをコントロール時の1.5~2.0倍(約50~70秒)に維持するよう持続投与(最大1,000単位/時)するとしている。しかし、日本で投与量について検討された報告はない。ACTまたはAPTTを投与前の2~3倍に保つことが推奨されている。
○ ST上昇型急性心筋梗塞の診断がついた患者に、低血圧がなければ1)を舌下投与し、2)と 3)、または 4)を投与し、症状が強ければ5)を使用する。その後、6)または7)または8)を併用する。

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薬剤監修について:
オーダー内の薬剤用量は日本医科大学付属病院 薬剤部 部長 片山志郎 以下、林太祐、渡邉裕次、井ノ口岳洋、梅田将光による疑義照会のプロセスを実施、疑義照会の対象については著者の方による再確認を実施しております。
※薬剤中分類、用法、同効薬、診療報酬は、エルゼビアが独自に作成した薬剤情報であり、
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(詳細はこちらを参照)

ST上昇型急性心筋梗塞の診断アルゴリズム
発症からの経過時間別にみた各心筋傷害マーカーの診断精度
胸痛の鑑別診断
心電図でST上昇を認める疾患・病態
初期評価項目のチェックリスト
虚血性心疾患がなく心筋トロポニンが上昇する病態
著者校正/監修レビュー済
2018/02/28

編集部編集コンテンツ:
 
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