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著者: 山根啓一郎1) 天理よろづ相談所病院 循環器内科

著者: 中川義久2) 滋賀医科大学 循環器内科

監修: 代田浩之 順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学

著者校正/監修レビュー済:2024/06/12
参考ガイドライン:
  1. 日本循環器学会/日本心血管インターベンション治療学会/ 日本心臓病学会:2023 年 JCS/CVIT/JCC ガイドライン フォーカスアップデート版 冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害の診断と治療
  1. 日本循環器学会他:急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)
患者向け説明資料

改訂のポイント:
  1. 『2023 年 JCS/CVIT/JCC ガイドライン フォーカスアップデート版 冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害の診断と治療』を参照に、下記の点を加筆した。
  1. 新たな疾患概念としてMINOCAやINOCAを本文中に記載した。

概要・推奨   

  1. ST上昇を示す病態は多岐にわたるが、最も重要なものが急性心筋梗塞である。
  1. 胸部症状を伴うST上昇は、緊急の対応を要することが多い。
  1. 健診などで指摘された無症候性ST上昇は、待機的な精査で対応可能である。特に、若年男性においては病的意義がないことがほとんどである。

病態・疫学・診察 

疫学情報・病態・注意事項  
  1. ガイドラインでは、急性心筋虚血の心電図所見として、ST上昇は次のように定義されている[1]
  1. V2-3 誘導では、40 歳以上の男性の場合は2.0 mm 以上のST 上昇、40 歳未満の男性の場合は2.5 mm 以上のST上昇、女性の場合は年齢を問わず1.5 mm 以上のST 上昇
  1. V2-3 誘導以外では1.0mm 以上のST 上昇(この定義は左室肥大や左脚ブロックのない場合に適用され、ST レベルはJ 点で計測、10 mmは1.0 mV として記録)
  1. ST上昇を示す病態は多岐にわたるが、最も重要なものが急性心筋梗塞である。急性心筋梗塞以外にST上昇を示す虚血性心疾患としては、冠攣縮性狭心症、心筋梗塞後心室瘤がある。
  1. 虚血性心疾患以外では、急性心膜炎、左室肥大、左脚ブロック、心筋炎、たこつぼ心筋症などでST上昇がみられる。
  1. Brugadaパターンと呼ばれる、右側前胸部誘導での特徴的な(saddle backあるいはcovedと呼ばれる)ST上昇を伴う右脚ブロック様の心電図を健診で指摘され、受診する患者がしばしばみられる(Brugada症候群については他稿を参照されたい)。
  1. まれではあるが、左室への腫瘍浸潤、心室外傷、低体温、高カリウム血症によりST上昇を来すことがある。
  1. 病的意義のないST上昇としては、早期再分極、若年男性での生理的ST上昇がある。
問診・診察のポイント  
  1. 胸部症状を伴うST上昇は、重篤な心疾患による可能性がある。問診はきわめて重要である。

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尚、用法は添付文書より、同効薬は、薬剤師監修のもとで作成しております。
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(詳細はこちらを参照)
著者のCOI(Conflicts of Interest)開示:
山根啓一郎 : 未申告[2024年]
中川義久 : 特に申告事項無し[2024年]
監修:代田浩之 : 研究費・助成金など(フクダ電子(株),インターリハ(株),京セラ(株),AMI(株),(株)今仙電機製作所,グローリー(株)),企業などが提供する寄付講座(フィリップス・ジャパン)[2024年]

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緊急処置を要するST上昇:その鑑別

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